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107話 狂化


クラッドとミア、更に会場に居合わせた数人の探索者による的確な誘導により、一般人は着々と外へ避難している。

後ろのディザスターゲートも気になるが、翼が入っていったのならまず安心だ。


それよりもまずは、エレナをどうにかしなければならない。


「あ、あの! 助けてくれてありがとうございます。エレナさん……止めるんですよね? 私も手伝い──」

「あんらぁ!? 随分可愛い子がいるじゃないのぉ〜! あーたは、あたしと一緒にこっち♡」

「うわっ! え、ちょっとなにこのオカマ! 離してくださいよ!」

「うふ、だーめ♡」


一緒に戦う、と続けるつもりだったフィオナだが突如現れた大道寺に拉致されそれは叶わなかった。

大道寺はフィオナを抱き抱えこちらを振り向くと、ブサイクなウィンクをした。


「大道寺さん……」


エレナと響の戦いにフィオナはついてこれない。そう判断しての事だ。響が直接それを言えないのを見抜いた大道寺が、気が利かせてくれたのだ。


「さて、どうしたもんかな」


徐々に人間離れした容姿に変化していくエレナ。

禍々しいオーラを纏い、目は血走っている。

翼の本気の一撃をくらっても、大してダメージがあるようにも見えないタフさ。それに加え、身をもって味わった異常なまでの腕力。

とりあえず気絶させたいとこではあるが、この手の相手に生かさず殺さずとは中々難しいのだ。


「ひひひひひッ!」


そんな事を考えている内に奇声を上げ飛びかかってきた。どす黒いオーラと、血走った目。ホラー映画にでも出てきそうな勢いだ。


技術など全くない腕力に頼った一撃。

避けるのは容易い。が、当たれば致命傷だ。

半歩身を引き回避したが、


「ぐッ! 馬鹿力め!」


刃は叩き付けられると、地面を砕きその余波が響を襲う。即座にバックステップで距離を取ったが、すぐ目の前には狂気の笑み。


「死ね死ね死ね死ねェぇ! あひゃひゃひゃ」


凛としたエレナの面影はなく、声を聞くだけで背筋が凍りそうだ。


「チッ……飛燕ッ!!」


エレナの剣戟を迎え撃つように、鬼哭を振るい同時に斬撃を放つ。

響が鬼哭で傷をつければ特殊効果である裂傷が付与されてしまう。しかし、それを気にしている余裕もない。


傷の治癒速度の延滞とあるが、治癒が不可能ではない。最悪、ヒーラーとポーションでどうにかなるはずだ。


斬撃は弾かれてしまったが、同時にエレナの剣も弾いた。

ほんの僅かな隙を見逃さず、そのまま鬼哭を振り抜いた。


──嘘だろ!?


エレナは脅威的な反射神経と身体能力で上体を大きく後ろに逸らし、刃は肉を裂くことなく空を切った。

直後、エレナの剣を握っていない左手がこちらに向けられているのに気が付いた。


「ひひ、暴風ノ大槍(ゲイルジャベリン)


エレナの左手から風の槍が放たれる。

咄嗟に鬼哭の腹で受けたものの、その威力は凄まじく大きく後方へと飛ばされる。

まるで鬼哭をドリルで削っているかのような嫌な音が響き、火花が散らす。


あまりの勢いに受身を取ることが出来ず、観客席に展開されていた魔法障壁に激突。肺の中の空気が放出され、上手く呼吸が出来ない。


「がはッ……」

──あれ、あんまり痛くない……腕輪のおかげか……?


幸い、腕輪がダメージの一部を肩代わりしてくれたおかげで大したダメージはないものの、今の一撃で砕け散ってしまった。


エレナは三度剣を振るうと、飛燕ににた風の斬撃が響目掛けて放たれる。

咄嗟に迅雷を放ち相殺し、呼吸と体勢を整える。


──さすがに強いな。まともにやってたらちょっと厳しいか……


【狂化 エレナ・スカーレットLv71】

HP : 9420

MP: 1190


力408 +100

防御力415+100

知能410

速度539

精神力365-300


弱点 頭部 心臓部


特性 狂化により力と防御力が上昇、精神力が大幅に減少し自我を失っている。術者の思想が強く反映され、破壊衝動に駆られている。黒風白雨により、二種類の形態に変化する。


黒嵐形態 知能と速度が上昇し、風魔法の威力が増大する。

白嵐形態 力と防御力が上昇し、水魔法の威力が増大する。


スキル 黒風白雨Lv5 風魔法Lv7 水魔法Lv6 剣術Lv7 疾風Lv5


目目連を使いステータスを覗いてみると、やはりエレナは何者かの攻撃を受けていたのだ。

豹変した理由がわかったのは一歩前進だが、狂化により上昇したエレナのステータスはとんでもないレベルになっている。


精神力がかなり低いとはいえ、ゴリ押しされてしまう恐れがある。まともに一撃でもくらってしまえば、そこで一気に勝負が決まってしまう程に。


嫌な汗が頬を伝う。

翼に任せられたとはいえ、本当に自分に止められるのか。


「それでも……やるしか、ないよな」

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