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第七十三話 東京駅ダンジョン二階層ボス

累計PV87万突破、ブックマーク登録数2300件突破、評価者数230人突破、文章評価1000pt突破、総合評価6600pt突破しました!

これも皆さまからのご愛顧の賜物です。

これからもりあダンをよろしくお願いいたします!

 棍棒を振り上げ振り下ろそうとするハイオーク。しかし今の前衛組にとっては遅すぎる。逆に一気に近づいてまずは足を攻撃する!

 強化無しとは言え、かなり強く攻撃したつもりだったが、やはりというかそれほどダメージにはなっていないらしい。

 元々攻撃力と耐久力に優れた魔物であるオークの上位種であることもあり、やはり長期戦は避けられなさそうだ。

 そこまで秋彦は考えたところでやっとハイオークは棍棒を振り下ろしきった。

 なんというか、やっぱり挙動が遅すぎる。いくら擦っただけでも大ダメージにつながるといってもこんなに遅いと、ここまで前衛張ってきた奴らで当たる奴らなんかいないんじゃないのかと思えるほどだ。

 秋彦は切りつけた足にジャンプし、三角跳びの要領でハイオークの巨体を上がっていき、今度は首に向かって槍を振るう!

 ハイオークは避けられるわけもなく、思い切り喰らうが、やはり効きが悪い。圧倒的な質量が槍を深くに刺させない。薄皮一枚とは行かないが、それほどダメージにはなっていないようだ。


「これアレだな。こっちは絶対にやられないのに時間ばっかりかかる戦いになるんじゃ……お?」


 秋彦がハイオークの頭の近くでぼやいていると、ハイオークは棍棒を持ち直し、頭の近くにいる秋彦めがけて棍棒を振ってきた。


「あ、馬鹿」


 思わずそう言葉が出る。出てしまった。

 秋彦はハイオークの棍棒を地面に降りる事で避ける。そうなるとその棍棒が一対何処をめがけていくのか。

 当然ハイオークの頭だ。

 秋彦が降りて一瞬後にものすごい衝撃音が聞こえてきた。

 ハイオークは自分の頭を自分の棍棒で打って大ダメージを受けてしまったのだ。ハイオークになってもやはりオークは頭が悪いらしい。


「秋彦、ナイス!」

「おう、しかしやっぱりこいつ頭悪いな」

「みたいね……その割に耐久力が高くて嫌になるわ。私も足を攻撃してるけどなかなか有効なダメージに繋がらないわね……」

「んな事は無いだろ。足止めしてて貰えると頭に上りやすいし」

「え? そ、そう?」


 ジュディはジュディで、秋彦の様に機動力が高くないので、足を狙って攻撃していたのだが、あまり大きなダメージに繋がらず、困ったようにため息をついていた。が、これは文字通りの足止めとなり、ハイオークが動き回ることで秋彦が頭の上に上りやすくなる利点がある。鈍感持ちでダメージを感じる事は無いとはいえ、足に纏わり付かれれば邪魔に感じて動きが制限されるらしく、無駄という事は無いのだ。

 しかしそこは流石の鈍感。何事もなかったの如く攻撃を仕掛けてくるハイオーク。だが、雑談ができる程度にはこいつの緩慢な動きには避ける余裕がある。

 秋彦とジュディの間に割り入るように振り下ろした攻撃を難なく避ける。


「このままでも問題なさそうだが、ダメージのデカさだとさっき俺がやったハイオークの攻撃を利用するのがいいっぽいな」

「じゃあ基本方針はそうしましょうか。私が足止めし、秋彦が囮になって攻撃をさせる。その間に秋彦が頭の上に登って、ハイオークに攻撃させる」

「オッケーだ。じゃあそれで行こう」


 そうして、同じ要領でジュディの足止めの元、秋彦が頭に上ると、やはりハイオークは頭めがけて攻撃してきた。

 さっき同じ要領で受けたダメージだというのに反省も何もなく同じ行動で同じことをそっくりそのまま繰り返してきた。やはり頭が悪い。なまじ鈍感でダメージを感じられないのが悪い方向に作用しているのだろうか?

 そそくさと降りると、またしてもすごい衝撃音だ。予想通り喰らったらしい。正直順調すぎる。

 生命力感知を得ているから、ダメージがどれだけ響いているかは少しわかる。それによると、このままだと後五回も同じことをしたらこいつは死ぬだろうという見立てがついた事も相まって、こちらはもう楽勝ムードだ。戦闘中なのに雑談ができる。


「オッケーオッケー、順調だな」

「本当ね、分断されたときはどうなる事かと思ったけどね」

「にしても……」


 秋彦がそう言ってちらっと光の壁を見る。

 そこにはギャーギャー言いながらハイオーク相手に必死といった感じで逃げ回っている後衛の三人が見えた。


「あっち大丈夫かよ……心配だなー……」

「大丈夫よ、あっちはあっちで倒す算段は付けたみたいだからね」


………………………………


「うわあああああ! 『炎よ!』ファイアボンバー! 『炎よ!』ファイアボンバー!」

「ちょっと、ユータン、落ち着きなよ! 『炎よ!』ファイアボンバー!」

「……えい!」


 一方こちらは後衛組。

 優太も桃子も派手に魔法をぶっ放しながら追いつかれないように逃げている。茜も弓を撃ちながらの後退だ。

 後衛組は、優太が一応前衛に回り、盾役をこなしている。が、この後衛三人では誰が攻撃を喰らっても致命傷なので、基本は走って距離を離してからの魔法攻撃、つまり退き撃ちに主軸置くことになる。

 しかし、それでは走る体力そうなのだが、魔力の回復も行わなければならない。

 向こうもいくら遅いといってもオークの上位種である以上、速度も、オークよりかは速い。

 肉体力の上昇が良好な前衛組と違って、後衛組は魔法力の上がりはいいが肉体力の上がりは悪い。三人と比べても速度はこちらが少し上回っている程度だ。

 つまり、この三人だけで退き撃ちを行っても、どこかで追いつかれ、捕まる可能性が非常に高い。

 そしてその先にあるのはこちらにだけ死の危険があるハイオークの攻撃(アタック)機会(チャンス)だ。避けられるかもしれないし、避けられないかもしれないギャンブルじみた物。そんなものに挑むなんてありえないし、あってはならない。

 そのことを冷静に分析した茜は、冷静ではない優太に声をかける。


「……このままではじり貧!」

「なんとか……何とかしなきゃ……!」


 任せろと意気込んだはいいが、やはり気持ちばかり先走っているらしい優太。立ち向かうだけでも勇気が要ったはずだ。冷静でいられないのは致し方ないか。

 場の流れを変えようと桃子が声を出す。


「じゃあ、距離離すついでに作戦タイムしよう!」

「……策なしでやりあうより建設的!」

「わ、分かった!」


 とりあえず退き撃ちを辞め、次の行動を模索する。

 今退き撃ちを試して分かったのは、このままでは全滅の可能性が高いと言う事だ。ならば退き撃ちに関しては諦めざるを得まい。

 となると別の行動にて向こうを無力化する必要がある。

 となるとやはり真っ先に思い浮かぶのは……


「状態異常かな!? とりあえず手あたり次第試してみよう!」

「……了解、状態異常付与を試みる!」

「何か効いてくれよー」

「『闇よ! 我が命にて眠りに落とせ!』スリーブ!」


 茜は先ず、スリーブを試してみた。

 が、これは効果がなかった。魔法を使っての状態異常付与は、魔法をかけると効果がないときはそれがはっきりわかる。


「だ、ダメか!」

「……無効化された……!」

「次、ブラインドを使って!」

「……分かった。『闇よ! 我が命にて闇に閉ざせ!』ブラインド!」


 だが、これも効果がなかった。

 いよいよ状態異常という突破口も潰されたかと思った。


「こ、これもダメか?!」

「……だめ……?」

「諦めないで! ポイズンを!」

「……『闇よ! 我が命にて毒を与えよ!』ポイズン!」


 もはや藁にも縋る思いでのポイズン。

 ……これは効果があった!


「……効いた!」

「よっしゃ! なにも効かないのかと思っちゃったよ!」

「よかった……あ、そうだ! 『炎よ!』バーン!」


 毒が聞いたことで、優太は一つ閃いて、状態異常、火傷の付与魔法の【バーン】を使ってみる。

 ……こちらも効いた!


「よし! 効いた!」

「で、でも、スリープもブラインドも効かなかったし、どうしよう?!」


 状態異常が効いたのは毒と火傷のみ。眠りと暗闇は効果がなかった。


「何言ってんのモモちゃん! あいつならこれだけ効けば十分だよ!」

「え?」

「……向こうは時間ごとに継続的にダメージが入るようになった」


 要領を得ない桃子に茜が最も大事なところを教える。そう、後はもう何もせずともダメージが入るのだ。


「あ、じゃあ!」

「……そう」

「うん! 後はひたすら逃げるだけぇぇぇえええ!!」


 そうして三人の必死の逃走が始まった。逃げているだけでダメージが入るのだ。下手に攻撃をすると追いつかれる可能性があるが、逃げているだけなら追いつかれない。

 おまけに逃げるだけなら魔力の回復をしなくていい。なのでこちらはハイオークが死ぬまで逃げていればいいのだ。

 勝負ありと言って良いだろう。なにせハイオークには遠距離攻撃の手段がないし、思いつかない。逃げに徹すれば、三人にハイオークは絶対に追いつけないのだから。


 なので三人は走り続けた。

 ボスが死ぬ、その最後の時まで。


皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。

これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。

次の投稿は7月30日午前0時予定です。

よろしくお願いします!

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