第八十三話 熱烈な出迎え
累計PV数105万突破しました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「いや、皆ごめんな」
「もういいよ、衝動的に戦わずに済んだと思う事にするよ」
改めて全員に謝る秋彦。
優太の言葉に大きく頷く他のメンバー。やはり思うところはそれぞれにあったらしい。しかし感情的に納得いかないからと言って突っかかっても、結局どうしようも出来なかっただろうし、むしろ、魔物の卵をもらえた辺り、秋彦の行動は正解だったとさえ思える。
「さて、とりあえず卵取っちゃいましょう」
「そうだね。モンスターテイマー、正直ワクワクする!」
「……モンスターテイマーの取得は不可避」
女子陣はむしろ魔物の卵に夢中の様だ。
モンスターテイマー、魔物を使役するスキル。それを持って魔物の卵を孵化させると、その魔物は自らを親と思い、自らの忠実な僕、あるいは家族になる。
テイマーは、使役した魔物が、倒した魔物の経験値の一部をもらえることもあり、正直かなりの強いスキルだ。
しかも最初の相棒がダンジョンを製作した連中が渡した卵から出てくる魔物。期待も高まると言う物だ。
とは言え卵の状態ではどれが何の卵なのかはわからない。中からどういう魔物が出てくるかは未知数だ。
ここは交換など一切せずに、受け取ったものを育て上げることを決め、とりあえずさっさとモンスターテイマーのスキルを取得する。20万DPというとてつもない買い物だが、今回手に入れたDP分もあって迷わず手に入れた。
そして五人とも、それぞれ目の前にある卵を手に取る。
すると妙な違和感に襲われた。だが、今の自分たちならこれが何なのかが分かる。
「うお!?」
「きゃあ?!」
「あ、これ……」
「まさか、魔法力吸ってる?」
「……っ、おそらく」
魔力の比較的低い前衛組は驚きに声を上げるが、魔力が比較的高い後衛組は割と冷静である。
どうやらこれは手に取った人間の魔力を吸う事で、エネルギーを手に入れ、孵化の為の温めになるらしい。
「これ、魔法使いづらくならねーか? 俺かなりつらいんだけど」
「僕はそこまでじゃないけど……モモちゃんと茜ちゃんは?」
「あたしもそんなでもないねぇ」
「……私も問題ない。魔法力の負担はきついけど、私は基本的に魔法を使わないし」
どうやら後衛組は特に問題ないらしい。となると一番つらいのは前衛で強化魔法を飛ばしまくる秋彦くらいか。
「よし、宝箱の中身も回収したし、とりあえずいったん帰るか」
全員で頷く。
突破自体はそこまできつくはなかったものの、新スキルの開放やダンジョンの凍結期間等、考えなければならないことは山の様にある。夜にはオークによる豚骨チャーシュー麺やチャーハンの試食会もあるのだ。さっさと帰って、ギルドに報告せねば。
おそらくギルドも、自分達がダンジョンを制覇した事実は掴んでいるだろう。きっと話は聞きたいはずだ。時計は現在18時。試食会の開始が20時30分である事を考えても2時間半は費やすことができる。とりあえずさっさと雨宮さんに報告してしまおう。
早速帰還石を使い、ダンジョンの外に出る。
………………………………
ダンジョンの外、と言っても改札の部分だったのだが、予想外の光景が待っていた。
戻ったと思ったら、歓声が沸き起こったのだ。人がたくさんいるし、拍手の音も聞こえる。
「すげー! 初級ダンジョン突破おめでとうー!」
「新スキル開放ありがとう!」
その一言を皮切りに、あちこちでおめでとうとありがとうのコールが嵐の様に巻き起こった。
そういえば自分たちが初級ダンジョンを制覇したことは、ダンジョンウォッチの放送によってダンジョンウォッチを持っている人間はみんな知れ渡ることになったはずだ。だからそれは不思議ではないのだが、なぜここに自分たちがいる事が分かったのだろう?
などと考えていると、人々の中から見慣れた人が顔を出した。
「やぁ、初級ダンジョン制覇おめでとう!」
「やあ、久しぶりだな。今日はオフだったのだが、思わず急行したよ」
「あ! 雨宮さん! それに矢場さんも!」
東京の探索者ギルドのギルドマスターである雨宮が直々にやって来ていたのだ。
そして以前自分を勧誘してきた矢場もそこにはいた。
「とりあえず迎えに来たよ。話を聞かせてもらわないといけないしね」
「うむ、その話、俺も興味がある。是非とも聞かせてほしい」
「あら? 雨宮さんはともかく矢場さんも?」
「ああ、まあそこら辺も含めてね、とにかく行こう。ここじゃ話できないし」
ジュディが矢場も話を聞きたいという言葉に疑問の声を上げたが雨宮は矢場も含めて話をするつもりらしい。とりあえず雨宮がいいのならばまあいいのだろう。本当はテレポレーションを使いたかったが、これほど自分たちに人が来ているのにテレポーテーションを使うのは気が引けたので、今回はとりあえず電車でギルドまで帰ることにした。
………………………………
「いやー、みんな大人気だねー」
「……そりゃどうも……」
ギルドマスターの部屋、防音加工のされたこの部屋に入ってようやくレインボーウィザーズの五人は一息つけた。
ここに来るまでに同業の探索者からはものすごい勢いで質問攻めにあったのだ。やれ、ここのダンジョンのレベルや攻略のしやすさ、宝箱の入っていた物の中身等、一挙手一投足さえ質問攻めにしかねない勢いだ。
まあ無理もないのかもしれない。制覇されたダンジョンとはすべての情報が出そろったダンジョンだ。宝箱などは先駆者がとりつくしていても、しばらくすれば別の宝箱が出てきたり、今あるものだって取りこぼしがあるかもしれない。
それを除いたとしてもレベリング等、他にもやれることは山ほどある。
今後おそらくこのダンジョンは探索者がレベリングの場として長く活用されることになるだろう。ここが入門探索者から初級探索者に変わるための登竜門として長く愛用されるかもしれない。それはすなわち、ここを起点に探索者達の経済が回る可能性すらあるのだ。
東京駅は、ただ交通の便がいいだけにとどまらない場へと変貌していくだろう。
そしてその探索者達の元締めともいえる関東探索者ギルドのギルドマスター雨宮と、レインボーウィザーズの面々、そして何故か矢場が、改めて初級ダンジョンの具体的な詳細を話すことになった。のだが……
「ところで、何故矢場さんがここにいるんですか? てっきり今回は我々レインボーウィザーズと雨宮さんとの話し合いになると思ったんですが……」
「おや、俺がいては出来ない話があるのかい?」
「そうではないですが、ここに普通に通されていることも気になりまして」
この場にしれっといる矢場に疑問を感じ、矢場に話を振る。聞かれて困る話はしないつもりだが、なぜさも当然の様にこの場に顔を出しているのかは気になったのだ。
「うむ、俺は今このギルドの子飼いの探索者チーム、【ダンジョンポリス】の一つである【万鬼抹消】のリーダーなのだ。主にダンジョンの攻略より、探索者同士の諍いの仲裁や、落伍者達の捕縛、逮捕を中心に活動しているチームだ」
聞けば、最近はダンジョン騒動により、治安が悪化している中、探索者の地位が上昇するにあたって、驕りが探索者同士の衝突を生んだり、落伍者と呼ばれる、探索者として大して強くもないのに、レベルが上がったというだけでさらに弱い弱者をいたぶり、搾取しようとする探索者失格と言える存在を逮捕するために、ギルドが生んだいわば「探索者用の警察」と言えるようなチームを【ダンジョンポリス】というらしい。
「君らの様な超有名にして最強たる探索者達がいても、身の程をわきまえない馬鹿はいたりするのだよ」
「そういうのを捕まえるための、逮捕権を持つ探索者をダンジョンポリスといって、特に、万鬼抹消はそのダンジョンポリスの筆頭と言える実力を持っているんだ」
「そう、つまり、この場にいる事はなにもおかしくないのだ。ダンジョンポリスのまとめ役として俺はここに出席しているのだ。いいね?」
成程、それなら納得だ。レインボーウィザーズは全員頷く。
その反応に雨宮と矢場は大いに頷き、改めて雨宮は万年筆を取った。
「さて、それでは改めて報告してもらおう。君たちは初級ダンジョンの踏破で一体何を得、何をみた?」
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次の投稿は9月10日午前0時予定です。
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