第七十七話 東京駅ダンジョン最下層ボス(前編)
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「やっと見つけた……あったぞボス部屋!」
「おお……やっと来れたね……」
途中でトラブルがあったものの、何とか初級ダンジョン最後のボスへとたどり着いた。逆十字架が彫られ、悪魔の像が両端に置いてある扉の前に立つとそれがよくわかる。
とりあえず、この階層のボスならば、間違いなく状態異常を駆使して戦ってくるはず。準備は念入りに行わなければいけない。最後の階層なのだ。持ってる道具をすべて使うくらいのつもりでいよう。
確認をするべく、ジュディが口を開く。
「とりあえず、最終チェックするわよ。まず状態異常に気を付ける事が一番」
「うん、で、前衛は向かってくる魔物の足止め。攻撃は喰らわないように牽制と回避に専念してね。ポーションは持った?」
優太が聞くと、秋彦があらかじめジュディに貸してもらった小さなマジックバッグを開き、確認する。
「問題ないぜ、毒、暗闇、眠りの基本セットと、他の石化や火傷、凍結に麻痺の指輪もしっかりある」
「よし、これでどんなのが来てもある程度対応できるな」
「……聖水を飲んだら行きましょう」
「あ、そうだった。これ飲むと、状態異常を防ぐ時あるもんな」
全員頷く。景気づけに神秘の水差し製の聖水を飲み、そして前衛組が扉を開ける。すると、そこは西洋風の墓が大量に並んだ場所だった。しかもどれも苔が生え放題だったり、風化していて一部が崩れていたりとおどろおどろしさが凄まじいことになっている。
そんな部屋だが、中心部は墓の無い一角があり、そこでボスと、その取り巻きが待ち構えていた。
パッと見た感じはゴーストの様だが、ゴーストメイジはどこか全体がぼやけていたが、こちらはハッキリと見える。フードを浅くかぶった容姿端麗な男だ。だが、その周りに黒い靄のようなモノが漂っていることに嫌な予感がする。
男が手を上げると取り巻きも武器を構え始める。
「こいつも手下を呼ぶタイプか? それとも最初からいたってだけ?」
「なんにせよこれは良くないね。炎の全部乗せで焼いちゃおう!」
「……ストロングもつけてやるから灰の一欠けらも残さないようにな……」
「うん! ありがとう!」
うんざりする秋彦と対照的に、優太は興奮気味だ。今度は自分があの大火力を撃てると思ったら興奮して来たらしい。ちょっと引きつつも追加の強化もつけてやろう。
「はぁ……今回前衛は役に立てそうにないわね……」
「いやいや、前衛が壁になってくれるから安心して魔法を撃てるんだって」
「……頑張って」
そういって送り出されたが、今回は本当にやれることがあまりない。向こうの取り巻きは見慣れた三体のアンデッドモンスターが二匹ずつだ。動きはそれほど早くないし、このレベルならストロングも込みなら一瞬だろう。
だが、指揮下に入ると強化されるのかもしれない、すぐにボスを調べてその上でどう動くか決めよう。
「じゃま、いつものように。『力よ!』アナライズ!」
まずはいつものようにボスにアナライズをかける。データはこのように出た。
名前:レイス・フェーラー
レベル25
肉体力:0
魔法力:2000
戦闘力:3000
有利属性:闇
不利属性:光
使用魔法属性:闇Lv12
スキル
魔法効率化Lv3:魔法を効率的に使用することで、消費魔力を抑え、威力を上昇させる。
魔力制御Lv3:範囲攻撃魔法を行う時、味方を巻き添えにしない。
高速詠唱Lv3:(【パッシブ】魔法の詠唱を早める)
アンデッド:(【モンスタースキル】【パッシブ】すでに死んでいる身体なので、呪いや即死魔法で回復や復活し、回復魔法でダメージが入る)
バニシングボディ:(【モンスタースキル】【パッシブ】幽体であることから物理攻撃が通用しない)
瘴気発生:(【モンスタースキル】【アクティブ】強力な闇の魔力が呪いをはらむ空気である瘴気を生み出す。瘴気に触れた物は呪われ、瘴気を吸い続けると状態異常【呪い】状態になる。瘴気を発生させている間はそれ以外の行動はとれない)
瘴気吸収:(【モンスタースキル】【アクティブ】強力な闇の魔力が呪いをはらむ空気である瘴気を自らに取り込み、パワーアップする。呪われた物や場の呪いも吸い取り、力にする)
禁断の呪法にて強大な力を手に入れたが、代償として体を失った。
闇との親和性が非常に高く、実体のない体は常に瘴気で覆われており、対峙するだけで常に呪われる危険がある。
「最後の敵が持ってる状態異常は呪いか……でも召喚しないのか。ならまだ楽か」
「のんびりしないで、来るわよ!」
考察する余裕もないままに開戦となった。
ゾンビやスケルトンの足止めは一旦ジュディに任せ、秋彦は、兎にも角にもまずは絶対にやらねばいけない事を行うとしよう。
「いらっしゃい! ここから先にはいかせないわ!」
「悪い、一旦そっち頼む!『力よ!』サイレント!」
少しジュディから距離を置いて、ゴーストメイジへ近寄る
そしてサイレントだ。まずはゴーストメイジ二体に仕掛ける。白い靄がゴーストメイジの頭にかかる!
サイレントは掛けた相手を状態異常の【沈黙】という、魔法が使えない状態にする魔法だ。魔法使い相手だと外れる可能性は割とあるが、うまく嵌ればゴーストメイジは一気にただの案山子になる。
まず一回目は、片方は成功したが、もう片方は失敗した。靄が晴れても片方の口は動いていた。
お返しと言わんばかりに向こうもブラインドを秋彦に掛けてくる。
黒い靄が秋彦を包むが、聖水の効果でなんとかかからずに済んだ。
一回目で片方沈黙状態にできたのは幸先がいいが、正直あまりもたもたしているとジュディがもたない。ジュディは今四体のゾンビの攻撃を凌いでいる。しかもどういう訳かやたら動きがいい。こいつらもボス仕様なのだろうか?
後衛組もジュディを援護して魔法攻撃を放っているから何とかなっているが、あまり時間は掛けていられない。
正直に言うといきなり速攻をかける手もあった。が、はっきり言って、状態異常という状況をひっくり返されかねない物を放置したくなかったのだ。向こうのボスも瘴気を放っているからか行動してこない以上、今不意に仕掛けられるとしたらゴーストメイジのみだ。
出来るなら確実に無力化しておきたい。
「畜生、これで決まってくれ! 『力よ!』サイレント!」
二回目のサイレント。今度は……成功だ!
「よし! 『力よ!』ハイパワー! 『力よ!』ストロング!」
ゴーストメイジが沈黙状態になった事を確認する。ゴーストメイジはオロオロするだけで何もしようとしなくなっている。
確認したら、すぐに秋彦は優太にハイパワーで力を与え、ストロングをかけた。
優太は既にファイヤーエンチャントをかけていたらしく、準備は出来ていたようだ。
「ありがとー!」
「じゃあこっちも!『炎よ、我が命にてかの物に燃料を与えよ!』ヒュエル!」
待っていましたとばかりに桃子がヒュエルを唱え、次の炎攻撃を強力にするために準備をした。
さあ、これで準備が整った。最大火力の出番だ!
「いっくぞー!『炎よ!』ファイアボンバー!」
優太が唱えているので今度は安心していられる。
形成された炎の塊を見て、秋彦は、優太の【爆破狂】の異名はこの先絶対に返上できないであろう事を思いつつ……魔物と一緒に炎に飲まれた。
しかしここで予想外の事が起こった。
爆発の中で、ゾンビウォーリアーが焼き切れておらず、ジュディに襲い掛かっているのが見えたのだ。やはりボス仕様なのか、しぶといらしい。
しかし、ジュディも普通に攻撃を防いでいたので、秋彦は槍で二体のゾンビウォーリアーを刎ね、今度こそ業火の燃料にしてやった。
炎が晴れると、そこには味方以外誰もいない。敵はすべて燃えた。秋彦達の完全勝利だ。そのはずだったのだが……
「ああ?!」
「え!?」
「嘘……」
「冗談だろ……?」
「……なんで……」
驚くべきことに瘴気を生み出していて動かなかったレイス・フェーラーは全くの無傷だった。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の投稿は活動報告に記載した通り、8月23日午前0時予定となっております。
経過といたしましてご報告なのですが、PCが無事届きました。後は放出した分の書き溜めを補完を行うだけです。
補完が済み次第、今まで通りの3日間隔に戻していきますので、あともうしばらくお待ちください。
楽しみにされている方々には、しばらく御面倒、御迷惑をお掛けすることになりますが、よろしくお願いします!




