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掌編小説  作者: 唯野
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三題噺 体育館 ブラシ 翡翠

「これがその卒業記念品か」


過疎化の進んだ島の廃校になる体育館に壮年の男が三人。


時刻はお昼を過ぎたタイミングで強い日差しが差し込み、三人は汗だくになって卒業記念品を台座から下ろしていた。


廃校になる事を知った宝石店を経営している男が声を掛け集まったのは大工とトラック運転手だけだった。彼に人望がないのではなく。


過去十年で卒業生が居ない上に、大半が亡くなって久しいせいである。


今生きている卒業生は彼らを足しても十人だった。


「ああ、久しぶりに見たが、かなり誇り被ってんな。っ……っしゅん”!!」


一番力のある大工は盛大にくしゃみをしながらも両手は確りと木彫りの記念品を持っていた。


「おいっ、こっちに顔向けんな」


普段から運搬には自信があった運転手は負けじと唾を飛ばしながら答える。流石に同級生なだけあり、仲が良かった。


「悪い悪い、ついな?」


久々の再開のせいか、少し浮かれ気分だが、その作業は丁寧だった。粗目のブラシと目が細かいブラシを使い分けながらゆっくりと磨いていく。


「うしっ!こんなもんか、随分と綺麗になったな」


一枚の大きな板の木彫りで出来た記念をあらかた綺麗にした辺りで宝石店主がまじまじと腕を組み一点を見ていた、まるで宝石の買い付けでもするかの様に。


「なぁ、掃除してる時に気になったんだけどさ、あそこに嵌ってる一番大きな奴、宝石の翡翠じゃないか?」


言われて二人は視線の先を見やる。しかし、他にも同じような緑色の綺麗な石が嵌っているし素人の彼らには見分けはつかなかった。


「ん?そうなのか、全然気づかなかったな。なあ」


「そうだね、この島ではそれくらいの綺麗な石は割と転がっているからね」


「本業の俺が言うんだから間違いないと思うが、よく見せてくれ」


言うと卒業品向かい一度頭を下げるとその上に乗って観察し始めた。


「どうだ?本物なんか?ん?」


暫くして観察し終えて降りると、少し間を置き呟いた。


「…………ん。間違いない。これ一つで数百万以上するよ」


「「はぁっ!!!マジっ!?」」



とんでもない金額に度肝を抜かれる二人を余所に、宝石店主はある事を考えていた。それはこの学校を潰さずに再利用できないかというものなのだが、先立つモノがなく断念していた事。


「提案なんだが、卒業生全員に聞いてみて、こいつを売ってこの学校を買い取るって言ったらまずいかな?」


「あぁ、例の話か……俺は問題ないと思う」


「いいんじゃね? 島興しの一つになればさらに儲けもんだろ!」


その利用方法は古校舎を改築してカフェや、youtubeのスタジオとして貸し出すことである。

結果は見事ハマり、それなりに人口が戻るのであった。


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