第八十九話 地方都市奪還作戦
累計PV数116万突破、総合評価7300pt突破しました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「皆様、どうか静粛にお願いいたします」
ざわめく会場がいったん静まる。しかしそれでも収まり切ってはいない。
「えー、この二つの道具を用いることによって、我々探索者ギルドとしましては、以前より自衛隊と共同で計画していたある計画も、始動に向けて動き始めることができるのではないかと考えております。皆様、次のページをご覧ください」
ページが変わると、そこにはこう書いてあった。
≪地方都市を魔物の手から取り戻せ! 流通の復活! 地方都市奪還作戦!≫
歓声が沸いた。これには秋彦達もつい口から歓声が出てしまった。
地方都市を魔物の手から奪還し、聖域チョークにて魔物除けを行う。
魔物の氾濫が起こってしばらくは、探索者の数が少ないせいで、手の回らない地方都市も多かったが、順調に探索者の数も増えていっている今ならば、魔物を一掃さえすれば、探索者にかかわる施設の増設を行うことで、地元の探索者も安心して留まることができるだろう。
元々地方の探索者が地元にとどまらずに都市部に出てしまったのは探索者にかかわる施設の少なさや、知名度の低さから探索者になる人間もあまり出なかったことが原因だ。
その辺を意識したうえで、探索者用の施設の増設や広告宣伝を行うなどの対策をすれば、地方の都市でも居ついてくれる探索者はきっといるだろう。
万一氾濫が起きてしまっても、聖域チョークで作った安全地帯に逃げ込み、救援を要請することが出来るようになる。状況は以前と比べて明らかによくなっているのだ。
そのためにもまずは地方で野放しになっている魔物を一掃し、立て直しを図る。
もちろんその間に新しく氾濫がおこっては元の木阿弥だが、それもインターバル期間に入っており、氾濫が起きないようになっていることで解決されている。
正直に言って、地方都市を魔物の手から奪還するには今しかないと言えるタイミングだ。
魔物の氾濫が初級ダンジョンを制覇したことで一時凍結されたことで、氾濫が起きなくなった今でないと出来ないことであり、何が何でもこの間に成し遂げなければならないことだ。
雨宮の熱の入る、演説に近いプレゼンに会場も沸き立つ。
「しかし、ここで問題になるのがやはり、チョークの数です」
一転静かになる会場。
そう、結局そこに行きついてしまう。このアイテムがあるのは初級最下層だ、はっきり言ってなかなか取りに行こうと思って取りに行ける場所ではない。
もちろん秋彦達には可能だろう。しかし秋彦達だけ出来ても数も時間も足りない。やはりもっと多くの人が初級ダンジョンを制覇出来る様にならないと、とてもではないが時間が足りない。
秋彦達だけでは、それこそインターバルの間に学校にも行かず、ひたすらダンジョンに潜っていたとしても間に合わない。
先ほどまでの熱気が吹き飛ぶほどの切実な問題に、雨宮が口を開いた。
「ですので、我々は探索者ギルドとして出来る、精いっぱいの事をしようと思います。皆様、次のページをご覧ください」
次のページに切り替わると、次のように書いてある。
≪探索者ギルド悪夢の終焉、探索者強化の為に出来る、行う三大キャンペーン!≫
≪その一! 風評被害に負けません! 探索者イメージアップ運動!≫
少し会場の雰囲気が変わってきた。わかって納得している奴が半分、分かってなくて困惑する奴が半分といったところだろうか?
「はい、ご説明いたします。まずこれは、ダンジョンに挑む探索者達のイメージアップを図ることで、新規で探索者を始めようと考える人々を増やす狙いがあります」
確かに、昨今探索者はレベルの低い者達によるイメージの悪化が問題視されている。
力を手にして本性が露わになるのか、あるいは人に頼られる快感から調子に乗ってしまうのか、それは分からないが、どうもレベルが低く、駆け出しの状態の人間ほどガラの悪い連中が増えていっている傾向がある。
中にはレベルが高い事で悪事を働いても、普通の警察では逮捕しきれないことをいい事に、犯罪に手を染めるような探索者や、雑魚魔物を倒せたというだけで弱者を食い物にする落伍者と呼ばれるろくでもない連中もおり、これにはギルドもほとほと頭を痛めていたのだとか。
ダンジョンポリスという存在ももちろんある。しかしそれも知名度の低さや実際の数の少なさも相まってまだまだ取り締まり切れていないと言う事もある。
何より頭が痛いのが、そんな奴らのせいで善良な一般的探索者、普通に依頼をこなし特に人に迷惑もかけずに活動している人々までが割を食っている状況だ。暴力でしか生きられない連中が暴力で生きるための職と勘違いされて、後発の探索者志望の人間が出てこなくなるのは、人手不足の原因になる。
「そこで、我々は迷宮通信や、ヨウチューブによるヨウチューバー活動。そしてテレビなどのメディアを通じて、一般的な探索者の活動をアピールし悪いイメージを払拭し、善良な人々も数多くいることをアピールします。また、成果を出せれば稼げることをお見せする事で新規の探索者志願者を増やしていきます。こっちは積極的にアピールすると嫌われかねないので程々に」
具体的なアピール内容については、後日プロの宣伝役の人と協議を行い、内容を詰めていくようだ。
何がどうアピールできる内容になるかわからないので、慎重に協議を行い、そのうえで行っていく。
「これがまず一つ目のやれることです。それでは二つ目のやれることです。皆様、次のページをご覧ください」
次のページに切り替わると、次のように書いてある。
≪探索者ギルド悪夢の終焉、探索者強化の為に出来る、行う三大キャンペーン!≫
≪その二! 上昇志向に応えます! 先輩探索者によるレベルアップ研修と探索者ランク制度導入!≫
会場からちょっとした驚きの声が上がる。
「二つ目のやれることは、新人探索者の為に、先輩探索者が誰かしら付いて行き、新人の成長をサポートしていくレベルアップ研修を行います。そしてレベルが上がり、ダンジョンを制覇していくごとに今回から新しく導入する【探索者ランク】を上げることが出来る様になります」
雨宮が再び説明を始める。
やはり、最初の探索者になった時の最初にして最大の障害が、魔物を殺す事だ。最初の一歩が最大の障害とはなんとも厳しいが、今までこちらを襲ってくる生き物と戦い、殺すというのはなかなか辛いものがあり、最初の一歩が踏み出せずにリタイアしてしまう。また、何とか戦えても、恐慌状態でめちゃくちゃに戦い、結果重症を負ってしまったことでトラウマになり、やはりリタイアという人は案外多いらしい。
そこで、その最初の状態を乗り越え、活動出来ている探索者達に誰かしら付いて行ってもらい、戦いぶりを見てもらう、または一緒に戦ってもらうなどしてもらう事で、戦いの気構えを学んだり、戦いに耐えられる精神力をつけていってもらう。
そうやって探索者として一歩づつ、確実に進歩していき、入門ダンジョン制覇を目指してもらい、ランクという分かりやすい自分達の実力を示すものを上げていってもらうという考えだ。
ちなみに今回新しく制定するギルドランクと、昇格の条件は次のようになる。
ブロンズランク:ギルドに探索者として登録したが、まだ入門ダンジョンを制覇していない。
アイアンランク:入門ダンジョンを突破し、ダンジョンウォッチを手に入れた。
シルバーランク:初級ダンジョンを制覇した。
ゴールドランク:中級ダンジョンを制覇した。
プラチナランク:恐らくこれから出て来るであろう上級ダンジョンを制覇した。
「このようにして、自分たちの実力を可視化させ、ギルドが認定することにより、探索者としてのモチベーション向上を補助していきます」
なお、実際には昇格するに当たって、迷宮探索法のテストや、精神鑑定、ギルドによる審査と身辺調査を受ける必要がある。
いくら実力があろうと、犯罪者や、精神異常者を高ランクにすることはできない様にも配慮しているのだ。
高ランクになればなるほど、迷宮探索法の試験は難しくなっていく。これも、高ランクならば、迷宮探索法は知らなかったではすまされないほどに強くなっている可能性があるが故の処置だ。
また、そういった人間を高レベルにしないためにもランクを上げていかないと次の級に当たるダンジョンに入ることをギルドが許可しないともしている。
レベルが高くなると、人間はそれこそ兵器並みの力を得ることにもなる。そういった輩が、簡単に力を得ないようにするためにも必要なことだ。今後はそういう人間がダンジョンに入れないようにするためにも、駅の改札の様なものを設置することで、クラスにあったダンジョン入場を促すようにするらしい。
「これだけ聞くと、皆さんランクは人を縛り付けるだけのものと思われ、いやな思いをするかもしれません。しかし、ご安心ください。このランク、勿論恩恵もご用意しますよ!」
雨宮が話を続けると、どうやらこのギルドランクが上昇するにつれて、探索者はギルドから様々な恩恵を受けられるようになるらしい。
例えば、魔物素材の買取額がランクによって補正が入るようにしたり、ブロンズランクでは申請することで、先ほどのレベルアップ研修を受けることが出来る様になったりもする。
シルバーランクからは、ギルドに併設されている解体場の無料化に、同じ探索者同士でのいざこざや犯罪が起こった場合に、逮捕する権利も付与できるようにするつもりらしい。要するに自由度の高いダンジョンポリス化でもあると言う事だ。
故に精神鑑定や社会的倫理観、迷宮探索法の習熟は重要であり、それをテストに盛り込んだのだ。
「他にも特典は随時追加予定ですので、導入の際にはぜひ楽しみにしていてくださいね。それでは最後のやれることです。皆様、次のページをご覧ください」
次のページに切り替わると、次のように書いてある。
≪探索者ギルド悪夢の終焉、探索者強化の為に出来る、行う三大キャンペーン!≫
≪その三! 経済活動と探索者活動を活性化! ギルドによる大幅強化買取強化期間開始!≫
これは探索者や研究者の人々、政治家の人も反応している。
読んで字のごとくならば、経済の活性化や、探索者から研究材料が入ってくるのはありがたい事なのだろうが。
「さて、最後のギルドからのやれることです。やっぱり最後にして最終手段としてはこれだろうと思うのです。ギルドで魔物素材や、ダンジョンで手に入れた物を買い取る際に、二か月後までは買取金額を上げます」
やはりそのままの意味だった。しかしそのそのままの事が何よりもありがたい。
探索者にとっての最大のモチベーションはやはり買取金額だ。いろいろな探索者がいるだろうが、ここが高くてテンションが上がらない探索者はいないだろう。
「特に聖域チョークと海洋の守護像に関しては特に高値で買わせていただきます。具体的な金額は、今後様々な方々と協議を重ねたうえで発表させていただきます」
また会場がざわめき始める。まあ大金が動く道具の売り買いの値段を決めようとなるのだ。まして今まで見たことも聞いたこともないような、でもあまりにも有用な道具の売買金額の設定なのだ。やはり慎重にはならざるを得ないだろう。
金で買える魔物に対する安全。あちこちで頭を抱える人がいる。
会議はまだまだ続いていく……
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の投稿は9月24日午前0時予定です。明日です。
会議パートは次で終わりですので、どうかお付き合いください。
よろしくお願いします!




