第九十四話 誕生! それぞれの仲間魔物!
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「やったぁ! 勝ちぃ!」
「だーチクショウ! 惜しかったぁ!」
夜はまだこれからだが、すでに何度目か繰り返してきた勝者と敗者が決定づけられる瞬間がやってきた。ゲームには勝利と敗北がある以上、美酒か苦汁、どちらかを味わねばならない。
ちなみに今回最後まで競り合ったのは桃子と秋彦だ。あと一歩のところで勝利を逃したのは秋彦だった。
「ぐぐぐ……休憩、休憩だ!」
「はっはっはー、はいよー」
「惜しかったねー秋彦」
「優勝争いに参加できなかったけど、比較的早めに負けちゃうと気楽でいいわね」
「……でも、ビリは悔しい。次は勝つ」
悔しそうに休憩を宣言する秋彦に、勝利に余韻に浸る桃子が調子よく答える。
そして残りのメンバーも後に続いて菓子とジュースを広げだす。
「いやー、しかし楽しいなぁ」
「本当にね。なんか探索者始めてから結構充実してるなぁ毎日」
「それは私達もよ。こんなに積極的にあちこち動いたりはしていなかったしね」
「あたしもアイドル業休止しての売名が、ここまでうまくいくとは笑いが止まらないよ」
「……もともとジュディ達二人に付き合う形だったけど、付き合っておいてよかった」
その後、しばらくの間雑談タイムになった。楽しい日に流れる穏やかな時間、とても緩やかで暖かな時間といえるだろう。
だが、優太が一つの話題を振ったことで、話の流れがまた変わる。
「そういえばさ、かれこれ二週間近くたつけど、その後みんなの卵ってどうなった?」
「あー、魔物の?」
「俺はいつも持ち歩いているぜ。どうせバッグの中だ。大した荷物じゃねーしな」
そういって秋彦はマジックバッグから自分の魔物の卵を取り出した。
すると、皆も常に持ち歩いていたのか、それぞれのマジックバッグから卵を取り出していた。
ダチョウの卵並みの大きさである魔物の卵は、やはりというかでかい。この大きさなら何が出てきてもおかしくはないだろう。
そしてその卵は淡い光を点滅させながら時々揺れている。いつ孵ってもおかしくなさそうだ。
「おっほー、皆もそんな感じか」
「正直楽しみよ、何が生まれて来るのか。私のパートナーは何になるのか。本当に楽しみ!」
ジュディは卵に頬擦りしている。楽しみな気持ちはわかるが割ってしまわないか心配になる。
「でも実際ただ卵見てるだけでも、まるでこっちの挙動に反応しているかのように卵の点滅速度変わったり、声掛けに反応して卵が動いたような気がしない?」
「……する」
「なんだ、みんなして割と俺みたいなことしてんだな」
一瞬間をおいて全員で笑い合う。
何もしていないときや、ちょっと暇になった時に卵を見たり、卵に話しかけたりするのはやはりみんなやるらしい。
「ほら、見てみろよ。これが俺の、パパの戦友、お友達だぜ~」
秋彦は卵を抱きかかえて、声をかける。
「元気に生まれてきてね、強いとか弱いとかはいいから、僕はそれだけでいいから」
優太は卵をポンポンと触る。
「私はお父様やお母様に自慢できるような子がいいかなって。まあ何であっても自慢するけどね!」
ジュディは卵に頬擦りした。
「あたしはやっぱりかわいい子がいいな~」
桃子は卵をつんつんと突っついた。
「……いい子いい子」
茜は卵をやさしくなでた。
すると、突然卵の発光と卵の揺れが激しくなりだした。
「え、うわ、なん、何なんだ?!」
「え、これって……まさか!?」
そうして卵が激しく動き、光が眩くなっていった。が、ぴたりと光も動きも止まった。
だが、卵にもっと衝撃的な変化が現れた。
卵が割れたのだ。外側の衝撃ではない。内側からの衝撃によってだ。その証拠に卵の殻は卵の中に入らず卵の外に出ている。
これは間違いない。生まれる! 魔物が卵から孵る!
五人は慌ててそっと卵を床に置き、なぜか少し離れた。なぜなのかは自分達でもわからないのでちょっと説明できないが離れた。
緊張と興奮で、逆に静まり返る五人。ピキピキと音を立てながら割れていく卵。
「ニャー!」
一番最初に卵を取っ払って中から出てきたのは優太の卵だ。一見すると子猫のような姿の魔物だ。この卵が魔物の卵だからなのかすでに毛もある程度生えそろっており、燃えるような赤い毛並みが特徴的だ。
その猫は優太の胸に飛び込む。慌てて優太が抱きかかえると、すやすやと寝始めてしまった。
我が物顔で自分の腕で眠った子猫だが、しばらく見ていたら、優太も思わず笑ってしまっていた。
「わ、わぁ……あったかい。かわいい……!」
次に卵を突き破ったのはジュディの卵だ。
ぱっと見た見た目は馬だ。白い毛並みが眩しい仔馬である。その額から生える角を見なければだが。
だがこの馬、優太の子猫並みの大きさくらいしかない。いくら仔馬といえど小さすぎる。これでは馬とはいえ人を乗せることなどできないだろうが、これも魔物だからなのだろうか?
成長すれば人を乗せることが出来る様になるのだろうか?
そして仔馬の魔物も震える足でジュディの元へやってきて匂いを嗅ぎ、ジュディに寄り添った。
ジュディはその様子に感動して、ぎゅっと抱きしめた。
「いやーん、かわいいー! よく来たわね初めまして、あなたのママよ! うわーい!」
その次に殻を破ったのは茜の卵だ。
亀だ。どう見ても亀だ。足の形からしてリクガメではなくウミガメだろう。陸を歩くようにできているとは思えない。甲羅の色が緑かかった黒というべき色をしている。だがこちらはジュディの馬の魔物とは逆に、カメの赤ん坊という割には大きい印象を受ける。カメの赤ん坊は片手でもつかめそうな大きさだったはずだが、この亀は普通に両手を使わねば持てなさそうだ。
その亀もやはり迷うことなく茜の元へやってきた。
茜は感動している。どうやら茜的にはありだったようだ。うっとりとした表情で甲羅を撫でている。
「……いらっしゃい。よく生まれてきてくれたわね……」
「キュー♪」
そしてさらにその次に生まれてきたのは桃子の卵からだ。
桃子の卵から生まれたのは、既存の生物とは違うような、見たことのない見た目をしていた。
あえて言うならウサギだろうか?
だが、こんな全身が緑色のウサギなど見たことがないし、尻尾も長く、二股に分かれている。それに、大きさもウサギにしては小さい。大きさ的にあえて例えるならリスあたりだろうか?
しかしその耳はウサギの様に大きく、骨格などから言ってもウサギの様に見える。
何といっても一番印象的なのは額の赤い石だろう。額に埋め込まれたそれは大粒で、不思議な赤色の光を放っている。
そんな不思議な生き物も、卵から出て来るや否やパーッと走って、桃子の肩に乗って、桃子の頬に口づけをするかのように鼻をくっつける。桃子の美少女ぶりと相まってとてもかわいらしい構図だ。
思わず優しくなでるが、鼻から血が出ていることに本人は気づいているのだろうか。アイドルがしていい顔ではない顔になっている。
「あ、あ、あ、あたし、幸せ……! もうこれあれよね、この子はビューティフルドリーマーのマスコットに決定ね。異論は許さないわ。あ、これほんっとうに良いわ。最高!」
最後、まだ生まれ切っていないのは秋彦の卵だ。卵は動いているし、殻も割れている事から生きてはいるようだが、どうにも殻を破るのに手間取っているようだ。
「……おーい、大丈夫かー?」
恐る恐る近づいて声をかけてみる。
するとその声に反応するかのように卵にひびが入った。ひいき目かもしれないが、大丈夫だから待っていてくれといわれたような気さえするタイミングだ。
「残ったのは秋彦のだけだね……」
「猫、馬、亀、リスみたいなの、と来て最後に何が出て来るのかしらね?」
「鳥とかかな?」
「……蛇?」
と、何が出て来るかで盛り上がる外野をよそに、秋彦と卵は見つめ合うかのように静かだった。
そして、とうとう秋彦の卵が完全に割れ、中から飛び出してきた。全身真っ白で羽が生えており、まだ卵の殻が頭に乗ったままだというのに、それを帽子の様に乗せてリビングを飛び回っている。
だが、秋彦の卵から出てきた魔物は明らかに鳥ではない。
全身鱗に覆われており、長い尻尾も相まって、その見た目は爬虫類に似ている。だがやはりそのシルエットは爬虫類というには失礼だろう。
頭に生える角、手に生える爪、小さいながら鋭いことがうかがえる牙。
間違いない。
しばらく飛び回ったのちに、甘えるかのように秋彦の胸に飛び、ぴったりと張り付いたこの生き物は……
「「「「「ど、ドラゴン……?!」」」」」
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これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の投稿は10月9日午前0時予定です。
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