120話 オカマの約束
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この身勝手な異世界に復讐を~異世界転移したら失敗作として捨てられた俺が《災厄の魔王》と呼ばれ、復讐を果たすその日まで~
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「無茶よ。あれと一人で戦うなんて……でも、言っても聞かなそうね。わかったわ。直ぐに翼ちゃんを連れてくるわ。絶対、死ぬんじゃないわよ!」
大道寺はアルフレッドを背負い響の肩を強く掴んだ。
彼の怪力なら崩れた壁を破壊し、分かれ道まで戻る事が出来るはずだ。
「はい! 大道寺さん、アルフレッドさんをよろしくお願いします」
「任されたわ! オカマの名にかけて死なせやしないわよぉ!」
そう言って大道寺は駆け出した。
──さて、人の心配ばっかしてる場合じゃないよな。
既にゲオルギアスは体勢を調え、眼球を焼き尽くした響を睨み付けている。
だが何が起こったのかいまいち理解出来ていないせいか、呻き声を上げて警戒を強めているように見える。
──鬼哭の裂傷メインで持久戦に持ち込むか……? 黎明ノ刻が使えない以上、短期決戦は難しそうだしな。
そんな事を考えていた時、大道寺が瓦礫を破壊する音が響き、ゲオルギアスの視線が大道寺を捉えた。
「まずい!」
アルフレッドを背負い背を見せている状況で襲われれば一溜りもない。
響は双方の間に割って入るように飛び出した。
ゲオルギアスは邪魔者を噛み砕くべく巨大な口腔を開く。
「させ、るかあああぁぁぁッ!!!!」
迫るゲオルギアスにタイミングを合わせ、鬼哭を振り下ろす。
刃は鼻先に触れると、相手の突進力も相まって深々と斬り裂いた。
「飛燕!」
ほぼ同時にゼロ距離での斬撃を放ち、更に深く傷を付ける。
ゲオルギアスが呻き声を上げながら大きく仰け反ると、響は更に追撃するべく首筋に狙いを定める。
ここぞとばかりに飛び込んだその時、相手が切りつけられて仰け反った訳ではない事に気が付いた。
──誘われたのか!?
ゲオルギアスの口には黒いエネルギーが集約している。
つまり、ブレスだ。
「避けられな──」
次の瞬間、視界は黒の波動に埋め尽くされた。
「なに、今の音……? ひびくん、もう少し待ってて頂戴……!」
階段を駆け上がっている最中、後方から轟音が響き確かな揺れを感じた。まるでここだけではなく、ダンジョン全体が揺れているかのような、大きい縦揺れだった。
なんとかボス部屋を脱出した大道寺は一刻も早く翼と合流するべくひたすらに足を動かした。
背に感じるアルフレッドの呼吸はどんどん小さくなっている。
「く……まずいわね。頑張るのよアルフレッド!」
大道寺は額に嫌な汗を垂らし先を急いだ。
─────
───
──
「さすがだな強き者よ。ここまで歯が立たぬとは竜王以来かもしれぬ」
「そいつは光栄だな、でももういいだろ。死にてぇなら一族の恨みを晴らしてからにしろ」
あれからドレイクは全身全霊をかけ翼に挑んだ。
しかしどの攻撃も翼を傷つける事は叶わない。
ただ疲弊していくだけであり、更に翼も反撃はしてないので名誉ある死など以ての外だ。
それに苛立ちを覚えたドレイクに、翼は手を差し伸べそう言った。
「俺と来い。これから俺は狂信者をぶっ潰す。お前にとっちゃあいつらは仇みたいなもんだろ。利害は一致してると思うが?」
「……仇か、そうだな。どの道勝者はお主だ。生殺与奪はそちらにある。来いと言うのならそれに従おう」
半ば諦めたかのようにドレイクは苦笑し頭を垂れた。
それを見た翼は満足気に笑うと、
「決まりだな。ドレイク、お前ここのボスじゃねぇだろ? ボスん所まで──チッ、やっぱり目印付け忘れてたか。まずいな」
言いかけた所で大きな揺れを感じとった。
最後の分かれ道で目印をつけ忘れたのを気のせいだと思っていたが、残念ながらそうではなくしっかり忘れている。
この揺れの正体は言うまでもなく響とゲオルギアスの戦闘の影響だ。
その余波がここまで届いているとなると、相当な威力の攻撃が放たれているということだ。
「ボス……と言うのは恐らくゲオルギアスの事か。主殿、我の背に乗ってくれ」
ドレイクはそう言うと、どんどんサイズを縮め3メートル程の大きさへと変化した。
勝手に翼の事を主殿と呼んでいることから、ドレイクの中では同等と言うよりも主従関係に近い認識なのだろう。
「……なんでもありか。まぁいい、急ぎで頼む」
「承知した!」
地を蹴り勢いをつけ翼を広げるとドレイクはボス部屋に向かい速度を上げた。