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08 はじめての依頼

翌日朝早く、せっかくお金が手に入ったので、私は呪文書を買おうと探してみた。


街の商店ではいろんなものが並んでいる、オシャレのための装飾品や洋服から雑貨などの日用品、靴などから食料や今すぐ食べられるようになったものと目移りする。


ほどなくして本を売っている店を見つけ入る。小さなお店で大きくはない、本の他にも、書くためのペンや紙などが売られている。


そうしてよく考えたら、私は文字が読めないのだった。まぁ、いいか、なんとかなるだろう。


店員さんに、魔法の本について聞いてみると、3冊ほどあった。


呪文魔術についてが2冊と魔法についてが1冊だ。


魔法についての本は少し手持ちと比べると高いように感じた。今ある手持ちの金を使っても大丈夫だろうか。


ひとまず、そこは保留してこれからどれだけお金がたまるか、減るかを実践してからとしよう。


まずは文字が読めなければ話にならないので、子供向けの本と、料理の本を教えてもらう。


それもほどほどだったが、魔法にまつわる本はそもそも珍しいらしく桁がちがったので、安心して2冊購入した。


子供向けの本から基礎を、料理の本はあるていど料理ができるからそこからの類推で大人向けの本が読めればいいなぁと思ってのことだ。


と、ふと忘れていたが、リミィはどうしているだろう、結局昨日の晩は合流できなかったが。


#


冒険者ギルドでレーグスと合流し、依頼を受けることが決まった。


依頼と言っても、猫探しだ。


というのも、私のランクが1だからだ、数字が増えるほどより上級の依頼が受けられる。


レーグスはランク7とかなり高いが、組んでの冒険となったときと、この街での初ということもあり簡単なものしか受けさせてもらえなかった。


というわけで、レーグスと外をふらりと歩く。


「また、懐かしいな。昔を思い出す。」


「すぐに路銀が尽きることはないんですよね?」


「あぁ、昨日の儲けもあるし、もともと心配するひつようがないくらいはある、ゆっくりでかまわん」


ふと思う、こういうときに使える便利な魔法があったらいいなぁと。


そう、いわゆる探知系の魔法だろうか。


周囲にそーっと薄ーく自分の魔力感覚を伸ばしていく、それを触覚的に扱えないかイメージするが、ふとそれらが崩れていく。


「ん、何か魔法を使おうとしたのか?」


「はい、上手くいきませんでしたが、わかったのですか?」


「あぁ、なにか探られてるな、見られてるな、という感じのする感覚がした」


それはつまり、そういう探知系の魔法はある、ということだろう。


とにかく、使えないものに頼ろうと必死になっても仕方ない。


「こういうことは俺のほうが得意かもな」


レーグスはそういうと目を閉じて少し頭を上に向け、そしてぱっっとめを開ける。


「こっちだ」


彼の誘導により、次々と猫を発見していけた。ただ、お目当てのものをすぐにとはいかないらしい。


「俺は獣人だからな、獣のにおいや方向はある程度分かる、残念ながら、お目当ての猫は絵姿と色などの情報だけだから、総当たりするしかない」


「いちど、飼い主さんのところへいって、猫さんの身に着けていたものや匂いをかがれてはどうですか?」


「おぉ、その手があったか」


レーグスは冒険者のプロだが戦士だ、たまにこういうところがぬけている。


というわけで、依頼人のところを経由するとすぐさま目的の猫が見つかった。


そうして、無事、1件目の依頼を達成し報酬をギルドのカウンターで受け取ったのだ。


#


そうして、ギルドで報酬を受け取ったレーグスは街を散策してくるといって冒険者ギルドを後にした。


もしかすると、リミィを探しにでも行ったんだろうか。ただ、お酒が飲みたかったのかもしれない。また、一人での行動が認められているという証でもある。


せっかくなので、私は冒険者の依頼掲示板をのぞいていた。文字の勉強になればと思ったのである。


文字は1つ1つ、離されて書かれており、英語の筆記体的なわかりにくさがないので個別の認識が非常にしやすい。


とはいえ、1文字ごとの横幅の大きさはまばらである。よって、日本語の文字より英語のアルファベットにその形式は近いだろうか。


そういう風に見ていると、二人組の男に後ろから声をかけられた。


「おい、小娘、何か小細工したらしいがここはしょんべんくせぇガキが来るところじゃねぇんだよ」


「そうだ、ガキは邪魔にしかならねぇ、どっかいってろ」


と、そっと手を伸ばされ、つかまれそうになる。


瞬きほどの間で私は思考する。


現在の状況で、どういう行動をとるのが最適だろう?


1. 相手二人をコテンパンにしてしまう

2. 媚びをうってなかよくしてもらう

3. 下手に出てすいませんお邪魔しましたーと立ち去る


うん、1つ目は、冒険者同士の争いをギルド内でやるのははばかられた。やめておこう。


2つ目は、うーん、そもそも私は媚びをうるというのがよくわからない、失敗するかもしれないし、なんか嫌だった。


3つ目は、結局のところそれをしたところで、また次、という状態になる、解決しない。


周囲は不思議と緊張感に包まれている人たちがいた。


なるほど、私の実力を知っている人たちだろう、場合によっては私が1を選択してしまう場合もありうるのだ。


あれを見ていると、あ、こいつら死んだな、とか考えている人もいるかもしれない。


ただ、もう少しましな解決策はないものかと思ったら、ちょうどいいところにミルグレンがいた。


あの正義男は使えると即断して、私はミルグレンのところに駆け出していく。


「ミルグレンさーん、おじさんたちが私をいじめるのー」


しっかり感情をこめて表現してみた。なかなかの演技であったと思う。


「何だと、こんな小さい子をいじめるとは君たち、恥を知れ!」


と、ミルグレンは私をかばってくれた。


どうやら、ミルグレンはここで名の知れた冒険者らしく文句をつけてきた二人は退散する。


「ふぅ……、君は賢くてそれでいて優しいんだね。」


ミルグレンはそう言うが、別に優しくしたつもりはない。


「これが一番だと思っただけだよ。ミルグレンさんがいてくれて助かったよー。」


「もしいなかったらどうするつもりだったんだい?」


「あの二人をボコボコにしてたかもしれません。」


「わかった、正攻法でうまくいかないときもある、しかたない、こういうことが起こらないよう少し手を打っておこう」


「助かります」


「ただ、怖がられるかもしれないけどいい?」


「どういう内容ですか。」


「なに、君にケンカを売った冒険者二人が、腕や両足を切断されて無残な姿にさせられたって噂を流すのさ。」


「え、それって私かなり危ない人になっちゃうんじゃ。」


「そうでもしないと、君一人だと舐められちゃうっぽいんだよね、いつもレーグスと一緒というわけにもいかないんだろ?」


「はい。」


うーん、どうしようか、噂の前半は真実、後半は嘘である。案外このお兄さんは正義男だと思っていたがくえないところがあるのかもしれない。


「わかりました、よろしくおねがいします。」


こうして私は、街カーナで恐れられる人物になってしまった。


さて、文字の勉強と探知魔法の実験でもしてみようか。

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