第八十四話 素材アイテム
累計PV数108万突破しました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「うおおおおおおおお!!!」
「つ、ついに……ついに……!」
大人二人、ハイテンションで叫ぶ。その表情は喜びであふれていた。
まあ当然だろう。
何せ聖域チョークの登場によって魔物の氾濫時にセーフティーゾーンが形成できるようになったのだ。そしてそれは施設だけでなく、道にも引くことができる。
それはつまり「安全な道」の形成につながる。そしてそれは、流通経路の確保にもつながると言う事にもなる。
産地と消費者のいる場が魔物であふれかえったことで断絶してしまっている今の日本が、たとえ細い道であったとしても、もう一度つながる事が出来る。それはとても重要で、とても歓迎されることだ。
確かに今までも物資の運搬はなされていた。しかしそれは探索者を雇い入れ、護衛につかせたり、魔物の出没が確認されていない空輸のみという運搬のコストが高くついてしまう方法だけだった。
おまけに探索者を雇い入れてのトラック運搬は、探索者に高い依頼料を支払っても、魔物が闊歩する地方都市を横切る時は常に命の危険が付きまとう。例え探索者を雇い入れても絶対なんてことはないのだ。必然と業者も嫌がる。
そうなると、優先されるのは食料などが主になり、生活用品は必然と後回しになる。また、これは食品にも言える事だが、輸送にさらに料金がかかることで物の値上がりにつながり、何もかも必然的に買いづらくなってしまっている。
しかし聖域チョークにより道路の安全が確保されるなら、探索者を雇わなくても安全に陸路での輸送ができるようになる。それに死の危険が無くなることで、今まで嫌がっていた業者も仕事を請け負うようになるだろう。それはつまり輸送業者の数もダンジョンが出現する前まで回復すると言う事だ。
更に海洋の守護像。これを船に載せると、船が魔物に襲われなくなる。
これは非常に大きい。
漁業という観点からもそうだが、海運の復活、外国からの海運が期待できるようになるのが最大の利点だろう。
日本は島国である以上、海外製品が入ってくるのはほとんどが海運だ。
一年の内、重量ベースでは全体の99.7%、金額ベースでも76.7%が海上輸送で行われている年もある程には海運は使用されている。
これは一般的に、海上輸送の方が航空輸送より輸送費が安く、重量が重くて単価の安いものは、海上輸送を採択されることが一番の理由と言えるだろう。
しかも石油や液化天然ガス(LNG)、石炭、鉄鉱石などの資源をほぼ輸入しているし、小麦や大豆など輸入に頼っている食料品もあり、これらは皆重量が重くて単価の安いものだ。
日本は一年で大体9億t前後も物を貿易によって輸入しているのだ。日本が海運を封じられるというのはかなり問題になっていたのだ。
海が魔物に支配されたことで海運が途絶えて約一月半。
今はまだどれも備蓄でなんとかやりくりで来ている物の、早ければ2.3か月。国民全体に節制を求めても半年が限界と言われていた。
しかしここで海運が復活し、外国から物資を輸送できるようになれば、日本はかなり元の姿に近い状態を取り戻すことができるだろう。
もちろんその後は、海外に対しても協力をしなければ完全に元通りと言う事にはならないだろう。しかしようやく世界にダンジョンが現れてから、ダンジョンと共存、適応出来たといえるようにはなるだろう。
「取り上げる様で本当に申し訳ないが、この二つはギルドで買い取らせてもらうよ?」
「分かりました。査定結果、楽しみにしています」
「任せてくれ。前例のない事ではあっても、コレの有用性は明らかだ。特に守護像の方はいくら出しても買うという海運業者は多いだろう」
「そうでしょうね、私もそう思います。この場に父が居たら、チョークと合わせて何も書いていない小切手渡すでしょうし」
はぁ、とため息をつくジュディ。本音を言えば欲しかったのだろう。どうやら売りつける当てもあったらしく、残念そうな顔をしている。
「とりあえずこれの事も含めて明日は有識者たちで協議を行うから、君達もそれに出席してもらうよ。当事者がいないと話にならないからね。学校には欠席届をギルドから出すから、君たちは明日まっすぐギルドに来てくれればいい」
「あ、はい。わかりました」
とりあえず明日は学校に出られないことは確定の様だ。皆勤賞を失うことになるが仕方ない。生活が懸かっているのだ。残念だが諦めよう。
「ところで、俺としてはむしろ新しいスキルによって素材を加工できるようになった事と、どのような素材があるのかが興味あるのだが」
矢場が話を変えてきた。
確かに素材については、さっさと先に進むためにアナライズもせずにさっさと持ってきたので、自分達も中身を把握していない。
「そういえばそうですね。ちょっと見てみましょうか」
優太がそう言って、素材アイテムを引っ張り出す。
鉱物素材はそれぞれ金、銀、白、黒の四種類。布系素材はそれぞれ赤、青、黄、白の四種類あった。どれもそれぞれに魔力が込められており、ただの鉱物や布でないことが分かる。ただし、白い布だけからはなにも魔力を感じない。
「じゃあお願いね」
「はいよー、『力よ!』アナライズ!」
まずは金色の鉱物だ。
【ヒヒイロノカネ】
≪鉱物素材。鉱物としては少し柔らかい傾向にあり、武器や防具の主な素材には向かないが、熱関係が優秀な超高温材料であり、炎魔法との親和性が非常に高い≫
「だってさ」
「ふーん、僕の装備の素材に使えないかな?」
「そうね、でもどれくらい優れているかに寄るけど、既存のエンジンや熱を使った発電器官なんかにも幅広く使えるでしょうし、相当有用なのは間違いないわね」
次は銀の鉱物だ。
【ミスリル銀】
≪鉱物素材。鉱物としては銀並みの重さ、硬さをしている。魔法との親和性が非常に高く、他の鉱物には刻みにくい魔法文字も、ミスリル銀なら簡単に刻むことができるので、魔法を使う施設などの建材としても優秀。魔力に応じて反応も変わるので、魔法戦士の装備における基本鉱物となる≫
「成程。こりゃ俺らにしてみりゃいいね」
「これは完全に前衛で防御力と魔法を両立させたい人向けね」
「……後衛の防具には向かない。けど、魔法と親和性のある素材。これも価値が高い」
今度は白の鉱物だ。これは持ち上げると、秋彦でも重いと感じる程度位は重い。
【オリハルコン】
≪鉱物素材。鉱物としては最高級の頑丈さを誇り、これで作られた武具、防具は最高級の物になること請け合いである。ただし、相応に重量があり、加工も難しい≫
「こりゃあ完全に武器用の素材っぽいね、とりあえずあたしじゃ持てないし」
「でもここまで重いと逆に困るわね。武器にしても相応に肉体力が求められるわ」
「だよなぁ、俺がこの延べ棒持って重いって思う位とかどんだけだよ」
「……前衛でも更に鍛え上げないといけない」
最後は黒の鉱物だ。
【アダマンタイト】
≪鉱物素材。鉱物としては少し柔らかい傾向にあり、武器や防具の主な素材には向かないが、電気系統が優秀な超電導素材。風属性の雷との親和性が非常に高い≫
「……これはまずい。今まででトップクラスに利用価値が高い」
「あ? そうなのか?」
「……実際に効率を見てみないとわからないけど、既存の電子電気機器が軒並みガラクタになりかねない」
「え、マジで?」
「マジよ秋彦。魔法が関わっている以上既存の鉱物のそれを大幅に上回るのは予想できるでしょ? 降ってわいたトンでもレアメタル。いったいどれほどの価値になるのか、もはや想像もつかないわ」
どうやらこれに関しては秋彦の想像よりもはるかにすごい物だったようだ。
「これは、鉱物だけでもすでに途方もない価値ですね」
「ああ、しかも第二階層ボス撃破で素材は必ず手に入ると言う事らしいし、初級突破者が増えれば、鉱物資源の回収ももっと容易になるやもしれません。これは凄い事ですぞ」
「え、えーっと、正直お腹いっぱいになりかかってるけど次行きまーす。『力よ!』アナライズ!」
雨宮と矢場も驚きに目を見開いているし、おそらくそうなのだろう。そして今後の素材回収の算段に付いて話し合い始めていた。
次は布系素材を見てみる。
まずは赤い布だ。
【聖火布】
≪布系素材。聖なる炎を丹念に糸に変え、丁寧に織って布に仕立て上げた物。炎によって燃えず、炎魔法との親和性が非常に高い。耐久力もそこそこある反面、水につかるとただの布同然になる。破れたら火にくべると元に戻る。備考:魔布(魔力的な力があり、炎属性、水属性、風属性、土属性のいずれかに対し共鳴し、力が強くなる)≫
「魔布と来たか。やっぱりただの布じゃねーなこれ」
「うーん、面白いわね。炎に対しての耐性が優秀なのね」
「こういうのもあるんだね、残りの物も普通じゃないんだろうね」
次は青い布だ。
【夜闇の布】
≪布系素材。暗き夜闇によって具現化した魑魅魍魎を、魔力で糸に変えて作られた布。夜にこの布を被ると、姿が闇に溶けて見えなくなる。闇属性との親和性が非常に高く、夜になると闇属性の魔力と防御力が上がるが、太陽が出ている時はただの布になる。備考:霊布(霊的な力があり、光属性、闇属性のいずれかに対し共鳴し、力が強くなる他、長い間使用すると霊能力を身につける時がある)≫
「霊布ね……こりゃ曰く付きって言うかなんていうか……」
「霊能力を得る時があるって」
「やだやだやめてよあたしそういうの嫌なんだって!」
桃子が泣きそうな声を出したので次に行こう。今度は黄色の布だ。
【妖精の落雷布】
≪布系素材。妖精秘伝の技によって作られた、落雷を素材として作られた布。電気を常に発しており、風属性の攻撃を受けると雷として吸収する。風属性魔法を使えない人が頭から被ると感電する。備考:妖精布(妖精が作り上げた特殊な布。作った妖精によってさまざまな特性を得る)≫
「これは……つまり、その他の様々な効果をカバーするカテゴリーなのか?」
「でしょうね。しかし妖精か。妖精商店に行けば買えないかしら?」
「……ダンジョンのアップデートによって品ぞろえが変わっているかも。後で見に行く」
「じゃあ最後は白い布ね。でもこれ、魔力を感じないし、ただのシルクっぽい気がするんだけど……」
「まあ一応見てみようぜ」
最後は白の布だ。ジュディ達女子陣はそれが何なのかは察しがついているようだが一応アナライズをしてみる。
【高級シルク布】
≪布系素材。高級な絹糸を贅沢に布へと仕立て上げた物防御力はあまり高くないが、手触りがとてもいい贅沢な一品。備考:人工布(人間が作り上げた布。魔力はなく、機械の手でも作り上げられるので大量生産に向いている)≫
「やっぱただの絹の布だって」
「やっぱり?」
「この手の物は人工布って言うカテゴリーになるんだな」
「……まさかそれを伝える為だけにこれが?」
「どうなんだろうな?」
とりあえずこれですべての素材を見終えた。今日は一旦終わりにし、明日雨宮が有識者を集め、その上で会議を行うので、現状報告のため出席することになった。
なのでとりあえず今日は一旦終わりだ。学校には素材の解析を行っている間に連絡し、許可をもらったそうだ。とりあえず解散と言う事にはなったが、今日はまだまだ終わらない。
この後は優太の実家で、お楽しみのオーク肉料理の試食会だ。
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