第六十九話 学校会話 探索者デビューしたクラスメイト2
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「ほら全員席に着けー、HRの時間だー!」
慌ただしく教室に入ってきた岩田拓郎先生。わいわいがやがやしていた教室がその一言で静まり返った。
「えー、最近はダンジョンが出現し、探索者になることを国が推奨し、そして高校生になったら探索者になれる関係で、この学校でも探索者になるものが増えている。そこで、後一月か二月で、この学校の探索者の扱いをまとめた校則を制定し、それを書いた生徒手帳が配られることになった。別に探索者を辞めろという訳では無いが、探索者としての活動をするからには怪我無く、事故無く、ダンジョンに潜って近隣の平和を守ってもらいたい」
まず最初の連絡は、探索者に対する連絡だった。
探索者という職が生まれてまだ三日か四日位しか経っていないのに、もう学校の先生側で話題になる位に人が増えたのか。
……いや、よく考えてみればダンジョンが世界中に現れて、魔物が氾濫して、どこもかしこも影響を受け、現代社会は手痛いダメージを受けたのだ。探索者という職が出るのは必然だし、学校としても、自衛隊だけでは手が足りない現状、志願者が出るのを止められはしないのだろう。
しかし学校に武器をあからさまに持ってこられても困る。なので校則を改めて制定すると言う事なのだろう。
「今このクラスにも二チーム探索者がいるからな。片方はもう心配していないが、もう片方がな……笑屋、お前に言っとるんだぞ」
「うえ?! 俺っすか!?」
「当たり前だ、お前のようなお調子者が一番心配なんだ。ダンジョンでバカやったら死ぬんだぞ? 分かってるのか?」
教室内がどっと笑い声に包まれる。
まあ拓郎先生も、茶化し半分、本気の心配半分なのだろう。日頃の行いというかなんというか、妙なところでドジ踏みそうな感じがある。
「ちょっとタッタくせんせーそりゃないっすよー! 俺達だって入門編のボス倒す程度にはなったんですからね!」
「ほうほう、それは頑張ったな。偉いぞ。その調子で勉学にも励めよ」
教室内がどっと笑い声に包まれる。
「さて、今話題にも出たが、お前ら、中間テストがこの間取り消しになったからって、勉強サボってないだろうな? 次の期末試験は中間テスト分も含めているからな。ここで点が悪いと夏休みが無くなるぞ? そしてここでの点が探索者達の多くが悪いと、この学校での探索者の立場が悪くなるどころか、探索者禁止令も出かねない。生徒全員、特に探索者は、きっちりテストでも点を取るように励め。いいな?」
全員がハイ! と大きな返事を返す。
確かにここが学業を営む場である以上、その学業が疎かになっては本末転倒だ。探索者が学校の内部でもいい目で見られるようにするためにも、テストでの成績だけでなく、横柄な態度をとることなく、謙虚な姿勢でいる事も大事だろう。
「じゃあ今日はこんなところで終わりだ、一時間目の授業の支度をする様に」
「起立! 気を付け! 礼!」
教室から先生が出て行くと、教室に弛緩した空気が戻ってくる。
早速探索者二組が集まって
「ボロクソ言われた訳なんですが」
「エミーは日ごろの行いが悪すぎんだよ」
むくれるエミーに苦笑いしながら秋彦が答える。
「勉強かー、探索者やりながら勉強ってやっぱり大変だよねー」
「でも、ここを疎かにして、学校から探索者禁止と言われるのはちょっと……今は何でも高いから、いい収入源になりますし。大変ですけど」
奏と言葉がさっきの話を受けてぼやく。
秋彦はちょっと違和感を覚えたので聞いてみる。
「でもレベルは上がったんだろ?」
「え? 上がったよ、今は全員レベル8だよそれが?」
「だったら勉強も問題ないだろ」
「……どう言う事?」
どうやらレベルアップやDPによって頭の良さを上げる事が出来るのを知らないらしい。忘れているのかそもそも説明を受けていないのかは知らないが。
「まあだったら、今日の授業を聞いてみなよ。たぶん世界変わると思うぜ?」
いまいち分かっていない奏は首を傾げたままだが、とりあえず頷いた。
………………………………
「で、どうだったよ、午前の授業は?」
「すっごいすっきり。するする内容が頭に入っていったよ。からっからのスポンジに水を流したみたいにぐんぐん吸収していくんだ……!」
午前の授業が終わり、探索者7人での昼食。奏は食堂で弁当を広げながら感動していた。
「まさかレベルアップの影響がこんなところにも出るとはね……」
「俺の場合、最初はDPでさらに補強して、その後はレベルアップ分だけの強化だけど、はっきり言って十分すぎるんだよな。予習復習なしでガンガン覚えて忘れねーんだもんな」
エミーと秋彦も同調する。学生にとっては勉強ってやっぱり鬼門である。ましてそれ以上に熱中している物があるとなおさらだ。
しかし、その熱中していることをやり続けることで、苦手な勉強の問題も解決するとはすばらしい。
「こりゃダンジョンに潜り続ける意味もあるってもんだねー」
「強くなって頭もよくなる。確かにこれは凄いね」
石崎と真崎も大きく頷く。
「あ、そういえばお二人とも。ダンジョンで新しく食べれる魔物とか見かけましたか?」
話の流れをぶった切って言葉が話しかけてくる。さっきからうずうずしてたのはこれを聞きたかったからか。
「おう、東京駅からいけるダンジョンの初級二階層でオークを見つけたぜ。豚肉だ」
「うんうん、塩コショウして食べただけだけど、すごくおいしかったよ!」
おおー! と声が上がる。どうやらこの五人、この間のウサギ肉の美味しさを忘れていないらしく、食事しながらだというのに揃いも揃って口からよだれを垂らしている。
「ねぇねぇ! もしよかったらまたみんなで一緒に食べない?! 料理はあたしがするから!」
「言葉は本当に飯の事になるとキャラ変わるな、図々しいくらいグイグイ来るのなんなん?!」
「あ、ご、ごめんなさい。でも! 食べたいんです!」
「あ、だったら今日晩御飯時になったらうちのお店においでよ」
ガンガンに詰め寄る言葉に秋彦がタジタジになっていると、優太が声をかけてきた。
「え? どうしたのいきなり?」
「オークの肉を解体したときにさ、とりあえず全員分に分けたのと、僕の家で買い取る形にしたでしょ? とりあえず試しの分として僕の分け前として貰ったお肉と骨を両親にあげたのね」
その一言で、秋彦はピンときた。
「あ、まさかおやっさんが?」
「うん、オーク肉の豚骨チャーシュー麺とオーク肉チャーシューの細切れが入ったチャーハンをレインボーウィザーズに試食してもらいたいって」
思わずガッツポーズを繰り出す秋彦。そういえばそもそも優太の実家である中華料理店の赤龍に行くこと自体久しぶりだった気がする。
「普段うちは二十時半で終わりだけど、今日は二十時半からオーク肉の中華を試食だよ。今日の探索が終わったらメンバーを誘おうと思ってたんだ」
「うおお……最っっっっ高!」
「そ、それにあたし達もお呼ばれしていいの?!」
慌てて横から入り込む言葉。羨ましさからか、焦燥感に駆られているらしい。
「まだお肉のストックあるし、二人ともそんなケチなこと言わないだろうし、大丈夫! でもこれ以上人呼ぶのはダメね」
その場で拍手が起こる。結構声が大きいが、他の席もだいぶ騒がしいから多分大丈夫だろう。
「こりゃ今日の夜が楽しみだあ……」
「じゃあとりあえず今日は晩御飯食べないで、二十時半にうちに来てね。住所は後で送るからね」
再び拍手が起こった所で、そろそろ昼食の時間が終わりそうなので、教室へ戻ることになった。
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次の投稿は7月18日午前0時予定です。
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