首都へ・1
「……というわけで、首都に行こう」
ギルドに併設されている食堂で仕入れてきた情報をミッツェルカは披露する。ラティーナが目を瞬かせてなるほどね、と頷いた。
「確かにこの国の運営方針から考えると首都が一番安全かもね。ちなみに首都までの道のりは」
「歩きだと十日ほど。辻馬車利用だと宿を取りながらか野宿かで違うけど、野宿での辻馬車利用で七日だってさ」
ラティーナの質問にミッツェルカは答える。冒険者登録をしている五人は徒歩でも構わないが、今回はユノラとヨンナとマリを連れての旅だ。追手は来ないだろうがユノラとマリは兎も角、小さなヨンナを歩かせるのは酷だ。辻馬車利用で出来れば宿を取りながら連れて行ってくれる方を選びたいところ。その分の料金は高くなるだろうが。
「取り敢えず、明日の朝ユノラさんとマリさんに話してみようか」
ミハイルがそう言うのは、夕飯を食べ終えたヨンナが眠そうだったので、ユノラとマリがヨンナを寝かしつけに行ったからだ。いつ帰るか分からないから、そのまま寝てしまっていい、と促すミハイルに頷いて既に三人は寝ている。
それから暫くミッツェルカとクランが帰って来なかったので今は深夜とは言わないが、それなりの時間が経っていた。
なぜ遅くなったのかと言えば、クランがミッツェルカとのデートを堪能したい、と月夜の散歩と称して遠回りして帰ることを提案したからである。必要な情報を手にしてある程度食堂で過ごしたが、直ぐに帰ればユノラたちが寝るより前に帰って来られたかもしれなかったのだが。
ミッツェルカとしては、クランの恋人になる気はこれっぽっちもないが、クランが自分を気に入って色々と便宜を図ってくれていることに感謝しているので、散歩くらい構わないだろう、と判断した。
「そうだね。お兄ちゃんの言う通り。ただ、これは今決めておきたい。首都に行くならやっぱりこの借りた家をどうするか、ということを」
ミッツェルカの議題に皆が悩む。近隣の街や領地なら借りていても良かったが、首都に向かうのなら家を手放しておく方がいい気もする。というのも、元々、この街で冒険者登録をしてある程度ランクを上げたら、首都に向かおうとミッツェルカとラティーナが考えていたから。
予定よりも早いけれど首都に行くのならランク上げは別にこの街にこだわってやら必要も無い。首都へ旅をしながら立ち寄る街々のギルドで依頼をこなして行けば、ランク上げは出来るのだから。
「家賃は既に支払っているわけだし、そのまま返してもいいんじゃないかな。元々首都に向かうつもりだったわけだし。この街でランクをある程度上げて向かうか、旅をしながらランクを上げるかの差だ」
ミハイルがあっさりと夕食前の提案をひっくり返す。とはいえ、首都に向かうつもりだったのだからその方がいいだろう、と判断することは間違いではない。
あとは旅の資金の問題だ。ある程度稼いでから首都に向かうのか、首都に向かいながら資金を稼ぐのか。それも明日ユノラたちと話してみて、結論を出そうということになった。
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