表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
りあダン! 現実世界にダンジョンが?!  作者: 大道寺 禅
地方都市奪還作戦 準備編
94/385

第九十二話 アキーズブートキャンプ

累計PV数122万突破、評価件数260件突破しました!

これも皆さまからのご愛顧の賜物です。

これからもりあダンをよろしくお願いいします!

 地方都市奪還作戦が正式に世に発表されて、一週間が経過した。

 その間は、レインボーウィザーズも学生としての本分を失わない程度に、忙しく動き回っていた。


 地方都市奪還作戦に向けて、レインボーウィザーズの行った最初の活動は、ズバリ探索者ランクの付いた迷宮探索免許証の取得、およびシルバーランク昇格試験の受講であった。

 シルバーランク昇格にあたって、迷宮探索法のテストや、精神鑑定、ギルドによる審査と身辺調査が必要になるので、まずは迷宮探索法の理解度をテストすることになった。

 なお、雨宮曰く、「君らはテストさえ合格すれば審査と身辺調査はパスしてるようなものだから早くテストに合格してほしい」との事。

 しかし、そこはやはりレベルアップによってあらゆる面が成長している探索者。普通に勉強するだけでもテストは余裕の合格だった。

 合格後、ギルドで精神鑑定を受け、五人ともシルバーランクへ昇格となった。

 なお、このテスト。のちに初級を突破し、試験を受けた人たち曰く、「自動車免許の試験の様だ」との事らしい。


 次に行ったことは、チョークと素材集めである。一度ボスを倒した事でレベルが上がったことにより、他の初級ダンジョンに入ることで、後続の探索者に情報を伝え、それによりクリアしやすいダンジョンを探すことも出来るようになった。

 ダンジョンの中にあるアイテムも、しばらくするといつの間にか新しく置き換わるし、ダンジョンのボスも撃破時の報酬も復活するので、これらの活動は無意味という訳ではないのだ。

 五人が集まって探索するなら一日一ダンジョンの制覇をノルマとしていくようにする。休みの日は一日二ダンジョンだ。

 そして無事に制覇が終わったら、ギルドに直行し、ギルドに報告と、聖域チョークと海洋の守護像を売り渡す。素材アイテムについては一部を研究機関に売り渡し、残りは保持して、今後自分たちが素材アイテムを使えるようになったら使用できるように貯めておく。

 メーツーを発行しているKAMIKAWA社へは、雨宮が情報を共有しているのでこちらからは特にアクションはない。

 ちなみにどうやらメーツー編集部も、そろそろ自力で初級ダンジョン突破出来そうなようで、突破の際には盛大に書き下ろす予定の様だ。


 そうやって五人で集まれる日は素材とチョーク集めを主として活動している。仲間であり友である五人なのだ。やはり背中を預け合って探索を行うのが探索者の本懐ともいえるだろう。

だがしかし、五人で集まらないこともある。

 例えば桃子が、一般層への探索者のイメージアップ運動のための番組である【ダンジョンチャレンジャー! 迷宮へ挑む人々】のメインパーソナリティーとして撮影を行っているとき。

 または、ジュディが聖域チョークと海洋の守護像の事を海外、主に実家のある祖国にどう混乱することなく伝えるかなどを実家と相談、あるいは日本国内外にある探索者関連の企業に対して訪問、会談を行うことにより企業に対してのパイプ作りを行っている時。

 または、茜が今後の日本に対し探索者に有利であり、一般人の金回りもよくなるような法案をどう通していくかを話し合う会合に出席しているとき等、男子陣とは違い、女子陣はあちらこちらに忙しい時間が増えている。

 ではその間、男子陣は遊んでいるのかといえば、決してそうではない。そういう時に二人はギルドからの依頼をこなしているのだ。


………………………………


「はい、じゃあ今日はよろしくお願いいたします!」

「「「「「よろしくお願いいたします!」」」」」


 大きな声であいさつをする秋彦と、男女合わせて五人のメンバー。もちろんレインボーウィザーズの面々ではない。

 秋彦以外の五人が手に持つのは新品同然の武器、刀や槍等だ。彼らが身に纏う防具も真新しく、見ただけで一度も攻撃を受けたことがないことがよくわかる。

 体が小刻みに震え、緊張の表情が隠せない五人を見れば、秋彦を除くメンバーはみんなド素人であることは誰が見ても明らかだろう。

 そう、これが秋彦と優太が受けたギルドからの依頼だ。

 地方都市奪還作戦に際して説明のあった、先輩探索者によるレベルアップ研修というやつだ。

 入るダンジョンはもっぱら入門ダンジョンで、秋彦一人でも制覇は容易だ。なので優太と秋彦はそれぞれ別の探索者を見ている。


「じゃあ今回はまず魔物を倒してレベルを上げるところを目標に頑張っていきましょう」

「「「「「はい!」」」」」


 意気込んでいるのは大変結構なのだが、それとは裏腹にへっぴり腰になっている。

 まあ仕方ない事だろう。彼らはダンジョンが現れたこのご時世に倣って探索者になったはいいが、いざ本当に非現実的な生き物と戦ったりするとなった時に、自分の命を危険にさらす本当の殺し合いが恐ろしくて戦えなかったりした人々であり、ネットや裏では【脱落者】などと呼ばれる人々だ。

 戦いを恐れ、戦えず、探索者としての活動を行わないまま引退してしまう人々。そういう人は少なくない人数でいるのだ。

 尤も、脱落者等と言ってバカにするのはたいていネット上だったりして、実際に探索者として魔物と戦ったことのある人で馬鹿にする人はなかなかいないのだが。

 秋彦も、そういう人たちを馬鹿にする奴らは遅かれ早かれ初心を忘れて無謀な突撃を行い、死んでいくのではないかと思っている。

 しかし、そのことを酷く気にして奮起しようとする人々が、今回のレベルアップ研修に参加してくることが多いのだ。

 なので秋彦は、必然とそういう人々に勇気と自信を与えていくのが仕事ということになる。


「あ、いましたね、コケダマ。誰が行きますか?」

「あ……じゃあ僕が……」


 さっそく入門ダンジョンでも最弱のコケダマを見つけた秋彦がメンバーに声をかける。

 皆震えているが、一人手を上げた。剣と盾を持っている青年だ。秋彦よりは年上の様だが、探索者始めたばかり感が出ている。


「まあ最初は怖いのは仕方ありません。ですが、大丈夫、僕がついています」

「は、はぁ……」


 自信満々に言うが、いまいち懐疑的な表情だ。なので、自信の根拠を見せる。


「『力よ!』パワー! 『力よ!』ストロング! 『力よ!』パワー! 『力よ!』バリアー! 『力よ!』パワー! 『力よ!』メンタル!」

「う?! こ、これは……!」


 強化が成功したことで、全身に力が湧く。自分の身に起こった変化に戸惑っているところで、秋彦が優しく、力強く声をかける。


「いかがです? 力が湧いてくるでしょう? ストロングは攻撃力を上げ、バリアーは防御力を上げます。あいつ程度ではダメージにはなりません。後は戦う意志一つです。大丈夫です。これでなお負けるということはあり得ません。もし何かあっても僕が助けに行きます。さあ、ここが正念場です。はじめの第一歩を、踏み出しましょう!」


 秋彦が言い聞かせるように語り掛けると、震えと怯え、狂気による興奮で荒かった息がゆっくり落ち着いていく。

 ストロングとバリアーと一緒にかけたメンタル、精神力向上魔法がかなり効いているようだ。メンタルは魔法力を上げるだけでなく、こういったことにも使えるのだ。


「う……やああああ!!」


 大声を上げ、勢いよく突っ込んでいき、コケダマを切る! 上段からたたき切るような一撃は、見事コケダマを真っ二つにした。


「あ、あはは……! や、やった、やったんだ! うおおおおおおお!!」

「はい、おめでとうございます! まずは一つですね。では、この調子でどんどん行きましょう!」


 ほかのメンバーの祝福の拍手とともに、自らに自信が芽生えたのか、先ほどよりもいい表情になった。


「さて、次は誰が行きますか?」


………………………………


「じゃあ今日はここまでですね。ありがとうございました!」

「「「「「ありがとうございました!」」」」」


 昼頃から初めて、現在夕方。秋彦と五人はギルドに帰ってきていた。

 この日は五人をLv1からLv5程度に自ら上げさせることに成功した。後はボス戦を通してダンジョンウォッチを手に入れればもう彼らは大丈夫だろう。


「お疲れ様秋彦教官」

「あ、雨宮ギルドマスターじゃありませんか。お疲れ様です」

「ははは、返されたな。でも実際君は凄いよ。レベルを一つも上げられなかった人たちにレベルを上げさせるのって実はなかなか大変なんだよ?」

「あー、参加しても結局一つも上げられないままっていう人多いって聞きますね」

「報酬は上乗せしておくから、またお願いね。いや本当にお願い。レベル低くても善良な探索者の頭数そろうのは本当にありがたいんだ」

「ええ、分かってますよ」


 雨宮と軽く挨拶と報告をした後、ギルドの椅子でのんびりと優太を待つ。

 この時間は割と好きだ。彼らもこれからの激戦を何らかの形でかかわるのだろう。脱落者を卒業した彼らに心の中でささやかなエールを送る。


 なお、秋彦はその後もかなりの人数の脱落者を探索者へと仕立て上げ、一部では、アキーズブートキャンプ、と呼ばれたとか呼ばれなかったとか。


皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。

これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。

次の投稿は10月3日午前0時予定です。

よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ