第八話 ダンジョンボス
累計PV1000突破ありがとうございます!
まさかこんなに早くここまで来ることができるとは……感激です!
これからもよろしくお願いいたします!
同日、昼の2時、二人は再び巨大な扉の前に来ていた。
先ほどよりもあちらこちらにかすり傷の後があるのはあの後もうすこしだけ敵と戦ったからだ。
「さて、飯もしっかり食って、蝙蝠を十匹そこそこ、蟻とマリモンは数え切れん位ぶっ殺し続けてなんか不思議と体の調子もいい。ちょっと挑んでみるか」
「う……うん……」
「ビビるなよ。仮にこれがボス戦だったら普通に魔法解禁だ。攻撃しこたま食らわせて、速攻片付ける。攻撃が全く効かなかったら逃げる。モンスターとの戦いも蟻とマリモンがあんだけ出てきて、蝙蝠が10匹そこらしかでなかったことを考えると、あれがここで普通に出てくるモンスターとしては最強なんじゃね? だったら行けるって」
「そ、そうかな……」
「自信を持てって。さあ、行くぞ!」
両手で勢いよく扉を開けると、そこにはやはり大きな宝箱がおいてあり、他には何もなかった。
が、秋彦たちは油断することなく周りを見回す。もうボスが出てくることを前提で考えている。
そして、やはりその予感は当たっていたらしい。部屋の中央まで歩いた所で、何かが上から落ちてきた。しかも、とても大きい何かが。幸い秋彦達の頭上ではなかったので問題はなかったが、落ちてきたものの非常識さ、非現実さに、改めて驚愕した。
「な、こ、こいつは……」
「蜘蛛ぉぉぉ?!」
蜘蛛だった。しかし、もはやこれを蜘蛛と言って良いのかと問われれば首をかしげざるをえまい。
まず第一に非常識にデカい。秋彦なんて目じゃない。まるでどこぞの狩りゲームに出てきかねない程だ。
それと蜘蛛は目がいくつかあったと思うのだが、この蜘蛛、目が一つしかない。しかもまるで人間の目のような目だ。緑色をしたそれが口の上にでかでかとあるだけ。口こそ蜘蛛のままみたいだが。後、前足の部分が鋭利な刃物のようにギラリと光った。遠目でこそ蜘蛛だが、正直これを蜘蛛とは思いたくない。
「出たああああ!?」
「ビビんなよ、ほら来るぞ親友!!」
秋彦が声を張り上げると蜘蛛は秋彦の前に立ち、前足を振り上げていた。
「親友、下がれ! 後ろで魔法をぶちかませ!」
「は、はいいい!!」
「うおっと!?」
指示を出した隙を突かれ、相手の攻撃を許してしまう。
間一髪でかわしたものの、先ほどまで自分がいた場所を見ると、蜘蛛の前足によって無残にえぐれている。喰らったらただでは済まない。
改めて背筋が冷えるのを感じた。
「舐めるなよ……『力よ、我が命に従い、槍に宿れ』パワー! からの、お返しだ!」
自らを奮い立たせるように、強化魔法パワーを己にかけ、素早く接近し、相手の手が届きにくい腹近くに潜り込み、槍の一撃を食らわせる!
そしてその勢いのまま蜘蛛の背後を取る。槍の刃の部分が緑色の体液で汚れている。様子見程度の一撃ではあったが正直浅い。
「『炎よ、我が命に従い、我が敵を焼け』フレイム!」
ここでようやく優太の炎攻撃が入る!
正直、相手が蜘蛛だから効いているかの判別がつきづらいが、飛んで火にいる夏の虫なんて言葉があるんだ。虫が炎を苦手としているのは当然のはず。というか炎に焼かれて平気な生き物など、そう居ないだろう
「や、やった!」
と、叫んだのもつかの間、今の炎に反応したのか蜘蛛は天井に、ジャンプで張り付き、そして腹の先端をこちらに向けてくる。
なにをしようとしている? 向けているのは腹の先端にある穴。
蜘蛛、腹、とそこまで考えた時、秋彦は蜘蛛が何をしようとしているのかがはっきり分かった。
そう、それはつまり……糸だ!
先端の穴がひくひくと動いた。そして蜘蛛は腹の先端に空いている穴から蜘蛛の糸を放ってきた。狙いは……優太だ!
先ほどまでのやり取りで機動力に長ける前衛の秋彦ではなく、後ろで高威力の魔法を放った優太に狙いをつけてきたのだ。優太の方は予測ができていなかったらしく、見事に絡まる。
「わ、わああああ!!」
「親友!!」
絡まったことを悟ったのか蜘蛛は糸を手繰り寄せ始めた。このままでは……優太が食われてしまうだろう。
「やっべ、まてこの! 親友を放せ!」
しかし予想以上に蜘蛛が糸を手繰り寄せるスピードが速い、走っても追いつけない。
秋彦はとっさに賭けに出ることにした。
「……『力よ、我が命に従い、槍に宿れ』パワー! だああああああ!!」
もう一度強化魔法をかけた槍を、手繰り寄せられている糸に投げた!
もうこれしかない。走って間に合わないというなら投げて切るしかない。幸いこの槍は投げる事にも適した大きさだ。この大きさなら普通に投げられる。
蜘蛛に向かって投げてもよかったが、その一撃でやられなかった場合がまずい。武器は敵に刺さったままで、実質失うだろうし、優太は食われる。
ならば糸に投げたほうがまだまし、当たっても切れない可能性はあるが、それならそもそも優太はすでに手遅れだ。
最大の懸念は当たるかどうか。まさにイチかバチかである。
槍は、優太が蜘蛛の口元に来るあと少しというところで、蜘蛛糸を……
切断出来た!
天井近くから落ちる優太を下から待ち構える。それくらいにはなんとか間に合い、無事キャッチ成功。
「危なかったな親友!」
「し、死ぬかと思ったあああ」
「しかし、野郎め……」
蜘蛛は今の隙に地面に降りてきており、再び秋彦の目の前で前足を振り上げていた。
赤くぎらついた一つ目が自らを見下ろしている。
だが、秋彦の脳裏には絶望感は微塵もなかった。握りしめた拳から血が出ている。つまり。
「よくも親友をやりやがったなあああ!」
完全に切れていた。
身の丈の二倍近くもある化け物が今まさに攻撃を仕掛けようとしている中で、その怒りは蜘蛛から逃げるどころか、蜘蛛に立ち向かわせていた。
自分でも驚くぐらいの跳躍力で、秋彦は蜘蛛の顔面、というか目に全力の拳を叩き込んでいた。
すると、蜘蛛は今までにない反応をした。ごろごろと転がり、足を痙攣させている。まるで苦しみに悶えているかのように。
「そうかあいつ弱点は目か。って、親友大丈夫か」
「あ、秋彦……これ、槍、ありがとう。近くに転がってたから、糸切った」
「おっと、すまねぇ。親友、あいつの弱点掴んだぞ、目だ」
「わかった! 『炎よ、我が命に従い、我が敵を焼け』フレイム!」
それを聞いて優太は身悶え終わった蜘蛛の目に炎をぶつける。
しかし炎は目にあたる前に前足に払われ、当たらない。
「あ、当たらない!」
「ガードが固い? でもさっきは……」
そして蜘蛛は再び天井へ飛んだ。
「また天井に……!?」
天井に飛んだことは驚くべきことではない。が、飛んで狙いをつけた後に起こった変化が見逃せなかった。
蜘蛛が狙いを定めている間に、蜘蛛の一つ目が緑から赤に変わっていったのだ。
そういえばさっき目を殴ったときのあいつの目の色は何だった?
そこまで考えて、秋彦はもう一度指示を出す。
「親友今だ! 奴の目に向かって炎を! あいつの目が赤いうちに!」
「え?! わ、わかった! 『炎よ、我が命に従い、我が敵を焼け』フレイム!」
秋彦の指示に従い、優太が放った炎は……
見事に目にあたった!
蜘蛛はあまりの痛みに天井に張り付いていられなくなったのか天井から落ちてきた。
「チャンスだ!」
「うん!」
「「うおおおおおおお!!!死ぃねぇぇぇぇええええ!!!」」
秋彦と優太はこの隙にすべてをつぎ込むつもりで攻撃を仕掛ける
優太は炎魔法で魔力の限りを尽くして蜘蛛に炎をこれでもかと言わんばかりに放ち、秋彦は全力で走り寄り、先ほどの拳を浴びせたときのように跳躍し、パワーで強化した槍をもって全力で蜘蛛の頭を突き刺した!
その一撃を受けると蜘蛛は大きく震え、そしてひっくり返った。しばらく足を痙攣させていたが……やがて動かなくなった。
「ぜぇ……ぜぇ……もう……だめ……」
「はぁ……はぁ……勝った……のか……?」
「そうさ! 君たちは勝ったんだ! おめでとう! よくぞこのダンジョンを制覇してくれた! 君たちはこのダンジョンの、この世界初のダンジョン制覇者になったんだ!」
後ろから突然かけられたその言葉に二人同時に振り向く
そこには白いローブを深くかぶり、杖を持った女。ライゾンがいた。
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