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115話 超危険地帯


ディザスターゲートの中は地下の大迷宮のようになっており、先に入った翼が所々に矢印を書いてくれたおかげで三人は迷わずに進めている。


翼の後という事もあり敵の撃ち漏らしなどは今の所なく至って平和である。しかし、いつどこで敵と出会うか分からない以上油断は禁物だ。


「どうやらとんでもない所に来ちゃったみたいねぇ……」


ダンジョンに侵入した三人は入口付近にあるぐちゃぐちゃな死体を見つけた。

響はいまいちそれがよく分からなかったが、大道寺は心当たりがあるようで、引きつった顔で呟いた。


原型を留めていない肉塊の一部拾い上げ、大道寺はまじまじと見つめた。


「それは……角……?」


ねっとりと血にまみれたソレの大きさは手のひら程度であまり大きくはない。

かろうじて角のようにも見えるが、どうもハッキリとしない。


だがアルフレッドもそれを見て何か気がついたようで、同じく顔を引き攣らせ、


「そ、それってまさか──」

「ええ、間違いないわ。ドラゴンの角よ。大きさからしてまだ子供みたいだけど……ここは竜の巣。Aランクの中でもほとんどSランクに近いダンジョンよ……!」

「竜の巣……」


モンスターにも様々な種類があるが、竜族に関しては別格の強さを誇る。

基本的にAランク以上に現れ、高位の竜族ともなるとSランクだ。

そんな超危険な奴らのダンジョンがディザスターゲートとなっているのだ。実質的な危険度はSランクと言っても過言ではないだろう。


前回、響が倒した手負いのAランクボスである腐毒龍ディリティリオも竜族ではあるが、あれはまた少し違うカテゴリーに入る。


それはそうとして、翼はそんなダンジョンにたった一人で進んでいるのだ。わかっていたことだが、並の神経でもなければ、並の強さではない。

世界一の称号は伊達ではなかった。


「それでも、俺達が行かないと……!」

「ヘイ! そうだな、世界一に恩を売っておいて損はなさそうだしな!」

「うふ、そうこなくっちゃね。翼ちゃんの所に行きましょうか」


──────


────


──


「チッ……トカゲ共がうじゃうじゃと……一体どんだけいやがるんだ」


死体の山を築き上げ、翼はその上でだるそうな顔で舌打ちをした。

屠った数は10や20所ではない。群れの一つでも壊滅させたのかと言う勢いだ。

そんな翼は負傷らしい負傷もなく、あえて上げるのであれば袖が焦げているくらいか。


双剣に付着した血を払い、左右の分かれ道を睨む。

この迷宮じみたダンジョンで随分と時間を無駄にしている。

今回のように左右だけならまだマシだが、ここまで来る間に最大で五方向の分かれ道すらあった。


恐らく不正解であろう道の先には、中ボスらしいモンスターがいて手こずる事はなかったが行ったりきたりと時間だけが浪費されていく。

あとから来るかもしれない探索者の為に道しるべを書いたが、今の所来る気配はない。


──なんとなく右な気もするが、これまでそれでハズレばっかだったしな……

「たまには直感に逆らってみるか」


同じ轍を踏まないため、自分の運のなさを信用し左の道へと進んだ。

先程までと変わらない飾り気のない土壁に囲まれた道をしばらく歩いていくと、


「お、こっちが正解だったか! ラッキー」


目の前にある巨大な扉を見て思わず笑みがこぼれた。ここに来るまで初めての一発正解だ。と、言っても二分の一なので特に賞賛するほどでもないのだが。


扉には壁画なのか、黒いドラゴン達と小柄な人間……いや、翼が生えていることから人ではなさそうだ。とにかくその二つの存在は対立しているように見える。


「なんだこれ」


このダンジョンに無関係なはずなどなく、ドラゴン達は恐らくここのモンスターを指すはずだ。

それならばこの人型の存在は何を指すのだろうか。

よく見ると翼だけでなく角もあり、悪魔っぽくもみえる。


──これは俺の専門じゃねぇな。


翼は数回スマホで写真をとり保存した。後々専門家にでも送るつもりなのだろう。

そしてふと、ある事に気がついた。


「そういや俺さっき矢印付けたっけ……? まぁさっさと終わらせれば問題ないか」


実際付け忘れているのだが、戻るよりもボスを早く倒せばいいと言う結論をだした。

Aランクディザスターゲートのボスを単独で挑むと言うのに、全く臆する様子もなく扉に手をかけた。


ゴゴゴと地面の小石をすり潰しながら開かれた先には、やけに静かな巨大な空間が広がっていた。

壁に点在する松明により照らされた室内はなんとも重たい空気が流れている。


そして中央には数本の鎖で繋がれた一体の黒いドラゴニュート。

手足と胴体、そして尻尾に至るまで拘束され動かせるのはせいぜい首くらいだろう。

扉が開く音で顔を上げたドラゴニュートは、今にも死にそうな程弱った顔で口を開いた(・・・・・)


「強き者よ、この鎖を解いてはくれないか」

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