第八十八話 会議開始!
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「まずは皆様、お忙しい中、急な呼び出しであったにも関わらず、ようこそお集まりくださいました」
雨宮が深々と頭を下げる。
「さて、さっそく本題に移らせていただきます。資料を」
雨宮がそういうと、部屋の端に控えていたビジネススーツの女性たちが参加者に資料を配っていく。
「では皆様、お手元の資料をご覧ください」
そういいながら雨宮は会議室を少し暗くし、スクリーンを下ろしてゆく。そしてプロジェクターを作動させ、パワーポイントで作られた資料をスクリーンに映させた。
スクリーンに映った資料には、秋彦たちの写真と、一つの文章が映っていた。
≪祝! 初級ダンジョン制覇! レインボーウィザーズ快挙!≫
ここまで大きく映しておくということは、まずここでレインボーウィザーズの功績を見せつけておき、そのうえで戦利品の紹介という流れなのだろう。だがちょっと恥ずかしい
「まず、ダンジョンウォッチを持っている方ならご存じであるとは思いますが、昨日、南雲明彦、石動優太、ジュディ=マクベス、楠桃子、舞薗茜の五人からなる探索者チーム、レインボーウィザーズが初級ダンジョンを制覇しました。これによって我々は現状を打破できるであろう大きな道具を手に入れるに至りました。まずは五人に拍手をお願いいたします」
全体から大きな拍手が起こる。
そしてすぐに収まると、雨宮がまた話し始める。
「ではさっそくご紹介いたしましょう。そのアイテムは二つあります。ではまず一つ目です」
次のページを表示させると、聖域チョークの画像と聖域チョークの説明が書いてあった。
会場がざわついた。まあ当然か。何せここにいる全員がこれを見に来たと言っても過言ではないのだから。
「まず一つ目。聖域チョークというアイテムです。これは線を引いた場所に魔物が近づかなくなるアイテムです。これをうまく使うことで、外に魔物が出てきても安全地帯を形成することができるようになります。そしてこれを道路に使えば、今後は道路に魔物が出現しなくなる。つまりそれは、流通面での安全を確保できるということであると言えるでしょう」
会場のざわめきが一層大きくなる。
特に興奮している様子なのは、さっき有権者から対応策をせっつかれていると言っていた政治家さんだ。氾濫による地方都市喪失の被害を最も被った人々の代表者なのだから、当然と言えるだろう。他にも何人か興奮した様子の人がいる。
「しかし、残念ながらこれだけで魔物の氾濫に対応できるという訳ではありません。次のページをご覧ください」
次のページには、秋彦たちが話した聖域チョークを使用する際の注意が書いてあった。
「はい、このチョークは一定の強さ、より正確に言うと戦闘力1万以上の魔物には効果を発揮しません。それなら入門や初級の魔物を十分抑えられると思われるかもしれませんが、そうはいかないのです。皆様、東京での戦いにおいて最後に起こった事を覚えておいででしょうか?」
ざわめいていた会場が、しんと静かになった。
まあ、あれに関してはあまりいい思い出ではないだろうから気持ちはわかる。
「戦いの最後、我らは魔物どもが魔物を食い合い、力を蓄え、どんどん強くなり、最終的には当時としては恐るべき戦闘力を持った怪物が生まれました。あれは魔物の生存本能がなせる業らしく数が急速に少なくなった魔物達が生き残るべく互いを食い合った結果とされています。そして、狭い場所に魔物を詰め込みすぎても同様の事が起こるらしいのです」
再びざわめく会場。
流石に大人な集まりなだけあって、取り乱したりする人はいないが、動揺が目に見える。
「つまり、聖域チョークでダンジョンを囲って外に出なくしてしまうと、氾濫期間を超すとダンジョンの中で魔物がどんどん強くなってしまい、戦闘力1万を超してチョークの効果で抑えきれなくなると外に出てきてしまうのです。なので、聖域チョークでダンジョンをふさいでしまうのは得策とは言えないでしょう」
顔を青くしている人や、がっかりしている人が多く見受けられる。せっかく氾濫問題が解決すると思いきや、変に蓋をするとより質の悪いものになって出てきてしまうとわかれば、がっかりする気持ちはわかる。が、これは正直どうしようもない。
「しかし、そのくらいの効果でも、安全地帯を形成できるのは間違いありません。少なくとも道路に魔物が入ってこれないようになれば、氾濫時に探索者が到着するまでの時間稼ぎになりますし、車の運転中に魔物が飛び出してくる、などということもなくなるでしょう。地上の安全に大きく貢献することは間違いないでしょう」
会場から拍手が起こる。
「そしてもう一つ。これは現在我々が目下最大の問題として直面していることを解決することです。次のページをご覧ください」
次のページには海洋の守護像の画像と説明が書いてある。
「はい、海洋の守護像です。これはこれを船に載せていると、その船は海の魔物から襲われなくなるというものです。現在海外からの輸入出の大半を担う船は、何もしないで出ると魔物に沈められてしまいます。フェリーも漁船も軍艦も区別なくです。しかし、これを船に載せると、船は魔物に襲われなくなるそうです。某国民的海賊漫画に出て来る海軍の船みたいですね。あっちは船の底に仕掛けがあるようですが」
どっと笑いが起こった。秋彦たちもつい笑ってしまった。考えることは皆同じなようだ。
「ともあれ、こちらも重要です。私たちの国は物資の大半を貿易にて賄っています。日用品から食料品、果ては石油資源といった物もです。現在は在庫、買い置きがあるおかげで今は何とかなっていますが、このままでは物資が枯渇することは明らかでしょう。輸送の滞りだけでなく、そもそも商品がないという所も、現在の物価の上昇に影響しているのは明らかです」
会場が一層どよめき、あちこちであからさまに話し合いがされている。
皆一様に、己の利益にどう影響するかの計算に必死になっているようだ。
また、これだけ聞いて早くも欲しいと騒いでいる人がそれなりにいる。
海運業者の方だろうか? あるいは漁師の組合関係者、海上自衛隊という可能性もある。
いずれも海の魔物には辛酸をなめさせられているはずだ。欲しがるのはやはり無理もないだろう。
まだ話し合いは始まってさえいない。ただ情報を開示しているだけなのだ。それだけですでにこのありさまである。
……今日は長くなりそうだ。そう思わずにはいられない会議の開始であった。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の投稿は9月23日午前0時予定です。明日です。
会議のところは一話で納めるべきではないのかというのとでもそれだと長すぎるしという葛藤からの折衷案です。
よろしくお願いします!




