表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/54

13 街カーナからの旅立ち

新しい呪文魔術とあわせてざっくりとこの世界について分かったことをまとめてみようか。


まず、生物は魔力というゼリー状のものに皮をかぶせた存在だ。切断すると、ゼリーが見え、そのとき内部の魔力が散ってキラキラと見える。


骨もなければ筋肉もないという何とも不思議な感じだ。そのゼリーは一様ではなく種類ごとに弾力やシャリシャリ間などが違うことが食事からわかった。


呼吸は生物にとって欠かせない点は共通だが、空気中の酸素をもとめているわけではどうやらないらしい。


周囲の魔力を吸って、活動力としているのだという。食事もおのおのが魔力に変化させやすい食べ物があり、それを体内で魔力として吸収している。


つまり、生物の活動のエネルギーは突き詰めると魔力ということになる。


ここで不明なのは空気という存在についてだが、今知っている3つの本や周囲の情報から、空気については空気としか知られていないようだ。


木を燃やすにしても、結局のところ熱によって木が魔力変化し、連鎖的に燃えていく状態が炎なのだという。酸素などはどうもない、とされている。


空気は、生物ではないが空気中には魔力が薄く散らばっている。ゆえに他者の魔力感知をするとき、ふわっと周囲にうっすらとした魔力を感じるのである。


空気については手持ちの文献では明言がない。おそらくある。ただ、元の世界とは役割や構造は違う可能性が高い。


といって、空気中に水分がないかというと、そうでもない。湿気のようなものを感じるのだ。もしかすると寒いところでは吐いた息が白くなるかもしれない。


魔法については、一般的には扱えても得意系統があることが多いらしい。


基礎としてならった、魔力を輝かせるあれも、人によってはそれより炎や音、そういったものにするほうが簡単だったりするらしい。私はとくに得手不得手がないように感じる。


そして、おおよそ得意系統によって魔力の色というものが変わってくる、これをもとの世界の色に当てはめて表現すると、火が得意なら赤、水が得意なら青、周囲の木々は緑、などと波長がある。


魔法はわかりやすく系統があるわけではない。得意不得意があっても、現象や非生物への魔力の変化であってそれは多岐にわたる。


瞬時に鋼鉄の剣を生み出して戦う、ということも可能である。この時の対価は変質させる大きさと密度に魔力が比例し造形のためのイメージ力が問われてくる。


イメージ力に関しては私はそういう点では優位といえる。


とはいえ、魔法というのはエルフを中心にごく一部が使う難しいものだという。多くの場合は呪文魔術を使う。


呪文魔術は、独特な言語でできており詠唱が必要であるものの、魔力操作や魔力を感じる力、イメージ力が乏しくても扱えるため、もっぱら魔術師というとこちらになるらしい。


魔法と呪文魔術のちがいは、粘土で0から人形を作るのと、組み立てキットで人形を作るくらいに難しさが異なる。


実際、炎を出すにしても呪文魔術より魔法のほうが難しい。ただ、呪文魔術にも欠点がある。もしできるにしても、応用が利かず、ちょっとした変化をさせることはできないのだ。


炎の強さは注ぎ込む魔力で調整できる。しかし、どう飛んでいくのか、とどまるのか、途中で爆発するのか、細かいことはできない場合が多く、できても呪文が長くなってしまう。


一長一短といったところだろう。


魔法と呪文魔術でできることにいくつか差が見受けられる。


呪文魔術はものによっては周囲の魔力も取り込んで大きな障壁を立てたりできる。世界に対して専門のやってほしいことを告げる言葉があって、それを叫べば世界が応えてくれる、そういうふうに考えられる。


呪文魔術には、石壁をつくったり、丘をつくったり、穴を掘ったり、木や草を生やしたり、岩を作ったりとクラフト的なものが充実していた。


呪文魔術には、言葉を直接対象に伝える、というのもある。といっても、それは自身の魔力でつなげなければ対象が選択できないため、普通にしゃべったほうが早い。


身体強化などの魔法、呪文魔術には注意書きがなされていた。


身体のありようは内在する魔力、によって引き出せる限界がある。つまり、無理に強化すれば、身体は崩壊する。


試しに、討伐対象のゴブリンを一気に身体強化してみたところ爆散した。これはこれで攻撃にも使えるかというと、魔力の低い相手でなければ効率は悪そうだった。


目的地のゼルフィーニア帝国のマルシャード魔法大学なら、もっといろいろわかるのだろうか。


#


出発にむけて準備を進める。次からは街道を通って進むことになるため、この点は楽になる。


ただ、マゼルス王国の各関所や、ゼルフィーニア帝国へ渡る際にあるていど通行手形などが必要になってくる。


冒険者としてのランクを示すカードもある程度役に立つが、私がシルの村出身者という証明をカーナの街の役場で手続きをした。簡易パスポートといったところだ。


ゼルフィーニア帝国へ渡る際はこれでは足りないが、ゾルダンの推薦状が役に立つだろうとレーグスは言っていた。


レーグスは、その時は私を送り届ける護衛という扱いにするつもりらしい。確かに、それらしい組み合わせには見えるだろう。


そうして旅立つ予定のはなしを冒険者ギルドの知り合いにしたところ、せっかくだからと、一緒に一度は依頼をこなして見ないか、と何組かのパーティが誘ってくれた。


私の送別会と、実際に腕を見てみたい、そういう気持ちなのだろうか。


せっかくなので、OKして初の他の人達との依頼を行うこととなった。


1つ目は、最近川辺に大量発生した魚人退治。

2つ目は、幽霊屋敷のお化けの確認と可能であれば除霊。

3つ目は、森に出没したオオクマトカゲの1頭の退治。


戦い方、連携の仕方、役割分担、チームの雰囲気は千差万別で非常に面白かった。


魚人は、魚に手足のはえた存在だった。


魚人退治は、様子をうかがっていると、川のごみを拾っていることが分かったので、言葉が分からないながらもジェスチャーで意思疎通を図り、こちらがゴミ拾いを始めると、魚人たちも納得したのか粛々と掃除がなされていった。


新たに覚えたツタの植物生成してものをとる呪文魔術が便利で、ひょいひょいと私はごみをかごに入れていく。他の冒険者たちは体を濡らしながら頑張っている。がんばれー。


ゴミは、北部から流れてきており、かなりの量だった。行商人たちが近場で休んで捨てでもしたのだろうか?


拾ったごみはどうするのかわからないが、魚人達がもっていった。もしかするとこの世界の水を守護する存在なのかもしれない。


2つ目の幽霊屋敷は、なぜだかみんな乗り気でわざわざ夜に行くというみょうちくりんなことになった。


それは、旧領主の館で、いろいろ残虐なことがあり、30年ほど放置されている建物だ。


お化け屋敷感覚で、一つ一つ、おっかなびっくり、楽しむ者もいれば、まぁそうした人たちが多く、怖がる人もいる。「やっぱり、明日のお昼にしようよー」と叫んでいた。


本当にお化けなら、夜にしか出ないだろう、みたいな妙な説得に負けたのである。なお、この世界にもお化け、幽霊という概念は存在するらしい。


ふと、周囲でガサゴソと音がし、皿が飛び出しってガシャンと割れる。


幽霊も魔力があるのだろうかと周囲を魔力感知したところ、小さな存在を発見する。それをツタの植物の呪文魔術でささっっと捕まえると、なんと小さな妖精だった。そう妖精のいたずらだったのだ。リミィでなくてよかった。


最近リミィがおとなしいので、この辺で何かしでかしてもおかしくなかったのである。


ただ、神聖魔術を使える人もついてきていたので、なぜかその意図が臆病なのだが、その力が見れなかったのが残念だ。悪霊退散をぜひとも見てみたかった。


3つ目は、激しい戦闘になることもなく、私の放った凍結魔術で手足を凍らせ動けなくしてから開始する。


味方へのその他の攻撃は、空中に防御の障壁を個別に展開していき防いでいくと、こちらの一方的な戦闘のなり勝負はあっけなくついた。


大きさ自体は巨大だが、シルの村からこちらに来るまでに何度も相対していていろいろな対応方法を知っている。


みんな、私の力量を直接見て肌で感じることができたようで、たいそう喜んでいた。


もっと早く、他の冒険者達ともパーティを組んでいろいろと試してみればよかったなと思った。もっと幅広く、剣や槍、斧、呪文魔術などいろいろな戦い方、使い方が見ることができただろう。それができなかったのは少し残念だ、次に活かそう。


魔術師を目指している者は、力量さに絶望しかかっていたので、ゾルダンの話をして私は普通じゃないから気にするな、他人と比べすぎず、できる限りのことをしたらいいと慰めてみたりもしたが、私が子供ということもあり、また別の部分で意気消沈されてしまった。なかなか難しいものだ。


ちょっと気合を入れて頑張りすぎたのだろうか。仲間がいるなら、仲間を信じ必要十分を目指したほうが良いのかもしれない。でないと、仲間の尊厳を傷つけてしまうこともあるということが分かった。


そうして、仲良くなった人たちと食事をとったりしながら、準備は着々と進んでいく。そのころには私はランク4に到達していた。


都合のいいことに、ゼルフィーニア帝国手前の街マグルまでの行商隊に混ざることができる算段もついた。


街から出るときミルグレンや幾人かが出迎えてくれる。


「じゃあな、アイリア、レーグス、それとちっこいの。」


「リミィちゃんでーす!」


「はいはい、まぁなんだ、君たちがいなくなるのは残念だ。またどこかで会えることを祈っているよ。」


「いろいろとお世話してくださってありがとうございました。」


なぜだろう、シルの村の時ほど感傷的になることはなかった。年の近いと思われる子供たちがいなかったからかもしれない。


こうして、私たちは行商隊とともに、次の街マグルへと向かった。さて、次の街ではもうすこしいろいろと本があるといいな。もっとこの世界を知りたい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ