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121話 ブラフ


分かれ道まで戻る事が出来た大道寺はある異変を感じていた。

逆側の道から微かに、しかし確実になにか音が聞こえてくる。風を切るようなそんな音だ。

しかもその音は段々と近付いてきているうえに、人の出す音では決してない。間違いなく飛行能力を持ったモンスターなのだ。


──ちょ、ちょっと冗談じゃないわよ!? こんな状況でモンスターなんて……隠れる所なんてないし、そんな時間もないわ。

「万事休すね……でも、アンジェリカの名にかけて必ず守ってみせるわ!」


もしもアルフレッドがいなければ、もしも万全の状態であったならここで焦る事もなかったはずだ。

ボスは響が抑えている。となれば相手はボスではないのだが、だとしてもAランクのディザスターゲートだ。弱いモンスターなどいるはずがない。

大道寺は戦闘になった時アルフレッドが被弾しないよう、隅のほうに寝かせた。


そして左の道で仁王立ちをし、暗闇を睨みつける。

徐々に近付いてくる気配。本能が逃げろと警告している。ゲオルギアスと同等か、それ以上の存在が物凄いスピードで迫ってくるのを感じた。




「主殿、前方に何者かいるぞ」


高速で低空飛行しているドレイクが視界の先で人影を見つけ少し速度を緩め、翼の指示を仰いだ。


「あれは──オカマか……? 俺の連れだ。ついでだから乗っけてってくれ」

「承知した」


大道寺だと気が付いた翼は、乗せるように頼む。それを快諾したドレイクは、目標に向けさらに速度を落とし始めた。


そして鬼の形相を浮かべ拳を繰り出そうとしている大道寺の目の前でドレイクは、一際大きく羽ばたきブレーキを掛けた。


「オカマの底力見せてやるわ──」

「うるせえな、何言ってんだ。お前一人か?」


言いかけたところで翼が呆れた口調で割って入った。

すると豆鉄砲でもくらったかのように、ぽかんとした表情で大道寺は口を開けた。


「おい、聞いてんのかよ」

「えっ……あ、つ、翼ちゃん!! あたしとひびくんと、もう一人アルフレッドがいるわ! けど……ポーションとか持ってないかしら。今にも死にかけてるのよ! 何とかして頂戴!」


はっと我に返った大道寺は、隅の方で寝かせている大道寺を指さして早口でまくし立てた。

翼はすぐに駆け寄りアルフレッドの容態を見て、


「これは……俺のポーションだけじゃ無理だな」

「そんな……」


手持ちのポーションだけでは安心出来ないほどの酷い状態だった。


「おいオカマ、コイツを連れて外に出るんだ。近くにいるヒーラーに治療させろ。時間は……あまりないぞ」


そしてドレイクの方に向き直り、


「ドレイク、出口まで連れてってやってくれ。その後はボス部屋で待ってるぜ」

「この者は我ら黒竜族にやられたのか……申し訳ない事をした。必ずや間に合わせよう」


ドレイクは雄叫びを上げて体勢を低くし、大道寺に乗れと首で合図した。


「な、何が何だか分からないけど、そんな事言ってる場合じゃないわね! 頼むわよドラゴンちゃん!」

「ど、ドラゴンちゃん……!?」


アルフレッドを抱えると背中に飛び乗り、ドレイクの背をポンポンと叩く。

まさか黒竜族の長である自分がドラゴンちゃんと呼ばれるとは思っていなかったのか、ドレイクは目を丸くして驚いた。


そんな事を気にしてもいない翼は、大道寺へと二つのポーションを投げ、


「とりあえず延命措置だ……すぐ飲ませてやれ」

「恩に着るわ! あと、ひびくんが一人で戦ってるの……相手は強いわ、物凄く。翼ちゃん、あの子を助けてあげて! 貴方しかいないのよ!」

「一人だと? こっちもゆっくりしてる時間はなさそうだな……ドレイク、そっちは頼んだぞ」


──来たのは三人か、さすがに少ねぇ。……ってことはここはブラフ……時間稼ぎの為に用意したダンジョンだな。本丸は恐らく……くそ、どっちにしろ響を助けてからじゃねぇと動けねぇ。一本取られたな。


外の状況を知らない翼からしたら、このダンジョンにはクラッドやアルベルト、S級探索者達が来ると予想していた。

まさかAランクのディザスターゲートが囮に使われるとは予想外な出来事だった。


早急に外へ出る必要があるが、響を見捨てる訳にもいかない。どの道翼がダンジョンに潜った時点で、ある意味では狂信者の作戦は成功しているのだ。


それを理解した翼は舌打ちをして顔を歪めた。


「我もすぐに向かう。主殿、後ほど」

「ああ、その頃には終わらせる」


そして大道寺らを乗せたドレイクは出口へ、翼は響の待つボス部屋へと急いだ。

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