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思いこみって、めんどくさい
あれ?
これってヤバい?
振り向くと、焦点ブレブレの男が一人血の滴る包丁を握って、ぶつぶつと呟いている。
「俺がこんなに愛してるのに、あんな親父の愛人になりやがって!」
「おまえは俺だけのものだ!」
「あんな奴に渡すくらいなら…ううう」
「どうして裏切った!」
意味不明なんですけど…
っていうか、あなた誰???
え、えっと…刺されると痛さよりも熱いのね。
あ、でも…あとからドクドクした痛み来た!
ヤバい、痛いかも…全身バクバク言ってる!
出血すると、視界がぼやけるし考えるのがゆっくりになるのね。
あ、これがいわゆる走馬灯?なるほど!
などと、得意の問題の先送りをしたところで、
急に何にも考えられなくなり、周りの悲鳴すら、すごく遠くに聞こえてきて、強制的に意識が暗転した。