第六十七話 お宅訪問 ジュディ
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「……予想外に情報を得ちまったな……」
「今後どうしましょうか、強行軍しちゃう?」
「んー、まあそこはまた明日みんなと会って作戦会議だな……」
桃子の家を出て、最後にジュディの家に向かう秋彦達。正確に言うと、ジュディの家は家ではなく学生寮だ。ジュディは交換留学生であり、生まれや育ちはイギリスであるのだから当然と言えば当然なのだろうが。
桃子の家にいたニャン太君から得た情報は、秋彦達に予想の斜め上を行く衝撃を与えられた。
ニャン太君曰く、初級ダンジョンは階層ごとにそれぞれコンセプトがあり、それを理解し、それを利用する事が出来れば、一気に最後まで行くことも可能らしい。
逆に、階層のコンセプトを無視し、力で無理に押しとおろうとするとかなり苦戦するような構成にもなっているとの事で、楽に、確実に階層を抜ける道を模索するのが、初級ダンジョンを駆け抜けるコツなのだとか。
もっとも、第一階層の一般的な敵相手に負けなければの話らしいが。そこで負けるのならば単純に実力不足で、最低限それを倒せなければ工夫で足りない戦力を補う以前の問題になってしまうらしい。
これを聞いた優太と茜を除く三人は正直悩んでいる。
ニャン太君の言う事を全面的に信用するなら、初級ダンジョンのクリアは目前らしい。なら、もうさっさと東京のダンジョンを制覇し、史上最初の初級ダンジョンクリア系列のDPをゲットしておきたい。
しかし、この言葉を全面的に信じて、装備やアイテムの収拾を怠り、状態異常への耐性を十全とせずに、ダンジョンの奥へ向かって死んだらシャレにならない。命あっての物種なのだから、そこら辺はやはり慎重に行きたいところではある。
だが、こうしている間にどこかの誰かが、史上最初の初級ダンジョンクリア系列のDPをゲットしてしまったらと思うとつい悩んでしまう。自分たちにもやはり欲が芽生えてしまっているらしく、ここら辺の判断をどうするかが、正直に言って非常に悩ましいのだ。
明日はそこを相談しなければいけない。次で一気にダンジョンの攻略をしてしまうか、あるいは万全を期すために装備を整えるか。
「それはそうと、ジュディはどこに住んでいるんだ?」
「私は学校の寮ね。交換留学生だから、こっちに家は無いの。【桃百合学園】って知ってる?」
「……うわ……俺でも聞いたことがある位のお嬢様学校じゃねーか」
「へぇー、日本で格式の高い女学校といったらここって聞いてきたのだけど、その看板に偽りなしなのね」
桃百合学園、それは日本の一等地にある日本有数、関東では最高クラスの女学校であり、お嬢様学校だ。入学さえできれば、人生勝ち組間違いなしのコネクション、学力。ここの卒業生であるだけでイメージが違う。女子がエリート目指す最高級の学校ともいえる所だ。
二世アイドル、政治家の娘に海外でも特に有名な会社の社長令嬢が同級生って、どんな訳の分からん学校なのかと思ったが、成程、ここなら納得がいく。
何せ有名な女性を多く輩出しているだけあって、世相に疎い秋彦でさえ知っているくらいだ。
「今更だが、本当にものすげー人たちとチーム組んだんだなぁ……」
「もう! それはもういいでしょ! 今の私達は友人で仲間……なんだから、ね?」
困ったように頭を掻く秋彦の手を取り、ウインクしながらのこのセリフはなかなかの破壊力だ。
ジュディはもうちょっと自分の美貌を自覚したほうがいいのではなかろうか。ますます対応に困って、俯いてしまう。
……尤も、自分自身で手一杯な秋彦は気づかなかったが、ジュディ自身も余裕があっての行動ではなかった。白人特有の真っ白な肌が露骨に赤くなっている。
「と、ともかく! 私の学校の寮の入り口まで来てもらうわ。男子禁制だから中に入れて上げられないし!」
「お、おう! わかった、それでいい! 待ち合わせの時とかはそこに飛ぶからな!」
あわあわしながら無理やり話を打ち切る両者。
自らの身体的特徴の強烈さから友人としての異性交流もなかった秋彦と、社長令嬢として同年代の異性と交流が少ないのに、衝動に従って先走るジュディ。互い純情すぎて訳が分からないことになっている。
なんなんだ本当に。
…………………………………
「はい、ここが桃百合学園の学生寮よ!」
「おー……そろそろ驚きなれてきたが……学生寮って言うか、もう西洋風の屋敷だよなこれな」
「もちろんこの屋敷一つが私だけの寮じゃないわよ、他にも学生はいるからね」
「当たり前だわ。これ全部で一人用って言われたらやっぱり腰抜かすってーの」
東京は港区の一角、この一等地に鎮座する大きな学校桃百合学園、その近くにあるこれまた大きな屋敷。それこそが桃百合学園の学生寮、【桃百合館】である。見事に飾られた庭園、大きく立派な門。その近くには守衛もおり、守衛所もある。かなり豪華だ。
二人は門の前で話をしていた。ここは男子禁制の場となっており、守衛でさえ、女性が行っているほどに徹底されているとの事。
「じゃあ、とりあえず今後は学校終わって連絡貰ったらここに来ればいいんだな?」
「ええ。せめて荷物位は置いてから行きたいしね」
「ん、わーった」
「あ、そうだ。守衛さんに紹介しておくわね。迎えに来てくれたのに不審者扱いされたらいやでしょ?」
「あっはっは、俺は特に目立つからな! 目立つからな……!」
「もう、拗ねないの。ほら、行きましょ」
ジュディから、守衛の人に面通しを兼ねた挨拶をしておき、とりあえずやはり屋敷の敷地内には入れないが、今後ここに来ても通報はしない事、そして、守衛所までは入ることを許可してもらえた。
こうしてメンバー全ての住所へ赴くことで、これからはテレポテーションですぐに飛んでいくことができるようになった。
取り決めによって、秋彦をタクシーの様に使う事は無いようにはしたが、やはりそのうち使われるようになるんだろうなと、思いつつ、とりあえず家に戻ることにした。
なんだかんだ優太以外と遊びに出かけたのは小学校時代以来で、しかもなかなか来ることのない水族館は、非常に新鮮味のあった場所だった。
……その後の買い物はずいぶんと振り回されたが、そこまで苦ではなかったので、とりあえず良しとしておこう。
なんだかんだ今までは怒涛のような日々で、それはまだ続いてはいる物の、たまにはこんな日も悪くない。そう思わせる一日となった。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の投稿は7月12日午前0時予定です。
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