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情報交換・5

「じゃあメゾフォンテ共和国に向かうのか?」


ニルクに問われてミッツェはうーん、と唸る。


「メゾフォンテ共和国ならさ、ライネルヴァと国交は有っても友好国では無いからさ、罪人の引き渡しもして貰えない代わりに自分達のような逃亡者の引き渡しも無いからねぇ。個人的には行きたいけど。簡単なルートはライネルヴァ王国を通って行くのが簡単。でもニルクを死なせるわけにはいかないからね。遠回りだけど、トルケッタ公国を北へ向かおうか」


「えっ? メゾフォンテ共和国へ行くなら南下じゃないの?」


ラティの疑問にミッツェは首を振る。


「見つけて下さい、って言ってるような行動をする気はないよ。メゾフォンテ共和国へ行くのは、南下してトルケッタとライネルヴァの国境を西へ向かうのがライネルヴァ王国を通らない場合に1番手っ取り早い。でもそのルートは恐らく国境で潰される。王妃が復活したんでしょ。それよりもトルケッタを北上してトルケッタとサヴァーン王国の国境から迂回してメゾフォンテを目指す方がいい。ラティ、遠回りだけど覚悟は有る?」


「ミッツェとミハイルが居るなら、大丈夫」


「分かった。お兄ちゃんは?」


「妹2人を守るのは、お兄ちゃんの役目だ!」


「うん。お願い、お兄ちゃん。で、クランとニルクはどうする?」


「ラティと離れたくない」

「お嬢様と一緒に居ると楽しそうですからね」


「そうか。分かった。では、急ごう」


 宿は先払いだ。だから急な出立も揉める事が無い。荷物をサッと整えると、折角の宿だったが5人は店主に一声かけて旅立つ。この声がけも、実はミハイルの支援ギフトが役に立った。何しろ爽やかに笑みを浮かべて話術が巧みなのだ。それもこれも妹2人の為、という支援ギフトの最骨頂(人の為に己の能力を役立てるのが支援ギフトの本来の力)なので本人も無意識のうちにギフトを駆使していたからだった。


 そんなわけでスムーズに宿を出た5人は、ミッツェがもう一度クランに情報を収集するように伝えて北上を始めた。どうせ、4人の足よりもクランの方が早いから直ぐに追いつくはずである。何の情報も無ければそれで良い、と伝えて先ずはミッツェ達は食糧を買い込む事にした。


「そういえば、あのクランとは何者だ? 普通の国民では無いだろう」


「ああ、私を殺せ、と命じていた父親に頼まれた暗殺者達の1人だな」


ニルクの疑問にミッツェはあっさりと答える。


「伯爵が? そなたを殺せ、と?」


ニルクがポカンと口を開ける。珍しい顔を見せているが、ミッツェは何も指摘しない。基本的にラティとミハイル以外は、どうでもいいのだから。クランもニルクも同行させているのは、2人が役立つから、でしかない。そんなわけでニルクのその表情が戻ったのは、ミハイルの肘を喰らったからだった。


「あー、意識戻ったかい?」


ミハイルが問えば、ニルクは「あ、ああ」 と頷いてからチラリとミハイルを見た。


「ああ、本当だよ。ミッツェの特殊ギフトが気に入らなかったからね、あの男は。だからこそ、ミッツェを“男”として世間には公表し、名前も昔居た一族のロクデナシの男の名前を付けられて、そして病弱にさせられた」


「病弱じゃなかったのか」


「ミッツェは病弱というより、虐待されてたから痩せっぽっちなんだ。殆ど放置されてまともに食事も取れない。そんなミッツェに、あの男はさらに生きている価値も無い、と暗殺者を送り込むのだから、ミッツェの特殊ギフトが無かったら生きていなかった。生きてる方が不思議だったよ」


ニルクは、この兄妹の父親の顔を思い浮かべた。伯爵位なので会ったことは数回。それでも、子どもを虐待するような非道な男には見えなかった。つまり、まぁ、ニルクの目が節穴だったという事か、とニルクは若干凹んだ。

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