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掌編小説  作者: 唯野
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三題噺 出前 レンジでチン サンプル

「っ!!くそ、またやられたよ。いい加減にしなさいよ、カナタっ!」


いたずら好きの弟は姉の私や両親にドッキリすることが趣味になりつつある。



幾ら言って聞かせても暖簾に腕押しでどうにもならず、今回も出前の中にどこから買ってきたのか分からないよくできた五目麺の食品サンプルが入っていた。



それだけならまだしも、本物を置いた後にわざと私の膝上にドンブリを落とすということをしてきた。



それはもうびっくりした。テーブルの上には本物の五目麺があるから安心しきっていたんだから。


「クククッ、ねぇ、驚いた?!姉さん?」



「当たり前じゃないっ!というか、実際にドンブリが落ちてきて痛かったんですけど!?」



「あー、それはごめんなさい。でもほら御飯冷めないうちに僕のおごりだから、ね?」



私は呆れた視線を送りつつ、大仰にため息をついた。コイツに何を言っても変わらないのだと。



その後は何事もなく食事をして終わった。当然その間も警戒はしていたが、何してこなかった。しかし、事件はその後、私たちが寝たのちに起こった。



私たちの両親は共働きなのでお互い夜遅くに帰ってくる。帰ってきた両親の奇声で私は目を覚ました。



どうやらカナタはアレを片さなかったらしく。食品サンプルと気付かないでレンジでチンをしてしまったということで叱られている。というかしきりに頭をさすっているみたいだ。



『まぁ、うん、自業自得よね』



物陰からその一部始終を眺めながら私は欠伸をした。



「何しとんじゃっ!このバカ息子がっ!!」



「まったくよ!どれだけお母さん達が疲れているか少しは考えなさいよっ!」



「うぐぅ、痛ぇ~」



視線を三人から台所に向けるとそこには食品サンプルだったモノがあった。中身は大丈夫そうだが、器が熱に耐えられなかったのか溶けていた。レンジの中にも癒着したナニかが付いていて焦げ臭かった。



これだけの惨状を起こしておいて、あいつは数日も経てば似たようなことをするのだろう。



『うん。早く家でよ』



巣立ちを胸に秘めて私はまた寝室に戻った。



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