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70話 F級vsA級①


「……これ、貰う……ね」


響と剛力が睨み合う中、こっそりミアは気を失った風使いの懐を漁り紫色ポーションを見つけた。


普段ならこんな事は絶対にしないミアだが、氷鬼ギルドから受けた仕打ちを考えればこれくらいは無いに等しい。

それに、もうMPが空っぽなのだ。


少しでも作戦の成功率を上げ、響と2人で生き延びるにはなりふり構っていられない


小瓶を空けゴクゴクと飲み干すと、全身にへばりついていた倦怠感がすこしマシになった。


「これで……大、丈夫……多分」


悪逆非道な相手に対してミアは律儀にポーションの代金をそっと握らせた。


そして邪魔にならないように端っこで2人の戦いぶりをじっと見ていた。


「響……ごめん……ね」


杖を強く握り悔しそうな表情は、自身の無力さに対する怒りなのだろう。

ミアはD級探索者であり、A級の剛力と異常な成長を遂げた響の戦いに参加出来るほどの力はない。


それは勿論、援護射撃ですら足を引っ張りかねないと言う事だ。


ギリギリと歯を食いしばりなが、せめて響に託された重要な役目は遂行しようと己を律していた。



「くはは、どうしたよ英雄様。その程度かァ?」

「うるせぇッ」


幾度となく剣戟を交わしている2人だが、そこには決定的な差があった。

必死に刃を振るう響と、余裕綽々な剛力。


ステータス差も勿論あるが、それ以上に武器の熟練度に大きな差があるように見える。


剛力のゴツイ見た目には似合わない美しい剣捌きは、一朝一夕で身につく代物ではないだろう。


上下左右あらゆる方向から打ち込んでも、全て弾かれてしまう。

カウンターを決めようと思えばいつでも出来るはずだが、言葉通り遊んでいるのか弾くだけで攻撃はしていない。


響は跳躍し白光を振り下ろす。

が、当然の如く弾かれる。


「このッ!」


バク宙し距離をとる。

と思いきや、回転の途中で白光で空を切った。


刹那、青白い斬撃が生まれ剛力の顔面に襲いかかる。


「──チッ!」


予想外すぎる攻撃に対処が遅れる。

直撃は避けたが剛力の右頬には一筋の赤。


──まじか。完全に不意をついたつもりだったんだけど……


響はこれまで幾度とない打ち合いの中、一度も飛燕を使わなかった。

切り札とは思っていないが、それでも確実に一撃を食らわせるために温存していた。


だがそれでも剛力にはかすり傷を与えるのがやっとだ。

力の差は数字で見るよりもずっと大きかった。


「てめぇ……俺に傷を付けやがったな……」


押し潰されそうになるほどの重圧。

全身毛が逆立つのを感じた。


「消し炭にしてやるよクソ餓鬼ィ」


剛力は手をかざし巨大な魔法陣を展開。

魔法陣から大量の炎が吹き荒れ、やがてその姿を確立させていく。


魔法陣から上半身を出したのは巨大な炎の魔人。

ただ顕現しただけで大気の温度が上昇し、雪山だと言うのに視界に映る雪は全て溶けていた。


触れればただでは済まないのは見ればわかる。


──あれは、ヤバい! 直撃だけは絶対に避けないと……!


「イフリート……焼き払え」


剛力の言葉に呼応するようにイフリートは天に向け咆哮。

そして標的の響を睨み付け、大きく口を開け──


「嘘だろッ!?」


超特大の火炎放射。

避けようにも範囲が馬鹿げているせいで、回避が間に合わない。


「だめ……ッ!」


その時、響とイフリートの間に巨大な氷塊が現れた。

ミアが堪えきれずに魔法を行使したのだ。


だがそのおかげでゼロコンマ数秒ではあるが、炎の行く手を阻んだ。

その隙に響は大きく右方向へと走り、炎の軌道から脱出した。


「さんきゅーミア!」


次の瞬間には氷塊は全て溶け、標的を見失った炎は数十メートルにもわたり雪山の木々達を焼き尽くし大地を大きく抉り、やがてイフリートは消えていった。


地形をも変える一撃。

もし、ミアの援護がなかったら響は今頃灰になっていただろう。


雪と氷塊が溶け辺りは大量の水が足場を覆う。


「ちょこまかと鬱陶しい餓鬼だなおいッ!」


剛力は背後に無数の魔法陣を展開し、剛力自身も駆け出し一気に距離を詰めてきた。


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