怪しい護衛任務・5
強引に連れて来た二人は……いや、侍女のマリは一応警戒を解いてない。それでいい、とラティーナもミッツェルカも考えているので気にしない。大通りから真っ直ぐ……とは言わずに所々で気配を探りながら借りている家に到着した時は、日が暮れていた。
ドアを開けて中に入った途端にギュムッと抱きしめられる感覚のラティーナとミッツェルカ。
「お帰りぃ! 遅かったからお兄ちゃんは心配だったよぉおおお」
もちろんミハイルだ。
「心配かけてごめん。取り敢えず客」
ミッツェルカは端的に侍女のマリとお嬢様の存在を教えると驚いた顔をしたミハイルは慌ててマリにはお茶を、お嬢様にはジュースを出した。もちろん警戒している二人は手を出さないが、喉は渇いているだろう、と、ミッツェルカが毒見をしてみせた。
「ほら、毒見をしたから取り敢えず飲みなよ。話をするにしても喉も渇いたままじゃ話なんて出来ないだろ。お兄ちゃん、後の二人は」
両方の毒見をしたミッツェルカが二人に飲み物を勧めつつ、ニルクとクランが居ないことを尋ねる。
「ニックは疲れたらしくて寝てる。クランはまだ帰ってない」
そう、と頷き二人が一息ついたのを見計らって全員が揃ってから話を聞くべきか迷う。お嬢様は疲れているみたいだからさっさと休ませてあげたいとも思う。
「お嬢様、寝てもいいよ」
「いいえ、眠くないので大丈夫です」
幼いのに気を張っている健気さに、全員なんて揃わなくても話をしよう、ということになった。
お嬢様にはマリの隣で寝ていることを勧めた。マリと離れないと分かって、今度は安心したように頷いた。
「さて、お嬢様が寝たところで話し合いをしよう」
お嬢様の様子を見守っていたミッツェルカが切り出すとマリは強い決意を浮かべた表情で頷いた。
「あの、実は」
マリが切り出すがラティーナはそれを手で止める。
「事情は別にいいよ。そこを聞きたいわけじゃなくて、お嬢様の確実な味方と逃げ場を教えて欲しいってこと」
「ですが、事情を知らないと誰が敵か分からないでしょう」
「敵はどうでもいいよ。基本的に排除するって思っているだけだから。それより確実な逃げ場に心当たりはあるのか。確実な味方に心当たりがあるのか。それを教えてくれ」
マリが敵の情報を話そうとしても、今度はミッツェルカが止める。嘘のようだったが確かにあの人数をあっさりと追い払ったミッツェルカの手腕を見てしまえば、マリは引き下がるしかない。
それならば知りたいと言っていることを話すべきだろうと判断する。
目を閉じて暫し考える。
お嬢様を完全に匿ってくれるような味方を。
「……思い、当たりません」
少ししてから愕然とした表情でマリは告げた。
「うん? 一人も味方居ないの?」
ミッツェルカの確認にマリは心許なさそうに頷く。
「お嬢様と私はこの街以外を知りません。ですから街の外のことは分かりません。そしてこの街の中でお嬢様の家に、世話になっている人は居てもお嬢様自身の味方が思い当たらないのです」
キュッと唇を噛んで己の無力さを痛感するマリにミッツェルカもラティーナもあっさりと納得する。
「取り敢えずさ、なんで教会なら守ってもらえる、と考えたのか疑問なんだけど」
ミッツェルカの問いにはマリがなんて言おうか迷う。
「教会は……望まない結婚や粗暴な身内から身を守る存在です、から」
つまり、狙われているのはお嬢様である以上、成人どころか完全な子どものお嬢様に望まない結婚を強いる者や身内に暴力を振るう者が居る、と言っているのと同じだった。
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