第六十五話 水族館
累計PV71万突破しました!
これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「うわー、綺麗ねー」
「おー、すっげーなこれ!」
やっと到着した水族館。入場券を買って中に入ると、すぐに水の中にいるかのような光景が出迎えてくれた。
ここの水族館は都会の屋上にある水族館でアクセスがいいため、結構人気がある娯楽施設となっている。
「水族館なんて初めてきたけど、綺麗なもんだなー」
「ここ最近は切った張ったばっかり繰り広げてたから癒されるー……」
「確かにここの所忙しかったわよね」
妙にしんみりしてしまう。
ここ最近は、学業もおざなりになりがちではあったが、それ以上に遊ぶ余裕もなくしかかっていたこともあり、息抜きなんて全然できていなかったような気もする。
そういう意味でも今日はのんびり過ごして羽を伸ばす事にしよう。
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「しかしあれだな、結構人いるな……」
そう呟いて秋彦が水族館を見回すと、結構人がいる。カップルだけでなく、子供連れや秋彦達の様に高校生の集まりといった風体の人。そして探索者も多い。もっとも、ここにいる探索者は雰囲気が悪くなく、むしろどことなく疲れた様子だった。
だが気持ちはよく分かる。というより分かった。
何故なら、秋彦も今猛烈に癒されているのを感じるからだ。
こちらを襲ってこない動物の存在、ガラス越しに見る見慣れた魚や海に住まう生き物。
見慣れた見た目で、意味の分からないほどにデカい魔物ばかり見ていると、逆にこういう生き物を見るととてつもなく安心するのだ。
たとえそれが普段全く見ないようなクラゲのアクアリウムであったとしても、この安心感は正直かえがたい物がある。
うっとりとクラゲのアクアリウムを見ている他のメンバー。かくいう秋彦もぼーっとクラゲの幼体を見てしまっている。
しかし、水族館の館内放送で途端に我に返ることになる。
『皆様、こんにちは。本日は当水族館へのご来場、誠にありがとうございます。まもなく、ペンギンたちのお散歩時間となります。皆さま、ぜひご覧になってください』
女子三人がその放送に声を上げる。
「あら、聞いた?! ペンギンのお散歩ですって!」
「おー! いいね、すごくいい!」
「……見に行く」
テンションの上がる女子陣。
「そうだね、せっかくなんだし、行こうよ秋彦!」
「え、あ、ああ、そうだな……行くか」
優太のテンションも上がり気味の様だ。その中で、ペンギンの魔物が現れたらどう倒すか、等と考えてしまった自分を恥じる。そろそろ職業病になりかかっているのかもしれない。
止めるんだ。いったん忘れろ。ここにいるのは魔物ではない、ただの動物なのだ。襲い掛かってこないし、たとえ対峙する事があったとしてもそれは今ではない。
今日は楽しむためにここにいるのだ。忘れるんだ。
秋彦は、一呼吸おいて思い直し、改めてペンギンたちのお散歩を見に行く。
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「「キャー! 可愛いー!」」
「……可愛い」
女子三人はすっかりよちよち歩くペンギンたちを夢中になってみている。隣で見ている男子が声をかけられない位にはしゃいでいる。
ここにいるペンギンはフンボルトペンギンという、日本の水族館の中では割とメジャーなタイプのペンギンらしい。
パタパタと腕を振りながらペタペタ歩く様子はかわいらしく、見ていてほんわかしてしまう。
これで撮影も出来ればよかったのだが、残念ながら撮影は禁止との事だ。
「はー、可愛い……癒されるねー」
「本当にな。正直来る前は動物眺めて何が楽しいんだと思ってたが、これは想像以上に心に沁みるもんがあるな……」
「秋彦は小学校で行った社会科見学の時も、詰まんなさそうにしている時が多かったもんね」
「勉強きらーい」
「もう、相変わらずなんだから」
「でも勉強はした方がいいわよ? 役に立つことも多いんだから」
昔話に花が咲きかかった所でジュディが話に入ってくる。聞いていたらしい。
「おおっと、聞いてたのか。堪能したか?」
「おかげさまでね。丁度いいタイミングだったわ。また二人の事が少しわかったもの」
「うう、恥ずかしいなぁ、ほら、終わったんだし、次行こうぜ」
そういって慌てて全員を連れ出そうとする。どうしても話題を逸らしたりするのが苦手なようだ。
ペンギンの散歩を見るために大分階層を飛ばしたので、改めて回っていた階層に戻り、引き続いてみていく。
入り始めてすぐにあったサンゴ礁が再現されたスペースも見事だったが、サメやウツボなどが展示されているスペースは、青い海に白い砂浜をイメージされており、こちらもなかなか圧巻だ。
サメも少し前なら、デカくて怖いと思ったのかもしれないが、今となっては可愛い物だ。
ニコニコしながら手を振ってみたが、一瞥もせずにくるりと泳いで行ってしまった。やはり普通の動物の様に反応を期待するほうが間違っているか。
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その後もいろいろな展示生物を見て回り、自分たちの常識の範囲内の生物を改めて確認したことで、気分が大分リフレッシュできた。
開館の時から見て回っていて、時間は一時。十時開館なので、三時間見て回ったことになる。
「はー、いやー楽しかった」
「なんつーか意外な位しっかり楽しめたな。でもそろそろ腹減った」
「そうね、いい時間だし、ご飯を食べましょう。その後はお買い物タイムよ!」
わぁっと盛り上がる女子陣、はて、何か買いたいものでもあるのだろうか?
優太は顔を青くしながら苦笑いを浮かべている。
はて、どうしたというのだろうか?
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すっかり日も落ち、きらきらと満足感で輝く女子の後ろを買い物袋でクリスマスツリーのような状態になった秋彦がとぼとぼとついていっている。一応優太も少しは荷物を持ってはいる物の、持っている量は圧倒的に秋彦の方が多い。こんな事ならマジックバッグを持ってくるんだったか。
一応途中でギルドによって妖精商店で探索に関わるアイテムも買ったのだが、いかんせんその前後にあちこちの服屋などに寄ったりもしたので、持つものが増えすぎた。
「はー、満足したわー!」
「あ、秋彦、大丈夫……?」
「いやー、重くはねーんだよ。だがなんなんだろうなあの女子の買い物に対するバイタリティは……そっちで疲れたわ」
流石にLv23もあるとこの程度では肉体的に疲れないが、精神的な疲労が結構来る。結局午後に食事をはさんで、買い物買い物と、とにかく引っ張りまわされた。
女子の買い物に対する勢いはすさまじい物がある。それを思い知らされた。
「じゃあもう日も落ちてくることだし、そろそろお開きにしましょうか」
「そうか。了解だ。じゃあちょっとジュディとモモは待っててくれや。親友と茜を送ってからここ戻ってくるから。さっさと家に連れてってくれ。住所だけ知っててもテレポテーション使えねーし」
「悪いねぇ、足にしちゃってさ。でもこれからもよろしく」
調子のいいことを言う桃子を後目にすでに家を知っている二人を家に送り届ける。改めてここに戻ったら、ささっとだが、お宅訪問である。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の投稿は7月6日午前0時予定です。
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