17 鳥型の魔物
私は宿の厨房を借りて料理に取り掛かった。このマグルの定番の初歩、ボテトサラダ的な野菜のサラダと、鶏肉を香辛料で炒めたものだ。
宿の料理人も、食材を見てすぐに何がしたいのか分かったようだった。
サラダのためのお芋的な植物をいったんお湯で温めつつ、並行して鶏肉の香辛料を手際よく準備していく。
料理人さん自信も料理をしながら、横目で見ていて感心しているようだ。
慣れた手つきで私は初めてのポテトサラダ的何かを作っていく。温めたそれをぐしゃりとつぶし、専用のソースと混ぜ合わせ、そのほかの野菜も入れて混ぜていく。
途中で、味見をして確認する。もうすこしソースを足そうか……ふと迷ったので、料理人さんに聞いてみた。
「ねぇ、どれくらいソース足したほうがいいと思います?」
「どれどれ?」
料理人さんに味見をしてもらって、「今でも悪くはないが、うん、親指分くらいだな、ほんの少し足せばもっといい感じになる。」
「ありがとうございます。」
そうやって、料理人さんと相談しながら鶏肉のほうも完了する。
料理をもって宿の部屋に向かうと、レーグスとリミィがいた。
「うん、アイリアがつくったのか?マルグの郷土の料理ではないか。」
「はい本屋さんで見かけたので作ってみました。」
「やったーリミィちゃん帰ってきて正解だったのだー、私は勘が良い。」
というわけで、みんなで食事をした。
「ほほう、ここまで再現できるとは、料理人の才能もあるかもしれんな。」
「えー、でもでも、冒険しないのはつまんないよー。」
「あはは、料理人になる気はありませんが、そもそも私の目的は魔法大学ですから、そこからは旅には出ないかもしれないですよ。」
「うーん、それは残念。でも、魔法大学なら面白いことがいっぱいありそうな気がするから、それだったらいい。」
など、会話を弾ませながら食事を終えていく。
よし、一つずつ実践していき、料理の幅も広げてみよう。美味しいものが食べられるのは幸福だ。そして、それが自分で調理して作れるなら、それほど便利なことはないだろう。
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翌日、レーグスと相談した結果、私は街の冒険者と組んで別で動くことにした。
レーグスのいないところで、いろいろな経験を積むのがいい、そういうことが前の街での最後によくわかったのだ。
ひとまずユミーリアを冒険者ギルドで見かけて声をかけて、一緒に組んでみないかと誘ってみる。
話はとんとん拍子に進み、彼女のパーティーと一緒に、大きな鳥型の魔物討伐に向かうことになった。
場所はおおざっぱに森のここら辺ということで地点を変えてしまう、こういうところはゴブリン討伐と異なりやりにくい。
一緒に森に進んでいき、色は例えだが、植物なら緑、人間なら青、魔物なら赤、他の生物ならグレーが反射してかえってくる魔力をふわっと周囲に飛ばして、反応を見ながら進む。
その魔力で逃げられても面倒なので、隠匿も併せておく、まだ完全ではないものの気づかれにくくなるだろう。
しばらく探索していると、大きな魔物が引っ掛かったので、パーティーメンバーにそれを伝える。
「狙いの魔物かはわかりませんがこっちにそれらしい大きさの魔物がいますよ」
幻影で、現在地の地図と相手の場所を表示して伝える。
「お前便利すぎるだろ。」
「よし行ってみよう。」
調子のいいローグ役の男は楽しそうに言い、リーダーの判断で向かうことが決まる。
少し地下ずくとユミーリアも魔物をとらえたようだ。崖の上に魔物がいる。彼女は氷系の呪文魔術が得意なのだ。
2つのレンズになる氷を作り彼女は即席の望遠鏡で相手を発見した。
そのレンズが光ったのか、狙いの魔物は一気に急降下しこちらへ襲ってきた。逃げられるより好都合だった。
ツタの呪文を唱えながら準備して、私はタイミングを合わせてそれを4つ解き放つと、魔獣は翼と足が縛られ、ズドーンと森に突撃するように落下する。
そこへみんなで一斉に向かう。ツタを引きちぎった魔物はあばれ、前衛のリーダーを狙うも、ユミーリアの氷の盾が出現しそれを防ぐ。
私はツタの魔術を放ち、相手を逃がさないようにしつつ、動きを鈍化させる。これで、魔物も暴れにくくなる。
それをうまくリーダーは槍で何撃もくらわしつつ、ローグ役は小さめの弓でダメージを負わしていく。
ユミーリアも攻撃に転じ、氷の矢で魔物はどんどんと体力がそがれていく。周囲には魔物の傷から放たれた魔力のキラキラがまっていった。
しだいに魔物は力を失い動けなくなった。無事、退治が成功したのである。
「いやぁ、それにしても見つけるのがこんなに早いと、ほんと助かったぜ。」
ローグ役の兄ちゃんは調子よく私の頭をなでる。
「どう、役にたった?」
「たったってもんじゃねぇ、大手柄だ。魔物の動き封じもしてくれたしな、本当にランク4ってかんじだ。」
「おい、しゃべってないで解体に手伝ってくれ、このままじゃ持って帰れないんだから。」
リーダーから、楽し気に注文がとぶ。
それをうけて、私たちは魔物を解体しつつも、一応の警戒を続ける。まれにだが、横取りしてくる魔物がいるのだが、今回はそういう心配は必要なかった。
私たちは無事、冒険者ギルドに戻り、報酬を分けた。
食事会に誘われたが、料理の練習がしたかったので断っておく。とても残念そうだった。許せ、人の身でできることには限界があるのだ。
私は食事を作り、魔法や呪文魔術の練習をしつつ、並行して読んだ本の情報を頭の中で整理していく。
マグルの街ではよいスタートが切れたように思い、非常に満足して、私は寝た。