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64話 雪山救出作戦②


雪山の奥地にある洞穴の入口は不自然な氷壁によって閉ざされていた。

中は大した広さではないが、雪や風から身を守るにはうってつけだった。


入口を塞ぐ氷壁も外敵対策としては抜群の効果を発揮している。

氷壁の下には雪が積もり洞穴の存在を隠すのをひそかに手助けしていた。


その閉ざされた空間にポツリと、火を起こし体育座りで暖を取っているのは、ボロボロで今にも倒れそうな程傷ついたミアだった。


「響……約束……守れな、そう……」


揺らめく炎を眺めていると、自然と涙がこぼれそうになった。

ここに来てからというもの、倒したモンスターは角兎数匹のみ。


他のモンスターにはまるで歯が立たず、逃げ回っているうちにこの洞穴に辿り着いたのだ。

携帯食料も底を突いた。


幸い、水に関しては魔法でいくらでも出せる。それがなかったらいよいよ危険な状態だったに違いない。


この洞穴にこもりはじめて既に40時間以上経過している。

安全と思われるこの場所だが、ミアは体力が回復した今、ここを離れようと考えていた。


「……もう、帰って……くるはず。その前に……逃げないと……」


チラリと奥の方を見ると、草や枝が大量に敷きつめられている。

まるで何かの巣のような、そんな感じだ。


草木のベッドの大きさからそのナニカは決して角兎などではなく、大型のモンスターであることが伺える。


道中襲われたアイスオーガにも歯が立たなかったのに、この巣の主はそれと同等かそれ以上の力を持っている可能性が高い。


逃げ場のない洞穴で遭遇してしまえば、確実にそこで終わりだ。


すぐにでも移動しようと立ちが上がったその時、ガンガンと氷壁に何かがぶつかる様な音が響いてきた。


「嘘……でしょ……なんで、今……なの……」


サァっと全身の血の気が引いていくのがわかる。


この巣の主が帰ってきたのだ。


「助けて……! 助けて……響……!」


ミアは絶望に支配され、来ないと分かっている響の名を呼んだ。

そして同時に、凄まじい衝撃と共に氷壁が破壊されるのを感じた。


────


──



「駄目だ、なんの手がかりも掴めない……早く見つけないといけないのに、クソ!」


角兎の群れを殲滅してから1時間ほど。

響は雪山を捜索してはいるが、なんの手がかりも掴めずに苛立っていた。


徐々に木々達の数も増え、森というに相応しいエリアに入ろうとしていた。

そして木々の間から、右腕の凍り付いた鬼ようなモンスターが現れた。


「あれは……まさか、ミアと戦ったのか……?」


モンスター同士で戦う事は極めて稀。

ミアとの戦闘により負傷したと考えるのが自然だろう。


──それなら、ミアはこの森のどこかにいるって事だ。


現実的に考えれば、生存は絶望的だ。

だが響は無理矢理前向きに捉えていた。そうでもしないと、気が狂ってしまいそうだから。


【アイスオーガLv48】

・弱点 魔法全般 胸部

・特性 近距離戦闘しかできないが、一撃の威力は極めて高い。気性が荒く獰猛。遠距離からの攻撃にはあまり対処出来ないので、魔法や弓などが有効。打撃耐性を持つので打撃にはめっぽう強い。また、この個体は消耗が激しい。

・スキル 怪力Lv5 凶暴化Lv3 威圧Lv3 打撃耐性Lv4


本来ならばそこそこの強敵なようだが、ミアとの戦闘で消耗しているようだ。

よく見れば右腕以外にも所々に傷がある。

近距離戦闘しか出来ない相手に対し、ミアは中遠距離がメイン。


相性がよかったのだろう。

そうでなければ彼女がアイスオーガ相手に生き残るのは難しい。


アイスオーガの左手には巨大な棍棒が握られている。

あれで殴られればタダでは済まないだろう。


「グオオオオオ」


響を発見したアイスオーガは雄叫びを上げ、棍棒を振り上げ跳躍した。


響はぐっと腰を落とし、白光の柄を握る。


アイスオーガは落下と共に棍棒を振り下ろし、響を叩き潰そうとするが──


「どけ!!」


完璧なタイミングでの抜刀。

股下にくい込んだ刃は止まることなく上半身、そして頭部をも斬り裂いた。


居合切りという技法だ。まだまだ技は拙いが、それなりに形にはなっている。


アイスオーガは空中で両断され、左右に落下した。


【レベルアップしました】


響は余韻に浸ることなく、アイスオーガが出てきた森へと急いだ。


森を走り回るうちに、ある大木に意図的に付けられたであろう傷があるのを発見した。


「これは……よかった、まだ生きてる! あっちか!」


矢印のような傷は左方向へと指している。

響は喜びをかみ締め、矢印の示す方向へと急いだ。


その後もいくつか矢印のついた木を頼りに走り続けると森を抜けた。

目の前は断崖絶壁になっていて、とてもこの崖を登ったとは考えられない。


辺りを見ると端の方で巨大なホワイトタイガーが壁に体当たりしている。


「……なにしてんだ?」


執拗に壁に突進を繰り返している。

その壁をよく見ると下の方は雪が積もってしまっているが、その上からは壁の質が異なっている。

岩肌の中に、氷壁が混じっているのだ。


うっすらとだが、その先は空洞があるようにも見える。


「間違いない……! あそこにミアがいる!」


響は確信を持つと、気付けば脚は地面を蹴っていた。

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