第5話
翌日1時12分、A国中南部、オリバー製鉄所
「ギャアアああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
到着したルーカス達はいきなり銃弾の嵐に見舞われた。
電気の消えた二階建ての吹き抜けのある鉄筋コンクリートで出来た工場、そこに鳴り響くのは銃撃の乾いた音に穴あきチーズのようになっていく壁や柱の悲鳴。
とてもじゃないが茶でも飲みながらゆっくりと話をしよう、そんなことを考えられるような雰囲気ではない。
「だから言ったじゃねぇか!!迎えに行くのかって!!」
「イカれ方がぶっ飛びすぎてる!!月の果てまで頭が吹っ飛んでるぞあの馬鹿!!」
「そうは言っても必要だろうが!あの馬鹿の力は!」
ジョンとコナーが銃声に顔をしかめながら思わずルーカスを責めた。
まあ当然だろう。
「か、帰ろう!!こんなことをしてくる奴なんて仲間にはなれんぞ!!」
何とか入り口付近の分厚いコンクリートの壁に隠れながら怯えに怯えたジェームズが半べそをかきながら耳を押さえて叫ぶ。
どうにか泊めてあるヘリまで匍匐前進をしようと試みるが……
「ああッ!!」
這い出ようとした瞬間、チュイーンという小気味よい音と共に目の前の床が深く抉れた。
「き、キャル50……」
「物に使いやがれ!!このクソッタレオリバー!!」
ジョンとコナーが青ざめながら発砲音がする方向に叫ぶ。
「ジェームズ大佐!戻ってください撃たれます!」
「中将だ!!ああ糞!!」
やむなく断念して壁まで戻るジェームズ。
「ええい仕方ない!ジョン!コナー!二人は右から行け!俺が左だ!2階から撃ってきてる!」
左右に上へあがるための階段がある。
二手に分かれていけばどちらかはたどり着けるはずだ。
「援護する!突っ込めコナー!!」
「ふざけんな!!一緒に行くぞ!!」
1.2.3……
意を決した3人が一斉に階段目掛けて猛然と突き進む。
頼りになるのは己の肉体と腰にぶら下げた一丁の拳銃のみ。
「だぁっ!!くそ!!」
階段の錆びた鉄の手すりを銃弾が掠める。
コンマ一秒前までそこに頭があった場所に銃弾が飛んでくる。
戦場さながらだった。
「居たぞ!!居たぞおおおおおおおおおおお!!うわあああああああああ!!」
ルーカス達とは違う、低くかすれた声が工場に銃声と共に木霊する。
ルーカスの眼前に見えてきたのは、真っ白い髭と同じく真っ白な髪をたっぷり蓄えた……そうまるでサンタクロースのような風貌の男だった。
サンタクロースと違う点は重機関銃をぶっぱなしている所だろう。
人にプレゼントの詰まった箱ではなく鉛と火薬の詰まった弾を恵んでいる。
「いい加減!お、ち、つ、き、やがれぇッ!!」
ルーカスが手にした拳銃の銃口から3度の閃光。
狙うは男……ではなく機関銃のほうだ。
「ぎがぁっ!?」
一発は外れ残りの銃弾は銃身と弾帯にそれぞれ命中。
けたたましく鳴いていた機関銃がようやく黙り込んだ。
「し、死ぬかとおもったぜ……」
「ルーカス、無事だな?」
「畜生め!刑務所で楽しくケツでも掘られてたほうがいくらかマシだ!!」
少し遅れてきたジョンとコナー。
悪態をつきつつもすっかり沈黙した男の方へと拳銃構えて近づいていく。
「よう……『足枷オリバー』、元気にしてたか?ルーカスだ」
「ルー……?なにもかももってっちまって……社長!!居たぞな!いな!いあ!!ラニーニャなば」
オリバー・ミラー、Dチームメンバー最後の一人。
彼に話しかける。
たが穴だられになった壁から差し込む月明かりに写し出された彼の目は焦点が全く定まっていない。
おまけに聞き取れない訳の分からない言葉を連呼し始めた。
「……ルーカス、本当に連れてくのか?」
「やめとこうぜ、こりゃヤバすぎる」
「行く途中でどうにかするさ」
ため息をつきながら、3人で抱えてヘリへと運んだ。