ギルドマスターとの話・3
「詮索をしても良いことは無いな。話を本筋に戻そう。ユノラ、君はどうするんだ」
ギルドマスターはユノラのことを気にしてその辺のことを知りたかったらしい。ミッツェルカとラティーナはユノラがどこまで正直に話すのか、出方を見た。
「この街を出ます。エンゾはお二人に徹底的に叩き潰されましたけどあの男は叩かれて凹むような男じゃないことをご存知でしょう」
「そうだな」
「ですので、こちらのお二人に護衛をお願いしてこの街を出るつもりです」
「出てどうする」
「……さぁ。その後のことはその時に考えます。でも隣街とかだとエンゾに気付かれそうですから隣街ということは無いですけど」
「そうか。分かった」
ユノラが話したことに嘘は無い。けれど安全だと思えるような場所までミッツェルカたちと共に行動することも伝えなかった。
ミッツェルカもラティーナもユノラのこの賢さがあるからあんな男の元でも何とかやって来られたのだろう、と理解する。
ギルドマスターはユノラの味方のようだが、エンゾ……というかその背後に逆らえるだけの力が無いから、どこまで味方でいるかも分からない。穿った見方をすれば背後の存在に阿るとも言い切れない。となると信用して全てを打ち明けられない。そんな判断が出来るから、ユノラは上手く立ち回ってきたのだろうとミッツェルカもラティーナも納得した。
ギルドマスターはユノラの返事を全て納得したわけではないだろうがアレコレと口出せることでもないと判断したのか、それ以上は尋ねなかった。
「元気でな」
「マスターも」
ギルドマスターはそれ以上は話すことは無い、とでも言うようにユノラに別れの挨拶をする。ユノラも頷いてギルドを出た。
「ルカさん」
ギルドを出て直ぐにユノラは気になることを尋ねることにした。
「ん」
「エンゾは街の有力者と繋がっていたんですか」
「そうじゃなければあんな男がのさばっていられないだろ。ギルドマスターみたいな男はエンゾみたいな男が嫌いだ。苦々しく思うだけじゃなくてせめて部下共をのさばらせないように対応する。それをしていないなら街の有力者かこの街を含めたここら辺一帯を治める領地の領主が味方だと考える方が自然だ。さっき会うまではギルドマスターとエンゾが裏で繋がっていると勘繰っていたんだけどね」
ユノラはなるほど、と頷く。確かにギルドマスターみたいな男は薄汚いエンゾみたいな男は嫌いだ。だから関わらないと決めていたのかと思っていたけれど、そうじゃないのなら……一介のギルドマスターでは権力者に逆らうことなんて出来ない。
でもそうか。
だからエンゾのことを訴えても証拠が無い、と訴えが無かったことにされて泣き寝入りする人たちが多いのか、とユノラは理解した。
エンゾの屋敷の中で外からの怨嗟の声をたくさん聞いた。自分もここに居る以上はその対象、ということにどれだけ胸を痛めたか。
訴えてやる、と意気込む声にエンゾがニヤニヤ笑っていたのは。あれはつまり、守ってくれる存在が居るからこその余裕だったのか。
「じゃあ私がエンゾを訴えたとしても……」
「握り潰されていただろうね。それにしてもギルドマスターと話してみてヤツの後ろ盾の存在を確信した以上、この街を束ねる有力者……じゃなくて。領主がどこの街まで治めているのか、だな。いくら違う街でも領主が同じということは避けておきたい」
ミッツェルカの推測にラティーナもそうね、と頷く。とはいえこの街から出ることは最優先でもあるので……ミッツェルカはクランに情報を集めてもらうか、と判断した。
「場合によっては折角借りたけど家も出て行く方がいいかもね」
ミッツェルカがラティーナを見る。皆で話し合いをしましょう、と決断を先送りにして帰ることにした。
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