第6話
12月4日、午前3時、A国北部上空
ヘリの補給と武装のマウント、それにジェームズを降ろした後にルーカス達は魔王軍が占領している北部へと向かった。
「あっぱあああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「「「うるっせぇ!!」」」
道中突如として発狂しだしたオリバーに他3人が口を揃えて叫ぶ。
彼は今全身を拘束されルーカスの手によって魔法で頭を治療されている。
少しでもこの精神異常をどうにかせんが為だが……
「おいルーカス、このジョン様がやってやろうか?」
「必要ないさ……よし、ある程度頭がイカれてるのはもう仕方ないが治るぞ。コナー、そっちはどうだ?」
「剥製にして博物館に飾られてそうな絶滅したはずの魔法生物がわんさといやがるぜ。ケンタウロス、ミノタウロス、キマイラ……おお!セイレーンまでいるぞ!綺麗なもんだ!」
双眼鏡片手に地上を索敵するコナーは大量の魔物達にテンションが上がりっぱなしだ。
地上に溢れる魔物達もモーターブレードのけたたましい鳴き声に空を見上げている。
「俺はてっきりドラゴンでもいるかと思ったが……居ないもんだな」
「ルーカスどうする?撃つ?撃っちまう?」
青い瞳を輝かせながらルーカスに指示を求めた。
「ものは試しだ。地上の魔物に何発かぶちこめコナー。ジョンはホバリングしなくていい。そのまま先に進め」
「あいよ」
ヘリの両側面に取り付けられた機関銃、BK86を操作するコナー。
「食らえ!魔物共。一分間に600発の徹甲弾を発射可能!30mmの鉄板を貫通できる重機関銃だ!!」
揺れるヘリの上から照準を合わせるコナー。
そして引き金を引いた。
炸裂音と共に待ってましたと放たれた銃弾は牛頭程度紙切れのように貫くはずだった。
「おっと?」
「効果なし!コナーもう撃つな」
放たれた銃弾は一定の距離まで到達した後、本来の軌道とは全く違う方向へと飛んでいった。
続く弾も同様だ。
これにはコナーも眉をひそめた。
「結界だな。誰が張ってるのか知らんが」
「報告の通りなら砲弾銃弾ロケット弾もガードできる結界ならそれなりに魔力というか力がある魔物しか無理だろ。どっかに親玉みたいな奴がいるはずだ。まずそいつを探そう」
「おうよ……っておいおいおい!!ヤバいのがいるぞ!?」
「あん?」
落胆しつつ引き金から手を離したコナーが顔を真っ青にしてルーカスの肩を叩く。
怯えるルーカスの視線の先に居たもの。
それは……
「ドラゴン!?嘘だろおい!ジョン!!スピードあげろ!!」
赤い鱗の甲殻、ヘリなどとは比較にならない程の巨大な翼、そしてワニにも似た牙の並んだ口……
おとぎ話の間で、世界中の伝説で語られるそのままの姿のドラゴンが、ルーカスの乗るヘリ目掛けて飛んできている。
「ドラゴンなんていないんじゃなかったのかよ!!」
「知るか早くしろジョン!!追い付かれるぞ!!」
前傾姿勢になったヘリが唸りをあげながらスピードを上げる。
だが圧倒的にドラゴンの方が速度が上だ。
このままいけばあの巨大な口に丸飲みにされる。
そんな時だった。
「ケツの穴みたいなツラだな!俺のナニでもしゃぶっとけ!」
凄まじく汚い声と共に起き上がったオリバー。
ブツブツと呪文を唱えたあと、手をドラゴンへと向ける。
「あばよケツアナ野郎!」
突如手のひらから巨大な足枷が出現、そのままドラゴンの翼に取り付いた。
「ギャオオオオオン!?」
「HAHAHAHAHA!!」
突然重くなった翼を必死にはためかせるがそのまま飛び続けること叶わず。
哀れなドラゴンは地上へと落下していった。