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掌編小説  作者: 唯野
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三題噺 自宅のリビング 薬 揉む 

無機質な機械音がその部屋に響いていた、それはマッサージチェアと呼ばれるそれは高価なモノで娘婿の勧めで購入したのだが。これが最初は良かったのだが、次第に楽にならなくなった。


「ばあさん、またやっておったのか、あまり使いすぎも良くないと仁志が言っておったではないか?」


「何を言うかい、じいさんこれから孫が来ると言うのにこの腰では一緒に遊べんではないか?」

そう今日は一月一日。この日は夏と冬以外、寂しいこの家を賑やかにしてくれるイベントが起こるのだ。冬休みを迎えた孫が遊びに来て、家族団欒をこのリビングルームで過ごすのが毎年の楽しみの一つである。


「ばあちゃん、あそぼっ!」


ようやっと来た孫と娘夫婦を迎えるも、あたしの腰は何とも動きづらく仁志さんに診てもらったが加減は良くないのだ。


「忠司すまんのぉ、ばあちゃん腰が痛くてのぉ、あまり動けんのじゃ」


「えー大丈夫?ばあちゃん?」


「あぁ、歳の癖にピンピンしとる、じいさまと遊んでおいで」


「一言余計じゃわい、ほれ、表で羽根つきでもすんべぇ」


しかし、忠司は玄関に向かわずに短い腕をしきりに組みなおしては唸っていた。それからほどなく、そうだっ!と相槌を打つとあたしの所へやってきた。


「ばあちゃんっ!僕がマッサージしてあげるよ!!」


「本当かい、そりゃあ、ありがたいねぇ」


せっかく忠司が言ってくれたからと思いと話に乗っかり、絨毯の上にうつ伏せで寝そべり孫に礼を言う。


「任せて、これでも父ちゃんに筋がいいって褒められてんだっ!!」


しかし、受けてみると、あら不思議そのマッサージは拙いのにどんな薬や、整体師のマッサージよりも効いた。なんならそこで無機質な機械音しか上げないモノよりもずっと一生懸命に揉みながらマッサージしてくれる孫の音の方が効く。


「こりゃあすごいねぇ、色んなものを試したのに、孫のマッサージが一番に効くなんて、孫は万病に良いのかもねぇ。」


そんな平和な光景を娘夫婦とじい様が見ていた。我慢できなくなったのか皆お願いし始めた。大盛況だねぇ。


「どれ、儂もお願いしようかのぉ」


「私たちもいいかしらね」


「もちろん!」


それからしばらくマッサージを終えた、孫はやり切った顔をして父ちゃんと同じ仕事して活躍したいと言った。その顔の眩しさといったらないね。忘れられない正月になったね。


「だったら最初に診てもらうのはあたしらかね?」


「うん、もちろん、ばあちゃんとじいちゃんが最初だよ? 絶対ね!約束だよっ!!」


「さてさて、それまで長生きしなきゃね、ねぇ爺さん?」


「うむ、そうじゃのう」


普段は二人で少し寂しい、自宅のリビングが今はこうして賑やかに過ぎていく。来年もこうして正月を過ごしたいのぅ。

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