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29話 これってフラグだったりしますか? ①


「思ったよりも楽だったな」


Eランクダンジョン最深部。

響はボスであるトロールを倒し、魔石を剥ぎ取っている。

ここに来るまでの間、単独踏破のおかげかレアドロップが1つあった。


力の雫といって、飲むと力が1~3上昇する貴重なアイテムだ。売れば500万以上の値はつくだろう。

滅多にドロップしないが、超絶強力という訳でもないので売却する人も珍しくはない。


「下級魔石が19個と中級魔石が1個か。家賃払ってもお釣りが来そうだな! よかったよかった。さすがに家なき子にはなりたくねぇ」


トロールから魔石を剥ぎ取るとリュックに入れた。

下級魔石は雑魚モンスターからとれるが、換金してもせいぜい1つ3000円程度。

中級ならサイズにもよるが20000円はくだらないはずだ。


最低でも8万近くは稼いだ。家賃問題はひとまずこれで解決できたはず。

2回目のEランクダンジョンソロ攻略だが、レベルアップしたおかげか危なげなく攻略する事が出来た。


レベルも6程上がり、響としては大満足だ。


──ちょっと物足りないって感じるのは俺が強くなったからだろうか。Eランクならもう1つ回ってもよさそうだな。


ゲートを通り帰還すると、まだ昼過ぎで太陽は煌々と街を照らしつけていた。

響はとりあえず魔石を換金するため、付近の組合所属のギルド《焔》に向かった。

個人や企業のギルドとは違い、組合に所属している焔ではギルド員以外も換金やクエストの受注が可能だ。


尤も、クエストならばスマホがあれば解決するので皆換金のついで程度にしか思っていないが。


高層ビルの1階から5階が一般探索者の立ち入りできる範囲で、ダンジョンボードは1階、換金所は2階にある。


「あんまり好きじゃないけど、本部まで行くよりはいいか……」


ビルを見上げてため息をつくとイヤイヤだが、ビルの中へと歩を進めた。

F級探索者とは基本的に悪意の的になることが多い。響もそれでだいぶ苦労したものだ。


中に入ると探索者達の会話がいやでも耳に入ってきた。


「なあ次はBランクダンジョン行ってみねぇか?」

「私、この間ドラゴンハートゲットしちゃった!」

「こないださ、攻略隊のメンバーが神隠しにあってよ」

「昨日馬渕翼見たけどさ、オーラが違うよな俺ら一般人とは」


等と他愛もない会話が聞こえてくる。

その中に混ざれる訳もなく響はそそくさとエレベーターへと逃げた。


「はあ……なんかここに来るだけで気が重くなるな」


ため息をついて探索者達を消すように目を閉じた。

自然に愚痴が出てしまうほど、いい思い出はないみたいだ。


2階のボタンを押すと、ピンポンと音が響き直ぐに到着を教えてくれた。


「うわあ……結構並んでるな」


扉が開くと換金所には既に数十人の長蛇の列があった。

窓口が3つあるとは言え、数分では捌ききれないだろう。

時間に追われている訳ではないので、潔く並ぼうと思ったその時だった。


「なんだとクソガキ! もういっぺん言ってみろッ!」


前方から怒号が響いた。

通常のギルドならまだしも、組合所属の焔では珍しい事だ。

なんだろう、と野次馬精神全快でひょいと覗いてみる。


するとガタイの良いおっさん探索者と、年端もいかぬ少女が揉めていた。

おっさんの方はそこら辺に転がっているような容姿だが、少女の方は思わず2度見してしまうほど整っていた。


純白に輝く良く手入れされた白い髪、それと同じくらい白くきめ細かい肌。まつ毛まで白いのは生まれつきなのだろうか。

身長も低く華奢な体付きだが、ここに居るということは彼女も探索者なのだろう。


真っ白という言葉を擬人化させたような、そんな少女だった。


「……本当に……私が、見つけた。おじさんには……あげない」


そう言うと赤い瞳でキッとおっさんを睨んだ。


──あれは、魔煌石?


魔煌石とは宝石の一種であり、特に使い道はないが見た目の美しさにより高値で取引されている。

低ランクダンジョンでも極稀に見つかると言うが、年に数回程度見つかればいいほうだ。


「何言ってやがる。てめぇみてぇなクソガキにそんな貴重なもん渡す攻略隊があってたまるか! この盗人が」

「む……これは私の──あっ」


イカつい探索者は唾を撒き散らしながら凄み、少女の手から魔煌石を奪い取った。


「コイツは俺が責任もって攻略隊のリーダーに返却してやる。これに懲りたら盗みなんてするじゃねぇぞ! ガハハハハ」

「……返して……!」


豪快に笑う男だが、魂胆は丸見えだ。後日にでも自分で換金するつもりだろう。

周りの探索者はおろか、換金所の職員ですら仲裁に入ろうとはしていない。


個人の争いには極力首を突っ込まないのが暗黙のルールだからだ。

とは言っても、目の前のそれは完全に犯罪行為。

こんな事がまかり通っていい訳がない。


「アイツ、なんて野郎だ! あんな女の子から……目目連!」


【D級覚醒者 カイジン Lv29】

HP: 300 MP:95


力61

防御力35

知能20

速度35

精神力25


表示されたステータス値は平均すると今の響よりも随分下だった。

等級はカイジンの方が上だが、レベル差がかなり開いているのでそれも当然だった。


──なんだよアイツ俺より弱いじゃん。それなら……

「って違ぇだろ! そうじゃねぇだろ俺! 誰かが困ってんなら助けないと……!」


今の響にはある程度の力がある(・・・・)

少女の事は何も知らないが、はたからみれば弱いものいじめだ。


まるで少し前の自分を見ているかのように思えた。

響の身体はもう、動きだしていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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