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神楽坂デイドリーム  作者: 髙田龍
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デイドリーム


 あの不思議な出来事を経験してからどれだけの月日が経ったろう。


山ほどの荷物と一緒に帰って来た息子も今は三十代後半。


安定した企業に入り今は中間管理職として頑張っている。

そして私は、七十の峠に差しかかっている。


あの不思議な体験から二十年近くの時間が過ぎた事になる。


今日まで片時も忘れた事はないという訳では無いのだが、脳裏にはあの夜の記憶がはっきりと残っている。


あの日、仕事の都合で誰かを訪問したが、その相手が思い出せない。

それほど月日は経っているのだ。


私はあの夜、若き日の父親の姿に出会い、説明しようのない感動を経験したが、あれは夢だったのかと言われれば、違うと断言出来る。

と言って現実だとは言いきることが出来ない。

それほど不思議な時間だった

『白日夢』という言葉があるが『白昼夢』ともいい英語ではデイドリームという。

日中、目覚めている状態で、現実で起きているかのような空想や想像を夢のように映像として見る非現実的な体験、または、そのような非現実的な幻想にふけっている状態を表す言葉だ。


その通りと言えばそうなのだが、夢だったとは思えない。

屁理屈を言えばあの日はすでに夜だった、デイドリームではない。


まぁ人生に一つくらい説明出来ない想い出があってもいいだろう。

そう自分を納得させるしかないのだが、どうしても引っかかることがあった。


あの説明のつかない時間の中で、はっきりと見えた『熱海湯』の看板、あれだけが気になっている。

『熱海湯』という屋号の銭湯が日本中にどれだけあるのかは知らないが、私の人生で『熱海湯』と言えば神楽坂に在って私が子供の頃通っていたあの銭湯しかないのだが、あの日『熱海湯』の近くに居たわけではない。


パソコンを使って『熱海湯』を検索した。


神楽坂は私が住んでいた頃とは違っている。

全国的に廃業する銭湯も多い。

私は熱海湯も発展的に変化を続ける神楽坂で、とっくに失くなっていると思っていた。


ところが、『熱海湯』は在った。

驚きだった。

それを合図に私の頭の中には忘れていた子供の頃の出来事が次々に溢れ出て来た。


『熱海湯』が今も営業している。


        




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