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37話 不運の連結ダンジョン②


「ミア、援護だけは頑張ってくれ!」


さすがにCランクダンジョンで今の響が単体でどうにか出来るとは思えない。

強くなってはいるが所詮はF級の伸び幅だ。


「うぅ……ミア、がんばる……」


少し、いやかなり嫌そうな表情だが何とか了承。

ミアも響もなんだかんだ自分達の置かれている状況を理解しているのだ。


少しの睨み合いの末、先に動いたのは吸血蜘蛛だった。

八つ足を器用に動かし高速で接近。

視界の悪さも手伝ってほんの一瞬反応が遅れた。


「くそ、どこだッ!」


一瞬にして闇に紛れた吸血蜘蛛。

光の照らされている場所を避けているのか、姿は見えない。

しかし、鼓膜を揺らす不快なカサカサという音だけはハッキリと聞こえてくる。


「──いやっ! な、なに……身体が……うごか……ない」


後方から悲鳴。

振り返ると、吸血蜘蛛は標的をミアに定めていたのか腹部の先端にある出糸器官から、粘性の糸を伸ばしミアを絡めとった。


「ミアッ!」


麻痺性のある糸により四肢を拘束され、強制的に無防備な大の字の体勢をとらされる。


──思ってたよりずっと速い! ミアがいるからサンダーボルトは撃てないし……くそ、厄介なモンスターだな!


響は白光を握りしめ大地を蹴りつける。

拘束している糸を切断しようとしたが、そう簡単にはいかないようだ。


ミアと響の間に、ドスンと上から降ってきた吸血蜘蛛により進路を絶たれる。

現状維持支援は望めない。響一人でどうにかしなければならない。


Cランクダンジョンに突入してから初めてのモンスター。早くも二人は追い込まれていた。


「どけッ」


顔面目掛けて刃を振るう。

が、当然のように避けられる。

吸血蜘蛛の2本の鎌の様な鋭い脚での連撃。


白光に触れるとまるで刃物のような手応えを感じる。


──どうにかしてミアから離さないと!


金属同士のぶつかり合うような甲高い音が洞窟に響き、火花を散らす。

目まぐるしい程の連撃を響はよく捌いていた。


──ステータスが上がったからかある程度の動きにはついていける。前から動体視力だけは自信があったんだ。


ステータスで言えば確実に吸血蜘蛛の方が上だ。

吸血蜘蛛にとって響とミアは格下であり、捕食対象でしかない。

だと言うのに、何故攻めきれないのだろうか。


しかしそれなら、上手く捌く響が受けれぬ攻撃をすればいい。

そう思ったのか吸血蜘蛛は八つ足をググッと溜め、跳躍した。


──押し潰す気か!?


咄嗟にバックステップで回避するが──


「ぐああッ!」

「響……!」


着地直前、腹部から糸を吐き出しその反動で無理矢理方向転換。

そのまま響の左肩に噛み付いた。

牙は深く刺さり、焼かれたような痛みが全身を襲う。


ちゅうちゅうと至近距離で巨大な蜘蛛が血液を吸い出す様は、中々にグロテスクだった。


「この……いつまで吸ってんだよッ!」


素早く狡猾な吸血蜘蛛が至近距離にいるというのは、響にとってチャンスでもある。

響は主眼に手を添えサンダーボルトを連発。

堪らず距離を取り八つ足をバタバタとさせて悶える。


──この傷は結構やばい。早めに倒さないと、確実に殺される。


冷や汗が頬を伝う。

心臓の鼓動と共に激痛が押し寄せる。


だが、そんな事に構っている暇はない。

悶えている吸血蜘蛛に追撃をすべく距離を詰める。


「まずは1本だ」


白光を下から思い切り振り上げ、厄介な前脚を切り飛ばした。

しかし、吸血蜘蛛も甘くはない。

1本の脚を犠牲に、腹部から糸を射出し響を糸で拘束した。


「くそッ!!!!」


いつ麻痺になるか分からない中、動ける内にとサンダーボルトを放つ。

残った前脚を焼いたが、大きなダメージにはなっていない。


──まずい。ほんの少しずつだけど痺れてきてる。早く、早くしないと……こうなったら一か八かだッ!


指先に痺れを感じた響は、完全に動けなくなる前に賭けに出た。

それも随分雑でぶの悪い賭けだ。


サンダーボルトを白光に纏わせ、全ての力を右腕に集中。


「いっけええぇぇぇッ」


それを思い切り投擲。

上手く行けば吸血蜘蛛は致命傷をおうだろう。しかし、回避されてしまえばもう打つ手がない。


白光の軌道には吸血蜘蛛の主眼。このまま進めば眼球を貫き頭部を破壊する事が出来る。


──頼む、上手くいってくれ!!!


「あ──」


切っ先が眼球に触れる直前、吸血蜘蛛は咄嗟に右方向にそれ、刃を回避した。

響の最後の攻撃は空を切ったのだ。

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