表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

76/131

74話 副会長のひしょなのじゃ!

新作もはじめました! (F級の投稿も続けます)


良かったら読んでみてください!↓


この身勝手な異世界に復讐を~異世界転移したら失敗作として捨てられた俺が《災厄の魔王》と呼ばれ、復讐を果たすその日まで~

https://ncode.syosetu.com/n2955in/


また、いつも評価やブックマークありがとうございます!

大変励みになっております


氷鬼ギルドとの死闘を終えて3日が経過した。

病院へと搬送された響だが、今回は騒動を聞いた組合の北海道支部がヒーラーを寄越してくれたので、その日の内に退院することが出来た。


2日の間ミアと北海道を観光し、今日の昼過ぎに神奈川へと2人で帰還した。

ニュースが流れてから未だに佐藤響への賞賛は止まらず、響は外へ出るのに帽子やサングラス等を着用している。


退院直後にはマスコミに囲まれ、北海道の街では大声で「主人公だ!」と指差しをされ大勢に囲まれるはめになった。

これがまた絶妙にださい呼び名で、たまらなく恥ずかしかった。


そんな事もありすぐに変装セットを購入し、外では身バレ防止に勤しんでいる。

そして何故か、隣を歩くミアも同じように帽子を深く被り小顔には大きすぎるサングラスを掛けていた。


どこへ行くでもない。

ただスーパーで買い物をしているだけだ。


「なあミアはなんで変装してんだ?」


買い物カゴに卵をそっと入れながら響が言った。


「……かっこいい……でしょ……?」


ズレてもいないサングラスをくいっと直し随分と気に入っているようだ。

因みにミアの服装はいつも通り制服擬き。

サングラスなど似合うわけがなかった。


かなりセンスの悪い痛い子、が一般的な印象だろう。


「ま、まぁうん。それよりミアの料理が楽しみだ!」


元々ホテルに滞在しているミアだが、今日は響宅にお泊まりする予定だ。

そして手料理を作りたいと言い出したので、今こうして2人で買い出しに来ているのである。


「……まかせて……!」


カゴの中には卵と何種類かの野菜。

何を作るのかは不明だが得意げな表情をしているので余程自信があるのだろう。


それから会計を済ませ響の家へと向かった。

仲良く手を繋ぎ歩く姿は微笑ましいものだ。

……サングラスを掛けていなければの話だが。


段々と家に近付くにつれ響は不安になってきた。

なんせ生まれてこの方自宅に女性を招いた経験がないのだ。

ものすごい散らかっている訳ではないが、整理整頓がされている訳でもない。


──こんなことならもっと綺麗にしておくんだった……!


そんな後悔はもう遅く、何の変哲もないアパートへと辿り着いてしまった。


「ここが……響の、お家……?」

「うん、そうだよ。さっきも言ったけどあんまり広くないけどいいのか?」


仮にも一人暮らし用の部屋だ。

広いわけなどあるはずがない。

しかしミアはコクリと頷き微笑んだ。


「狭くて……いい……!」

「そういうもんなのか……?」


解錠しドアを開けると、誰もいないはずの部屋から何やらやかましい笑い声が響いてきた。


「ん? なんか声が……テレビ付けっぱなしだったか? ミア、ちょっとだけ待っててくれ」

「……ん」


おかしいな、と思いつつも鍵は閉めてあったが、念の為ミアを外で待機させた。

テレビの消し忘れだろう、そう思いながら部屋に入ると、


「……」

「うわははははっ! おかしいのじゃ! こやつら何をやっておるのじゃ!」


バラエティ番組を見て爆笑し、足をバタつかせている派手な赤髪をした少女の姿。

ポテチの袋も幾つか転がっている。


「あっ……すみません部屋間違えました」

「ひぃ……ひぃ……お腹痛いのじゃ!うわはははっ」


ぺこりと頭を下げるが、少女は気付きもせずにテレビに夢中になっている。

部屋を出てそっとドアを閉め、


「ミアごめん、部屋を間違えた」

「……? これ……佐藤……」


ミアが表札を指差し呟いた。

恐る恐る見ると確かに『佐藤』の文字。

汚れ具合からまず間違いなく我が家の表札だと察した。


「ちょ〜っと待っててな」

「……ん」


満面の笑みでミアを再び待たせると、乱暴にドアを開けてドシドシ音を立てて部屋内へと入り込んだ。


「うぉぉい!! 誰だてめぇ!俺の家で何してやがる!? 部屋間違えたのかと思ったじゃねぇか」

「……なんじゃうるさいのぅ。 誰じゃお主。わしは今テレビをみているのじゃ!」


後ろで騒ぐ響に気付いたかと思うと、家主である響にこの態度。

おまけにポテチをぽりぽりと食べ始める。


「お前が誰だよ!? ていうかポテチ食うな!」

「あっ!」


ポテチの袋を奪い取り勢いよくゴミ箱へ投げ捨てた。

悲しそうな顔でこちらを睨む少女。

きっとポテチはこの少女にとって大事なものだったのだろう。


「ここ!俺ん家!お前!誰!わかる!?」

「ならお主が佐藤響か!全く丸一日も待たせおって……! わしは……えっとなんじゃったか……あっ、そうだこの紙を渡せばいいのじゃ……!」


どうやら丸一日も他人の家で寛いでいたらしい。

ブツブツと何か呟き、1枚の名刺を見せつけてきた。

因みにポテチの油でベトベトになっている。


「うわきたねっ……なんだ……探索者、組合……副会長……秘書……? 」


ベトベトになった名刺だが、辛うじて解読できた。

そこには《探索者組合 副会長秘書 ウル》と書いてあった。


「そう、わしはひしょなのじゃ! 」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ