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30話 これってフラグだったりしますか?②

新作もはじめました! (F級の投稿も続けます)


良かったら読んでみてください!↓


この身勝手な異世界に復讐を~異世界転移したら失敗作として捨てられた俺が《災厄の魔王》と呼ばれ、復讐を果たすその日まで~

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また、いつも評価やブックマークありがとうございます!

大変励みになっております


「おっさん、それはその子が持ってたもんだろ? 返せよ。盗人はどっちだ」


列から出て、今にも手を出しそうなカイジンの肩を掴む。

まさか止められるとも思っていなかったカイジンは、一瞬の間を置いて振り返り、


「誰かと思えば……ガハハハハ! 最弱の覚醒者で有名なF級のクソザコじゃねぇか! てめぇには関係ねぇんだよ。くだらねぇ正義感で首突っ込まない方が身のためだぜぇ?」


響の事を知っているのか、見るなり下卑た笑みを浮かべ胸ぐらを掴んだ。


「まって。その人は、関係……ない。手……離して」


少女はそれを見て咄嗟に止めにかかるが、枯れ木のような細腕ではカイジンを止めることは出来ない。


──この子はこんな時でも人の心配をするのか……?


少女の真紅の瞳は真剣で、自分のことなどお構い無しに響を救おうとしていた。

響はそんな彼女を見て、なんだか少し胸が痛くなった。あの時すぐに助けていれば、この胸の痛みもなかったのだろうか。


「放せよおっさん」

「──いでぇ……ッ! てめぇ何しやがる!」


カイジンの腕を掴み全力で力を入れる。

響の力のステータス値とカイジンの防御力ではかなりの差がある。

掴んでいた手を強制的に放される。カイジンはジンジンと麻痺したように掴まれた手首に痛みを感じた。


「なにって……ただ、腕を掴んだだけだろ? 一々大袈裟なんだよ」


響は今、自分でも驚くくらい冷静だった。

だが同時に心の奥底にフツフツとした怒りも感じている。


なぜ、この少女が搾取されなければならないのか。

なぜ、こうもくだらない行いをする人間が探索者を名乗っているのか。

なぜ、F級だからと無条件で見下され嘲笑されなければならないのか。


響にはどれもこれも、理解できなかったしするつもりもなかった。


「ヒッ……」


氷のように冷たい視線を受けカイジンはゾクリと寒気がした。


「返せよソレ」


そう言ってカイジンの方に手を置きニッコリと、しかし悪魔の様な顔で微笑んだ。


「え、F級風情が……なめんじゃねえええッ」

「救いようがないな」


大声を出すことで自信を鼓舞。虚勢をはり拳を振り上げた。

単純な力であればカイジンの方が上だが、速度がなければどうと言うことはない。


「危ない──ぇ?」


振り下ろされた拳に少女が叫ぶが、結果は想定していた内容とは大きく離れていた。


半歩下がる事で無駄なく回避。勢い任せに拳を振り下ろしたカイジンは避けられるとは思っていなかったのか、場で前のめりになりよろけた。


響はカイジンの首に手を回し、軽く脚を引っ掛ける。それと同時に前方に引き込むように力を入れると、


「おぶッ!」


カイジンは勢いも手伝って、受け身も取れずに顔面から床にダイブ。


「遅いんだよノロマ」

「この……調子に乗るなッ!」


煽られたせいか、すぐさま立ち上がり再び拳を繰り出す。

が、当たらない。何度も何度もはなたれる拳はそのどれもが空をきり、触れることすらなかった。


「すごい……あの人、本当に……F級……?」


止めに入ろうかと思っていた少女すらその足を止め、唖然としている。


「もういいだろ。いい加減ソレ返してやれよ」

「うるせぇんだよクソガキャァッ!」


──この調子じゃ説得は無理だな。あんまり手は出したくなかったけど、仕方ない。


カイジンの拳が響の顔面のすぐ横を通り、同時に響の掌底がカイジンの顎を穿つ。


「ふッ!」

「──がはッ!」


掌底はクリーンヒット。


「こんな軽い打撃俺に効くわけ──は? な、なんだこりゃあ!」


効いていないと言いつつ、よろめいて上手く立ちがることすら出来なかった。


「脳震盪だよ。んじゃ、これは持ち主に返すからな」


よろめき尻もちをついたカイジンから魔煌石を奪い返すと、ぽかんと口を開けていた少女に差し出した。


「ほら、これ君のだろ?」


少女はちっちゃい手でそれを受け取ると、大事そうに抱きしめ、


「あ……あり、がとう」


身長差的に響を見上げた少女は、必然的に上目遣いとなり、


──はぅわ!? なんだ、なんなんだこの心臓を鷲掴みされたような感覚は!?


「ど、どういたしまして。あの……うん、取り返せて良かった」


少しキョドった響の様子からして、どうやら効果は抜群のようだ。

そして今回の騒動の元凶であるカイジンは、いたたまれなくなったのかそそくさと階段の方へと消えていった。

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