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12 ひさしぶりのゴブリンとの対峙

私はしばらく魔法の鍛錬や実験、体づくりをしながら、冒険者ギルドで一人で依頼を受けていた。


とりあえず、一人で安定していろいろできるようになるのはよい気がする。


たまに、探し物の時はリミィが依頼を手伝ってくれる。


少しでも良いのでレーグスが復活したときに冒険者のランクを上げておきたい。


ちなみに、冒険者のランクは、鉄プレートに刻まれた筆記呪文で示されている。といって、それが確たるランクの証明になるかというと、その鉄プレートのカードと人間に紐づけはなされていない。


他の街や村、都市でカードを示してもいったんはそういう扱いをしつつ、確認に、国ごとにある冒険者の中央ギルドに照会されるという仕組みなのだそうだ。


なんとも原始的で面倒だ。魔法アイテムでいい感じにシステム化されているわけではないらしい。


通信網はもっぱら飛竜やグリフォンに乗った人が届ける飛行便が最も高速で、全員が魔法アイテムをつかえるわけでもないため、結局、何かの伝達といえば狼煙だったりするそうだ。


もちろん、テレポート・転移といった概念も存在しないらしい。そういう魔法を使ってみたかったと思うと非常に残念だ。


なんでも、そもそも魔法にしろ、呪文魔術にしろ、魔力がつながっていなければならないゆえ、長距離のテレポートというのが実質的に不可能と考えられている。


短距離ならどうか、というと、そもそも魔力を変質させることができるだけであって、移動させられるわけではないので、挑戦した多くの魔法使いは無残なことになったらしい。やれ、足が取れただの、なんだの。


距離を関係なく起こす魔法があるとしたら、それは神聖魔術が可能性が高い。神の軌跡がどこからでも届くのだ。といって、まったくそっち方面は手が出せそうにないが。


リミィがひょこっと消えて現れるようなイタズラをすることもある。


しかし、それもテレポートではないのだ。魔力隠匿と、噓の景色を見せる魔法を併用して実現している。実際には普通に通過しているのだという。


街の人たちとの関係はいろいろだ。


力ある冒険者として頼りにしてくれる人もいれば、恐れる人、子供のくせにとねたむ人もいるし、ただの子供のように扱う人もではじめた。


といっても、ケンカを売られることはなくなった。あの頭ツルツル事件がかなりのインパクトとなり、もう髪の毛が生えないという尾ひれがついて、誰も挑む気がなくなったようだ。


夜の暗がりだったり、街の事情に疎いスラムの人には絡まれることもあったが、冷たい水をぶっかけてあげると退散することが分かったので、最近はそうしている。


#


ある日の朝、レーグスから唐突に謝られた。


「すまん、しばらくほっておいてしまったり、ここ数日間の俺の行動はダメだったと思う。すまん。」


「問題ないですよ。私はたくさんレーグスに恩があるのだもの。これでトントンになっているとも思ってないわ。」


「そうか、うむ、お前は本当に賢くて寛容だな。ずっと待ってくれていて、その間もランク上げをしていたのだろ。」


「はい、一人で依頼を受けるというのもいい経験でしたし、マイナス面があるとすれば、レーグスと稽古がしばらくできなかったことでしょうか。」


「そうか、そう言ってくれるか。よし、リミィ、俺達は依頼を受けに行くが、今日はどうする?」


「え、行く行く、あのね、アイリアのランクが3になったから魔物討伐も弱いのなら受けられるようになったのよ、ちょっと楽しそうじゃない?」


「なるほど、内容はおそらくシルの村とさほど変わらんだろうが、久しぶりに三人で組んでみるか。」


「はい」


そういって、冒険者ギルドへおもむき、洞窟に住んでいるゴブリン討伐の依頼を受けた。なんだか懐かしい。


そう、ゴブリンの洞窟、すべてはそこからはじまったのだ。


慣れた手つきで準備をして、洞窟のある森を進んでいく。久しぶりに街から出たこともあり、なんだか気分もいい。


あたりを軽く警戒しつつ進む。警戒に関しては私よりも鼻の利くレグルスのほうが得意だ。と言ってまかせっきりにせず、なるべく他の魔力で異変がないか分析しながら進んでいく。


魔力は生命あるものはすべて持っている、それゆえこういう森のような木々のあるところは別の存在をくっきり把握するには難しい場所である。


どこもかしこから魔力を感じるのだ。それでも、植物っぽい色とそれ以外というのがなんとなくわかるようになっていたので、そこに気を配りながら進んでいく。


特に何事もなく、洞窟へとたどり着いた。


リミィが明かりの魔法で照らしてくれながら中を進む。この洞窟は灰色の岩肌で、シル村のあの光景とは全く違う空気感がある。


「いるな。」


レーグスは、臭いでゴブリンを感じ取ったらしい。やはり早い。


奥へ進んでいくと、十匹以内程度のゴブリンが待ち構えていたが、レーグスの圧倒的剣技と、私の風魔法の斬撃、リミィの陽動であっさりと終わってしまう。


首や四肢を跳ね飛ばされたゴブリンたちからはキラキラとした粒子が舞っている。おそらく、切断によってこぼれた魔力、つまり生命力というかそういうものなのだろうと今なら判断できる。


他者の魔力探知をつかいほかに植物以外の生物がいないかを確認すると、特に反応はなかった。隠匿されているとわからないが、おそらく大丈夫だろう。


「他にはいないようです。」


「このランクの依頼が受けられると、冒険者としても生活しやすくなるぞ。」


「そうですね、ごはんや宿泊代などを考慮すると、ちょっと贅沢できる感じに思いました。」


「そうだ。とはいえ、多くの冒険者はここが分岐点だったりするんだが、アイリアの場合はすでにその域を通り越していたから関係ないな。」


「分岐点ですか?」


「あぁ、魔物との対峙というのは、未知の存在に恐怖しつつも、うまく立ち回って何とか退治、できないなら、しっかりそれを判断して撤退しなければならん。」


「一般的には、どういうふうに冒険者達は乗り越えていくんですか?」


「いろいろある。村から一緒に旅立った仲間たちと、徐々に頑張っていく者たちもいれば、師匠が付き添いで後ろで見守られながら、などな。」


「もうそんなことはいいから、早く帰ろう、ゴブリン臭いところにずっとはいたくなーい。」


リミィの提案に従って、私たちはこともなく冒険者ギルドへともどり、対価を受け取る。


いつもと変わらない、何の変哲もないその対価だったが、今日はなんだか嬉しかった。


#


次の街を目指すのはここでの冒険者ランクを4まで上げてから、ということになった。なんでも、拍がつくそうだ。


5は、短期間では難しく、6になると貴族や王族とのかかわりが必要になり、政治的にややこしいことも含まれてくるらしい。


とはいえ、順調にいけば旅立つことになるだろう。


ということで私は、いつ良い本に出合えるかわからないので、本屋さんに向かって呪文魔術の本を2冊とも購入した。魔法の本はすべて買ったことになる。


呪文、魔法とは違い声による発生と、そもそも専用の言語があるらしいその本は新しい発見をもたらしてくれそうでワクワクしている。

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