夏と秋の罪
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「何見てんの?」
私が外で本を読んでいるときだった。アキトはいつも突然現れる。
「海の本だよ。生物は海からやってきたんだって」
私はアキトに感情を教えてもらってから、より、本を読むようになった。昔の本には感情描写というものがあるからだ。とても気になる。
「へ〜海か!行ってみたいな!」
「うん。いつか…行けるといいね」
私の余命は後3ヶ月。
私はアキトと出会った最初の日に言われたことを少しづつ理解できるようになった。だから、死ぬのは怖い。でも、アキトと一緒にいるとそれを少し忘れられる気がした。
「すいません。この病院にフユという少女はおりますか?」
私がアキトに海の色について語っているときだった。
純黒の瞳を持ったその男は唐突に現れた。
「はい。私がフユです」
「そうか、すぐ見つかって良かった。俺はオリヴィエというものだ。君は非生産的な人間だから処分されることになった。人類の為に死んでくれ」
私の脳は意味の理解を拒むことを選択したらしい。それが言葉である事さえも分からない。
「何故ですか!?人を殺すことが人類の為?言っている意味が分かりません!!」
アキトが何かを言っている。アキトの顔が赤くなっている。アキトは大声を出し始めた。アキトは少し目尻が赤くなっている。アキトの顔が………………………
「フユは非生産的な人間だ。こいつを生かすということは他の生産的な人間を殺すという事だ。これは人類の『増える』という目的に反する。これくらい君にも分かるだろう。当たり前のことだ」
少しづつ、話の内容が頭に入ってくる。脳が言語処理を拒んでいた理由がわかった気がする。
あれ?
話の内容を完璧に理解した時だった。
私の目の前にナイフの先端があった。
このまま死…
「うわぁぁぉぉぉぉ!」
アキトは男に向かってタックルをした。
「フユ!!逃げよう!」
でも、それは…
「あ…え…でも…私は…人類の害で…だから…死なないと…」
「そんなのどうだっていい!僕はフユに生きてほしい!だから一緒に…」
どうしよう…私はどうすれば…
「はぁ…君は確か…感情症患者だったか…だからこんなことを」
「一緒に逃げよう!一緒に海に行こう!僕と一緒に…」
アキトはそう言うと、私の手を無理やり引っ張って駆けだした。
これで良いのだろうか。これは「増える」に反することだ。でも、何故か私の足は止まることを知らない。全く抵抗する事が出来なかった。
私たちは逃げて、逃げて、逃げて
『はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…』
2人は息を切らしながらも逃げ続けた。
どこかの山に入ってしまった。何も考えず逃げ続けたせいだ。
「はぁ…アキト…私たち…逃げちゃったね…」
切らした息を整えながら私はアキトに話しかける。
「うん…」
赫い紅葉を踏みしめるアキトはまるでこの世界の反逆に成功した極悪人のように見えた。
ただ、私はそんなアキトがかっこよく見えてしまった。
「一緒に暮らそう。2人だけで」
私はまた、アキトをかっこいいと思ってしまった。
そんなことを言われたら断ることなどできない。
「うん。でも、どうするの?」
住む場所も食べ物も無い。
「大丈夫。僕が街まで降りてそこで2つの食べ物を持ってくるよ。住む場所は空き家でも探してそこで住もう」
その日から、私たちは山奥の小さな家に住むことになった。
家の近くの紅葉は赤色しかなかった。
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