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掌編小説  作者: 唯野
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三題噺 音 板 アルバム

とある村には幸せをもたらす不思議な板が代々受け継がれていた、その板から出る音には村人たち皆癒されていた。そしてその管理は持ち回りで行うのである。


「次の当番はお前だ、翔太」


「あぁ、早く見せてくれ!」


待ちきれない様子で貧乏ゆすりをする青年は村長が取り出した”板”をひったくると、一目散に家を飛び出していった。


「あっ、あの阿呆、靴を履き忘れておるぞ」


翔太は森に川に、畑と色んな所に顔を出しては音を拾い集め、収音していく。


”板”は不思議な事に翔太が欲しいと思った音のみを拾っていた、虫の鳴き声、川のせせらぎ等。だが、一つだけ翔太の身に覚えのない声が入っていた。


『元気そうで何よりだわ、翔太』


翔太はその日、村長以外の人に合っていない筈なのにだ。


翌日村長にそのことを聞いてみると、納得した。


この”板”の持つ力とは持っている者の本当に聞きたいモノを聞かせてくれるという不可思議なものらしく、その声は翔太が無意識に聞きたい音を聞かせてくれたのだろうと村長は言った。


「俺は死んだ母さんとの思い出の音を拾いたかった、だけなんだけど。でも、そっかあれは母さんの声なのか」


こうしてとある摩訶不思議な村人たちのアルバムは作られていくのであった。



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