127話 教祖レドルジ②
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この身勝手な異世界に復讐を~異世界転移したら失敗作として捨てられた俺が《災厄の魔王》と呼ばれ、復讐を果たすその日まで~
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キン、と高い音が鳴り響きアルベルトを貫くはずだった光は明後日の方向へと弾かれた。
異変に気が付いた翼は響とドレイクを置いて、一足先に地上へと飛び降りた。
そのおかげでアルベルトは命拾いしたのだ。
「コイツが親玉か? はっ、随分派手な登場じゃねぇか」
「あ、兄貴……わりぃ、助かった」
油断していた訳ではない。と言うよりも、油断など出来るはずもない。
もし今翼が来なかったとしたら、アルベルトはもうこの世にはいなかったはずだ。
翼にも似た圧倒的な存在感。アルベルトは勝つとか負けるとか以前に、勝負にすらならないとそう感じていた。そしてそれはクラッドも同様だった。
では翼が戦えばどうだろうか。この世界で最強の彼ならば、目の前の怪物相手にも勝ってくれるだろうか。
自然とそんな問いが浮かんだ二人だったが、答えは出なかった。
勝てると断言できない程に、レドルジの存在感は半端ではなかったからだ。
「……強いな。それもかなり」
閃光を防がれたことに驚きもせずにレドルジが呟いた。
「そりゃどうも。登場して早速で悪いが、退場してもらうぜ? てめぇら狂信者には散々振り回されたんだ。加減はしねぇぞ」
翼は双剣を構えると、そのタイミングで響を乗せたドレイクが到着した。
「主殿、加勢するぞ」
「コイツは……?」
何も知らない二人でもレドルジの危険性に気付いたみたいだ。
響は身体が多少痛むがお構いなしに鬼哭を抜き、切っ先をレドルジに向けた。
五対二。数は圧倒的に有利だ。翼もいて、覚醒し更に力をつけた響もいる。いかにレドルジが強いと言っても戦力的にも響サイドに分があるはずだ。
しかし肝心のレドルジは構える事をせずに、意味深な笑みを浮かべ、
「……時間のようだ。少し遊んでやるつもりだったが残念だな」
「逃がすかッ!」
響が突っ込もうとしたその時、
「──やめろ。ソイツに近付くな」
「えっ?」
翼に服を引っ張られ強制的にストップがかかる。
そして次の瞬間にはレドルジとオシリスの周りを淡い光が包み込んだ。
「くくく、また仕留められなかったですねェ。残念」
オシリスは光に包まれると、歪んだ笑みを浮かべ煽るように言った。
それに反応したアルベルトはその場で地団駄を踏み、
「野郎……くそ! 待てオシリスッ!!」
「落ち着けアルベルト。奴の思うつぼだ。なんだか分からねぇが、あれには触れない方がいい」
舌打ちをし苛立ちを隠しもしない翼だが、冷静さは失っていなかった。
得体の知れない光に包まれた途端に態度が豹変したオシリスを見ればある程度は想像がつく。
攻撃を無効かする類か、既に触れることすらできないか、そんな所だろう。
「さらばだ諸君。そう遠くない内に再び会うことになるだろう」
その言葉を最後に、二人は粒子となって消えていった。
それとほぼ同時に、西、南、北でも同じように幹部陣は光の粒子となって消えていった。
それはシンにより氷漬けになっていた者も、源内により焼かれた者も、カグヤにより切り裂かれた者も全てだ。
「やられたっすね」
何かを察したクラッドが呟いた。
「ああ。アイツらの目的は教祖の復活ってとこだろ。悪いな、完全に俺のミスだ」
翼は狂信者を誘き寄せるために大会を開き、魔核を餌にした。
誘き寄せる事自体には成功したが、そのせいで狂信者は力をつけてしまった。
翼はタバコに火をつけ「さて」と続けると、
「これから忙しくなりそうだ」
─────
───
──
それから数日後、響とミアはあるビルの一室に来ていた。
中にはソファに腰掛けた翼が待っていた。
「よォ、色々と狂わされたが……ここに来たってことはそういうことでいいんだよな?」
ニヤリと笑った翼はどうやら二人を心待ちにしていたようで、嬉しそうだった。
響とミアは視線を交わし互いに頷いた。
「はい、これからよろしくお願いします」
礼儀正しく頭を下げる響だったが、隣のミアは軽い感じで、
「……よろ」
「ばっ……! さすがに駄目だろ!?」
慌てて止めに入った響だが、言われた本人は特に気にしている様子もない。
「気にすんな。別に気を使う必要はねぇよ。んじゃ、改めて俺のギルドへようこそ二人とも。これから馬車馬の如く働いてもらうから覚悟しとけよ?」