表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/385

第七十六話 状態異常を受けるという事

累計PV93万突破しました!

これも皆さまからのご愛顧の賜物です。

これからもりあダンをよろしくお願いいたします!

「お、おいおい後衛組! 今なにした?! 戦闘力2000越えが消滅したぞおい!」

「というより何で優じゃなくてモモが撃ったの?! 喰らっちゃうかもしれないじゃない!」


 強烈な炎に焼かれ、消し炭よりもひどいほどに焼かれた三体のアンデッド。最早残骸がほとんどない。

 というかあれは優太ではなく桃子が放っていた。魔力制御Lv2の桃子が、である。

 20%の確率で味方でも被弾する魔力制御Lv2の桃子が。前衛組が逃げねば38%の確率で前衛の片方が被弾していたのである。戦闘力2000が一撃で消し飛ぶ威力にである。危ないどころの話ではない。殺す気か。


「ご、ごめんごめん! そんなつもりじゃなかったんだよ! まさかここまで威力が出るとは思ってなかったんだ!」

「ぼ、僕がファイヤーエンチャントとフュエルを使って、ファイアボンバーを撃ったらどれだけ威力出るか気になったから試してみようってことになったんだけど、威力がどれだけ出るかわからなかったし軽い気持ちでモモちゃんにやって貰っちゃって……」

「……私達の見積もりが甘かった。ごめんなさい」


 赤べこの如く何度も頭を下げる後衛組。まああんなものを巻き添えが出る可能性のある桃子が撃とうとしたのだ。魔力制御を鍛える目的ならば、前衛が被弾を覚悟で巻き添えにされることはあるが、そういう時はたいてい威力をある程度抑えるし、その旨はちゃんと事前に言っておく。

 今回は事前連絡もない上に、威力が明らかにデカすぎる攻撃を放ったのだ。これが魔力制御Lv3という味方への被弾は確実に抑えられる優太が放ったのならよかっただろう。だが今回はそうじゃなかった。いくらここまで威力が出ると思っていなかったとしてもうかつだったと言わざるを得ないだろう。

 

「死ぬかと思ったわ、全くもう……まあ、これ以上言っててもしゃーねーか」

「そうね……これ以上文句言っていても始まらないわ。とりあえず後衛組の魔法を使えば、ここの魔物相手でも全く問題ないことが分かったと、ポジティブにとらえるようにしましょう」

「まあ、そうだな。とりあえずアンデッドは物理攻撃通りにくいみたいだし、炎を使えば余裕っぽそうなのが分かったのは良かったか。でも次からはちょっと気を付けてくれよ」

「「「……ごめんなさい……」」」


 とりあえず反省会が終わったので、改めて、かつてアンデッドモンスター達だった消し炭に近づく。

 いっそ見事なくらいに灰の塊になってしまっている。一見それ以外に何もないところだが、秋彦の魔力感知が、この灰の中に何かあることを感じ取った。

 少し探ってみるとすぐにそれが出てきた。

 紫色の水晶だ。怪しい輝きを放っており、とても綺麗だ。これもボス部屋で手に入れた素材っぽいアイテムの仲間なのだろうか?

 とりあえず鑑定は後回しで、この階層も速く抜けてしまおう。


………………………………


 それ以降に特にトラブルのないままに順調に階層を進んでいく。どうやらこの階層はアンデッドモンスターという一括りにされているらしく、様々なレパートリーのアンデッドが現れてきたが、いずれも優太と桃子の炎コンビが焼却して終了という場面が多く、この階層は速めに抜けられる。その場の全員がそう思った。

 だが、トラブルとは、いつだってそのような気の緩みが判断ミスを起こしたり、そこに運の悪さが付け込んだりして生まれるものなのだ。


 階層の探索も中盤辺りと言ったところで、それは起こった。


 急ぎ気味に探索を行っていくと、またもゾンビウォーリアー、ゴーストメイジ、スケルトンナイトの三体が現れた。

 すでに何度も行った組み合わせでの戦いである。戦い方も変えない。前衛が進路妨害を行い、時間を稼ぎ、後衛がフュエルとファイアボンバーのコンボで一掃する。必勝のパターンだ。


「敵影確認、行くぞジュディ。前に出て、進路妨害だ!」

「了解!」


 二人はいつも通りにアンデッドの前に出て、後衛に向かうアンデッドモンスターの足止めを行う。普段なら、アンデッド側の前衛がすぐに動き、何度か打ち合う。

 だが、ここで予想外の事が起こった。


『闇よ、我が命にて闇を与えよ!』


 聞き覚えの無い声で魔法詠唱が行われたと思ったら、急に視界が閉ざされた。目はハッキリ開けているのに何も見えない。


「え、うわ?! な、なんだ!?」


 その瞬間に、危険感知が働く。攻撃が何処からか来る!

 とっさに後ろに飛ぶが、肩に浅く喰らってしまった。浅いといっても結構な切れ方をしたらしい。おそらくゾンビウォーリアーの一撃だろうか?

 しかし、それを考える間も、今の秋彦には与えられていなかった。

 なぜなら、切られた部分が猛烈に痛んできたからだ。


「な、なん……?! うおお!?」


 苦痛に顔が歪む。相変わらず視界は開けず、体はまるで傷口からガラスの粉でも流し込まれたかのように全身の血管を切り刻まれるかのように痛む。

 その後の追撃も、危険感知と風切音を頼りに何とかかわすが、少し動くたびに体が激しく痛む。

 この激痛ではまともに反撃も出来ない。おまけに思考能力もかなり鈍っているようで、今の秋彦は体が痛いと敵を倒さなければとしか考えられていなかった。

 だが、戦闘はここまでの様だ。視界は閉ざされていても耳は聞こえる。その耳が、頼もしい仲間の声を聞き取ったからだ。


「『炎よ、我が命にてかの物に燃料を与えよ!』ヒュエル!」

「『炎よ!』ファイアボンバー!」 


 その言葉の後に鳴り響く爆発音。

 最初のコンボからファイヤーエンチャントを除いた物。これだけで充分であることが、戦闘を繰り返して判明していたのだ。魔法の詠唱が、どうやら間に合ったようだ。


「秋彦! 大丈夫?!」

「し、親友か……どこだ……?」

「目の前にいるよ! しっかりして!」


 戦闘の終わりを察知し、後衛組が近づいてきたらしい。しかし相変わらず他のチームメンバーが見えない。


「親友、まずい……全身が死ぬほど痛む……ポーションを……」

「ポーションよりもこっちが先! 『光よ!』キュアポイズン! 『光よ!』キュアブラインド!」


 優太が魔法を唱えると、一瞬で視界が開け、全身の痛みが引いていくのを感じた。

 そしてようやく、優太は目の前に、そして残りの後衛二人は盾を構えたまま体を痙攣させながら固まっているジュディのそばにいるのが見えた。

 ジュディは右肩からばっさり切られたらしい。鎧のおかげで致命傷にはなっていないが切られた部分はやはりあるらしい。


「よし、じゃあジュディさんも……『光よ!』キュアブラインド!」


 続いてジュディの暗闇も解除する。その後にジュディの指に、昨日妖精商店に寄って買った装飾品の一つである【柔軟の指輪】をはめる。

 するとようやく麻痺が解けたらしくジュディが動き出した。

 この道具の使い方はメーツーの情報だ。メーツーによると、状態異常無効装備には、すでになってしまった状態異常を取り除く効果もある物もあるらしい。


「はぁ! ……はぁ……はぁ……やっと体が動いた……」

「二人とも大丈夫か?!」

「「……まず回復して」」


………………………………


 戦闘終了し、ポーションを飲みながら作戦会議、あるいは反省会を行う。


「いや、想定していなかったといえば嘘になるが、実際使われるとちょっと印象変わるなこれ……」


 ため息交じりに秋彦が最初に話す。

 状態異常。今まではこちらが一方的に使う側だった。しかし、それを敵が使ってきた。そして実際に喰らってみると、印象もまた変わってくる。

 暗闇は、命中しにくくなるだけと思ってはいたが、突然に視界を塞がれると想像以上にパニックになってしまう事。

 毒は、想像以上の苦痛によってこちらの体力を削りにかかり、身体能力や、思考能力まで影響が出てくる事。

 そして麻痺は、どんなに動かそうとしてもピクリとも動かなくなってしまう事。

 甘く見ているつもりも、油断しているつもりもなかった。だが、それでもなお、認識が足りなかったと言う事だろう。

 まさかここまで一つ一つがきつい物だとは思わなかった。


「これはあれだな。親友にはいつでも状態異常を解除できるように常に待機してもらってた方がいいな」

「……聖水もある。全員飲んでいたほうがいい」

「あー、そういえばそんなのもあったな……それも飲んでおこう」


 改めて、一階層目で手に入れた祝福の水差し製の聖水を飲む。これで指輪がなくても多少はましだろう。


「これアレだ。このダンジョンの真のコンセプトは【状態異常を知り、使いこなそう】だな。この階層はさしずめ【状態異常になってみよう】ってところか?」

「ええ……何それ、嫌だなぁ……」

「でも、正直必要ではあると思うわ。まともに受けることもないままに、ある日突然受けることになったら、これ、まず間違いなくパニックになるわよ」


 そう、これは確かに必要な事だろう。ジュディも言ったが、状態異常をまともに受けることもないままに過ごし、ある日突然状態異常を受けたら間違いなく頭が混乱する。パニックを起こしてしまうだろう。

 一応解除の為に大体の無効装備を今まで貯めた分からひとつづつ買い、ポーション類もそれなりにそろえたが、これからはそれを素早く使えるように覚悟しなければいけないだろう。

 決意と認識を新たに、五人は前に進む。


………………………………


 幸い、これ以降は状態異常に対する気構えがあったことから、落ち着いて対応が出来るようになり、スムーズに探索ができるようになった。

 初級ダンジョン最後のボスはもう間もなくである。


皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。

これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。

次の投稿は活動報告に記載した通り、8月16日午前0時予定となっております。

とりあえずPCの注文はしましたが届くまでかなり時間がかかるようです。最悪三週間はこのままになるとのことです。

楽しみにされている方々には、しばらく御面倒、御迷惑をお掛けすることになりますが、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ