第九話 DP(ダンジョンポイント)
累計PV1200突破ありがとうございます!
ライゾンは拍手をしながら近づいてくる。どうやら心底嬉しそうだ。
「いや、早い。本当に早い! まさかたった二日前後でクリアするとはね! 出来たばかりだから仕方ないとはいえ、まだ侵入どころか発見さえされていないダンジョンも多いのに。いや、素晴らしいよ!」
「お前……ライゾン!」
「おや、覚えてくれていたとは光栄だ。昨日ぶりだね二人とも」
そして、秋彦と優太に視線を向けると、首を傾げた。
「しかし……肉体面はずいぶんと成長しているが、魔力面の成長があまり追いついていないね? 魔法はそんなに使っていないのかな?」
「使ってないですね。だっていつ尽きるかも、今どれだけ魔法を放てるかもわかりませんし」
「もう帰るって決めた昨日の帰りと、今のあの蜘蛛野郎をぶっ潰すのに使ったくらいだよな」
すると、ライゾンはあちゃあとばかりに天を仰いだ。
「そうか……そうだったね。君たちに説明しなきゃいけないことを説明していなかったね。これは私の落ち度だ。申し訳ない」
そういうとライゾンは腰に下げていた小さな袋から、ダンジョン探索時に散々拾った謎の瓶詰めされた液体を取り出した。
「君たちはこんな液体を拾わなかったかな?」
「ああ。散々拾ったし、あの貰った袋の中にも入ってたぜ?」
「そうそうそれだ。それはマジックポーション、いわゆる回復アイテムだ。飲むと体のダメージと魔力を回復することができる」
「ああ、やっぱり?」
うすうす予想で来ていた事なので驚きはしない。だが、この一言が無ければとてもじゃないが飲む気がしなかった。得体のしれない液体なんてとてもじゃないが飲めたものではない。
「せっかく傷ついているんだ。試しに飲んでみたらいいだろう」
「……本当に大丈夫なんだろうな?」
「私は君達に強くなることは望んでも死んでほしいなんてこれっぽっちも思っていない。大丈夫だよ」
「……では……あ、美味しい」
「柑橘系? だな、味的には」
と、味の感想を言っていると、互いの体の傷や、魔法によって減った魔力が起こしていた疲労が薄れていくのを感じる。どうやらこれは回復アイテムで間違いないらしい。
「いかがかな? にしても、と言う事は今までロクに回復アイテムを使わずにここまで来たんだよね。本当に素晴らしいな君たちは」
「おかげでこっちは無駄にひっでぇ難易度で挑んじまったよコンチクショー」
「まあまあ、では早速あれを見てくれ給え」
といってライゾンが指を差した。差した方には宝箱があった。ちょっとのぞいた時に見えた奴だ。
「ダンジョン制覇のご褒美。ダンジョンのお宝だね。まあ今回は入門ダンジョンってことで、どこの入門ダンジョンでも中身は同じだけどね。さあ取り給え。今回は勝手にいなくならないから、ね?」
釈然としないが、促されるままに宝箱を開けることにする。近くで見るとやはり大きいが、蓋は案外軽かった。難なく開ける。
中に入っていたのは小さな腕時計だった。時計の部分が、スマートフォンのようになっている。
「……スマートウォッチ?」
「苦労して突破して、ご褒美がスマートウォッチ?」
「中身は全く違う物さ。時計にもなるけどね」
「ふーん。で、これ何なんだ?」
「それは、【ダンジョンウォッチ】だ!」
えらく得意げに名前を宣言する。ちょっと引く。スマートウォッチと何が違うんだ。
「ではまず二人とも。まずはつけてみ給え」
「お、おう……」
言われるがままにダンジョンウォッチをつける。すると少し何かを体から抜き取られたかのような感覚がした。いや、今ならわかる。抜かれたものは魔力だ。このダンジョンウォッチとかいうの。魔力で動いている。
「心配しなくても初回の認証の為に多く抜かれただけであって、普段は魔力をほとんど消費しない。これをつけていたせいで魔法が撃てなくなったなんてことはないからね。さて、では早速、ダンジョンウォッチ起動、と念じてみてくれ」
言葉を先に取るかのように続けたライゾン。もう何か言う気も失せてしまい、さっさと起動を念じる。すると、目の前に半透明のディスプレイが目の前に浮かんできた。
「うお?! な、なんだこりゃあ……」
「凄い、なんていうかSFチックだ!」
「ふふん、それだけじゃないぜ。そのディスプレイをよく見てみ給え。何が映っている?」
そこに映っていたのは、自分の顔写真と自分のプロフィール。そして……
「ステータス?」
「そう、ここには君達の現在の状態が記されている。そこには明確に数値が書かれているだろう? それが現時点での君達の実力だ」
改めて見てみると、筋力だの生命力だの知力だの、様々な自分の状態が数値になっていることがわかる。が、異様に細かい。例えば知力だけでも、【戦術的知力】、【学術的知力】、【芸術的知力】など様々に分かれており、はっきり言ってわかりづらい。
「なんかいろいろありすぎて訳わかんねーんだが」
「ステータスを徹底して数値化するとどうしても項目が多岐にわたってしまう物さ。なので! 君たちが見るべき点は、こことここ、そしてこことここだ!」
そういってライゾンが指さす先にはこうあった。
「【レベル】と、【肉体力】に……」
「【魔法力】、で、【戦闘力】?」
「うむ、説明しよう。レベルはゲーム、RPGでよく使われる、強さの段階を表す数値だ。高いほどに総合的に成長していることになる。
肉体力は文字通り本人の体の強さを総合的に表すものだ。この数値が高いほどに肉体のみの攻撃力だったり防御力だったり素早さだったりが高いことがわかるよ。
魔法力は肉体力の魔法版だ。これが上がれば、より高等な魔法を使えたり、魔法を使える回数が増えたり、今使える魔法の威力が上がる。
最後に戦闘力は、肉体力と魔法力から算出される総合力的に今現在どれだけ強いのかを示す数値だ。ダンジョンで必要なのはこの辺りかな。では自分の数値を見てみ給え」
改めてステータスに目をやると、秋彦のステータスは、こうなっていた。
名前:南雲 秋彦
レベル5
肉体力:100
魔法力:40
戦闘力:180
この結果を見て秋彦は首をかしげる。
「あれ? 戦闘力って、肉体力と魔法力の総合じゃないのか? 足した数と合わねーけど」
「関係はあるさ。でも単純に足した数ではないね。体力だけあっても敵に突っ込むだけではいけない。いくら強力な魔法が撃てようと、実際に撃てなければ意味がない。要は戦闘になったときにどれだけ考えられ、どれだけ動けるか。割とそういった部分がさらに考慮されるんだ」
「あ……だから僕の戦闘力低いんだ……」
「え、親友低かったん? ちょい見してみーよ?」
優太から優太のステータスを見せてもらう。
名前:石動 優太
レベル5
肉体力:30
魔法力:120
戦闘力:100
秋彦も流石にこの結果には驚いた。倍も違うとは。
「え、マジかこれ。魔法力よりも下じゃねーか。親友の魔法めっちゃダメージになってたのに……」
「うん……でも分かるよ。だってさっきだって、秋彦の指示なしじゃほとんど動けなかったもん。怖くて焦って、言われた通り魔法撃つので精一杯だったし……」
「うむ。その点秋彦君はきちんと動けていたし、攻撃でゴり押すのではなく、しっかり弱点を見つけた上での攻撃も出来ていた。魔法や肉体力よりも戦闘力が上になったのはそこら辺だろうね」
「ふーん、そういうもんか。だがやっぱ魔法力上げてぇな。ちょっとこれは低すぎる気がすんぜ」
「僕も肉体力上げないとなぁ。ムキムキマッチョになりたいわけじゃないけど。後、こういう時におびえない精神力が欲しい……」
自らのステータスをみて改めて不満や改善点を出すと、ライゾンが待ってましたとばかりに割り込んできた。
「そんな君たちに朗報だ! それ、鍛えられるぞぉ!」
「あん?」
「どういうことですか?」
「そのダンジョンウォッチをつけたままこちらへ来てくれ」
というとライゾンは宝箱の裏に進んでいく。宝箱に目が行っていて気付かなかったが、どうやら宝箱の裏に通路があったようだ。
連れられるままに先に進むと、小部屋に付いた。小部屋の中には巨大なディスプレイと大理石で出来た台座があった。
ライゾンは台座の隣でにこやかに、おいでとジェスチャーしている。
「……なんだいここは?」
「ふふふ、ここはダンジョンの最終的なご褒美を上げる場所なのさ。二人とも、まずは台座にダンジョンウォッチをかざしてごらん。駅の改札にあるアレの様に」
「どれどれ……何が起こるかな……っと」
「はい、よいしょっと」
「結構。人数分かざしたら、ここのボタンを押す。すると……」
と言いながらライゾンはダンジョンウォッチをかざした場所の近くにあるスイッチを押した。
爆音でファンファーレが鳴った。
「うお、うるっさ!」
「み、耳が、キーンって……」
「ちょっとボリューム大きかったな。まあそれはいいんだ。見てみ給え」
ディスプレイに表示が出てくる。
まずはでかでかとcongratulations! の文字。
次にresultと出て、その下に次々に文字が出てくる。
史上最初の入門ダンジョン探索者……現代地球上、最初に入門ダンジョンに入った
史上最初の入門ダンジョン制覇者……現代地球上、最初に入門ダンジョンを制覇
史上最初の魔物撃破(物理)…………現代地球上、最初に物理攻撃で魔物を倒した
史上最初の魔物撃破(魔法)…………現代地球上、最初に魔法攻撃で魔物を倒した
史上最初の入門ダンジョンボス撃破…現代地球上、最初に入門ダンジョンボスを撃破
魔法習得(炎)…………………………炎属性魔法を習得した
魔法習得(風)…………………………風属性魔法を習得した
魔法習得(光)…………………………光属性魔法を習得した
魔法習得(無)…………………………無属性魔法を習得した
アナライザー……………………………ボスの弱点を突いた
低レベルクリア…………………………目標攻略レベルより下のレベルでダンジョン制覇
ペアチーム………………………………二人の冒険者チームでダンジョン制覇
命知らず…………………………………ダンジョンで自発的な回復をせずダンジョン制覇
質素倹約…………………………………アイテムを拾っても使い切らなかった
ダンジョンを駆け抜けろ………………目標攻略時間よりも早くダンジョン制覇
なんというかいろいろ書いてあるが、何だかこれは……
「……ゲームのスコア?」
「っぽいね」
「うむ。そんな感じにしたのだよ。次はスコア、ダンジョンポイント、略してDPが出てくるよ」
今度は説明文が消え、代わりに数字が出てくる。
史上最初の入門ダンジョン探索者……1万DP
史上最初の入門ダンジョン制覇者……5万DP
史上最初の魔物撃破(物理)……5000DP
史上最初の魔物撃破(魔法)……5000DP
史上最初の入門ダンジョンボス撃破…1万DP
魔法習得(炎)……………………10DP
魔法習得(風)……………………10DP
魔法習得(光)……………………10DP
魔法習得(無)……………………100DP
アナライザー………………………50DP
低レベルクリア……………………100DP
ペアチーム…………………………5DP
命知らず……………………………10DP
質素倹約……………………………20DP
ダンジョンを駆け抜けろ…………100DP
TOTAL 80,415DP
「おおお! これは高得点だよ! 素晴らしい!」
「そ、そうなのか?」
「たぶん。だって【史上最初の】系があるからポイント多いけど、ぶっちゃけ他のダンジョンでもやれそうなの10とか20ばっかりじゃない? 低レベルとダンジョンを駆け抜けろは命がけになるし」
と、雑談していると画面が切り替わる。
getting points‼
80,415DP
おめでとうございます!
貴方達は80,415DPを獲得しました。DPはダンジョンウォッチを通じて様々な特典と交換できます!
次は初級ダンジョン制覇を目指しましょう!
と表示が出てきて、しばらくすると消えてしまった。
多くのPVありがとうございます。
宜しければ評価感想の方を頂ければ更なる精進のモチベーションになりますので、厚かましいようですが、宜しくお願い致します!