第八十七話 会議に集まる人々
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
有識者会議の時間が迫るごとにいろいろな人がギルドに入ってくる。よくわからない人が大半だが、マスコミや研究者、あるいは政治家なんかもいるようだ。
秋彦と優太はそれを部屋から出てこっそりと伺っている。女子はみっともないと言ってついては来なかった。
「どんどん集まってきてるなー……」
「うわ、テレビ局の人もいる。カメラ担いでいるよ」
だが、中には見知った顔もあり、それを見るとちょっと安心する。
例えは、以前インタビューを受けた探索者御用達の週刊情報誌である迷宮通信、通称メーツーの編集チーム。矢場チーム、あるいは血染めの衣装をもらった縫製会社である会社カッソロの社長さん、茜の父親であり、政治家である舞薗巌さんも来ていた。
そこまで見て、二人は取り合えずギルドマスターの部屋に戻る。
「おかえりなさい、どうだった?」
「いやー、すげーな。テレビ局とかも来てたぜ」
「そりゃそうでしょ、こんな特大の飯のタネ捨て置くわけないじゃん」
「あ、あと茜ちゃん、お父さん来てたよ」
「……来るって言ってた」
改めてとんでもない人たちの集まりになることが実感できてついこの間まで一般人だった秋彦と優太は緊張してきた。
「何、落ち着かないの?」
「あー、そらそうよ。ついこの間までこんなとことは無縁の一般人だったんだぜ?」
どうにも落ち着かない様子の秋彦にジュディが声をかけた。
秋彦もため息交じりにこたえる。正直秋彦の言う通りついこの間までただの高校生であった秋彦と優太にはこういう場というのはだいぶ重圧に感じる。
「仕方ないわね、今回は私がサブリーダーとして報告をするから、二人は直接指名されて質問されない限りは黙っていていいわ」
「そ、そうか。すまねぇ、助かるぜ」
「ありがとージュディさん」
とりあえず今回はジュディが矢面に立ってくれるようだ。秋彦と優太はあからさまにほっと胸をなでおろしていた。
「……でも二人は慣れておいた方がいい。いつかは二人もこういう場に立たざるを得なくなるかもしれない」
「二人はぶっちゃけメディアへの露出はどう考えても避けられないと思うし、同感」
しかし茜と桃子が容赦なく追撃してくる。
……いや、分かっている。わかってはいるのだ。確かにかつてはただの一般人だった二人であっても、今は氾濫時に東京の共食い強化によって生まれたボスと戦い、さらに今度は初級ダンジョンを史上最初に突破した人物としてダンジョンウォッチを持っているものならば誰もが知っている人物になった。
正直メディアから追われるような存在になるのはもはや避けようがない。
今でさえネット上では割と有名になっているのだ。おかげで妙な二つ名をいただくことにもなってしまっているし。
「あー、うん、まあ、な。そうなのかもしれないけどな」
「……少しずつでいい」
「うん、ありがとう茜ちゃん」
………………………………
開始時間が刻々と迫ってきている。ギルドに備わっている会議室はすでにあらかた人が集まりきっており、参加者は開始を今か今かと待っている。
秋彦たちは、会議室の発表のする側の席に座っており、演壇近くにある机といすの所に座っていた。
ちなみに雨宮はまだ入室していない。最後の最後まで資料作成や各人物の応対を行っているらしい。
そしてそんな目立つところに座っていると、やはり視線を感じて少し落ち着かない。
「いやしかし、これだけ早く初級ダンジョンを制覇するチームが現れるとはなぁ」
「ええ、全くです。あそこにいる彼ら。全員まだ高校生だとか」
「なんとまぁ。高校生。しかしその高校生たちが、日本の未来を切り開いていくというのは、頼もしくありますが、心苦しくもありますなぁ」
「大人の探索者チームもそれなりに数はいますがね。やはり彼らはずば抜けているといえるでしょう」
「私の所にいる探索者たちで一番レベルの高い探索者達のレベルはどれ位だったかね?」
「15だったかと。あちらは男子が23、女子が21だと聞いております」
「なんと……確かレベル15の彼らでさえ、すでに突っ込んでくる軽自動車を真正面から止める程度の力はあったはずだが……それを上回るというのか……」
「メーツーによりますと、現在探索者達のレベルにおける中央値は13だそうです。氾濫騒ぎを鎮めたような人々は現在18辺りなのだとか」
「普通の探索者達からすれば一歩どころか数歩先を行っていると言えるな……」
「才気あふれておりますな。素晴らしい」
待ちきれないのか、どこかの企業から来たお偉いさんが隣り合った人と会話をしたりしている。一応ネームプレートは首からぶら下げていて、どこの誰なのかは分かるようにはなっているが、少なくとも秋彦にはなじみのない企業だった。
とりあえずひそひそと話をしているつもりなのだろうが、レベルの上がった探索者には丸聞こえである。
褒められているので悪い気はしないが、聞こえていることを指摘したい衝動に駆られる。ここはぐっと我慢だ。
「今回雨宮君は地方が魔物であふれかえっている現状を打破できるかもしれないと言っていたな……期待してしまうな」
「そうですね先生。そして、雨宮氏はそれを本気で、自信をもっていっているのでしょう。問題はそれが何かということですね。詳しい話はまだ聞いてはいませんが、防衛省幹部や自衛隊だけでなく、研究者なども見受けられる。ここまで人を集めてやっぱりだめそうでは済みませんからね」
「期待も高まるというものだ。地方と流通面が断たれてから、物価の値上がりがきつくてかなわん」
「先生としましては地元の有権者からもせっつかれていますからね……早く何とか手を打たねば、次の選挙にも影響が出ます」
「うむ、我々だけでなく、有権者にも生活というものがある。一刻も早い解決せねばならん」
「おっしゃる通りです」
別の所からちらっと聞こえた話の内容。どうやら地方の政治家も来ているらしい。
地方の政治家、それはつまり、魔物によって故郷を追われた人々が自らを支持する有権者である人だ。彼らにとっては魔物を排除し、地方都市の奪還はすることは急務であり、それを何とか出来れば、支持者からさらに強固な支持を得られるだろうし、逆にどうもできなければ、支持者が離れていくかもしれない。彼らの様な政治家にとっては、今回の集まりは藁をも掴む思いで来たのだろう。
「しかしまぁ、我々はおそらく、状況を打破するためのアイテムを研究してほしいっていうだけなんでしょうが、それにしてもちょっと人が多い気がしますなぁ」
「あれ? 聞いてないんですか?」
「何をです?」
「私もさわりだけしか聞いていないのですが、今回の集まりではあそこの子達が持って帰ってきた素材アイテムなる魔法の、そう文字通り魔法の素材を持って帰ってきたそうで、その中には我々の興味を大いに引くような鉱物があったりするらしいですよ。もちろん、状況を打破するアイテムの研究も大事なのでしょうがね」
「ほほう! それは興味深い。もともと彼らは、特に男の子二人は研究機関に多くの魔物をギルドを通じて売ってくれていますし、それだけでも今は研究対象に困らないほどではありますが、さらに研究できるものが増えるのか……胸が高鳴りますな!」
「私個人としては、是非ITなどの機械分野に転用できる素材であることを願うばかりです。あそこらへんは生物学、薬学的には興味深いものが多くとも、機械工学には琴線に触れないですから」
「まあまあ、今回は鉱物と布素材と聞いていますし、期待しましょうよ」
また別の所から聞こえてくる会話では、新素材の発見に伴う、利用法や、研究に対して思いをはせている研究者たちの様だ。
元々彼らはダンジョンというよりは、ダンジョンから出て来る未知の代物を研究することの方が興味深いらしく、それ以外にはあまり興味がないようだ。自分達ではどうしようもないと割り切っているだけなのかもしれないが。
こうして聞こえてくる話の内容は大体、ダンジョンから得たものでどうダンジョンの被害を埋め、ダンジョンから人々を守っていくかや、ダンジョン産のアイテムで新しい技術を得ることができるかどうかのどちらかだ。まあ、そのための会議なのだから当然といえば当然なのだろうが。
そしてさらにしばらくしていると、雨宮が会議室に入室し、演壇のマイクに声をかけた。
「えー、それでは皆様、大変長らくお待たせいたしました。これより、第一回、迷宮対策会議を始めさせていただきます!」
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次の投稿は9月22日午前0時予定です。
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