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掌編小説  作者: 唯野
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三題噺 鏡台の前 マグカップ 触る

芽衣には大切な時間がある、それは鏡台の前に座る事である。


鏡台は祖母から母へ、そして私へと代々受け継がれてきた年代物。


鏡の表面には無数の傷や周りの装飾は色褪せていた。しかし、その古ぼけた姿は芽衣にとっては何よりも美しいと思えるものでした。


その日も芽衣は母から譲り受けた鏡台の前に座る。上京前に母から送られたマグカップを片手に腰を下ろした。


母のぬくもりをマグカップから感じつつ、一口コーヒーを飲む。ふと鏡の中から視線を感じた。顔を上げると当たり前だが、自分が写っている。しかし、その姿はどことなく疲れている感じがした。


癒しを求めさらにコーヒーを一口飲んで、深呼吸をすると、なぜか母親のある言葉を思い出した。


『鏡台ので自分を見つめると、本当の自分が見えてくるのよ?』


触ることなくただ鏡を見つめるだけで自分の心を映し出すというのです。


芽衣は心の中で、問いかける。


『お母さん、どうすればこの疲れを癒せるの?』


すると、まるで答えるかのようにマグカップのコーヒーがじんわりと温かくなるのを感じられ、心が少しだけ軽くなった気がした。


次の日から芽衣は毎日、鏡台の前で自分を見つめるというルーティーンを追加した。マグカップを片手に自分の心の声に耳を傾け、自分と対話し、心を癒すその習慣は芽衣にとってかけがえのない時間になっていった。


そして、ある日、鏡の中の自分が上京したての時みたいに輝きを取り戻している事に気づきお礼を言っていた。


「お母さん、いつもありがとう」



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