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第五十八話 実食 オーク肉

累計PV57万突破、ブックマーク数1800件突破しました!

これも皆さまからのご愛顧の賜物です。

これからもりあダンをよろしくお願いいたします!

「茜のチームメイトとして新たに入った男性二人とは君たちの事だったのか。東京であのキメラゴブリンと殴り合いした。動画で見るとかなり大柄であることはわかったが、こうしてみると圧巻だ」

「そして、その彼の親友にして広範囲の炎魔法で東京の魔物を焼き尽くして回った彼。関東最強の呼び声もあるチーム、アッキーダンジョン探検隊が私達の娘が所属するチームと一緒になるなんて。正直こんなに安心できる事は無いわ」

「は、ハイ、ありがとうございます」

「お褒めにあずかり光栄です」


 和装に身を包んだ夫婦はどことなく動きに気品を感じる。そんな人たちが社交辞令なのだろうがこちらを褒めてくるのは少しこそばゆい。

 茜の両親は机をはさんで向かい側にいる。反対側に茜を含めた5人が並んで座っている。

 それにしても自分たちはそんな風に世間では言われていたのか……それともわざわざ調べていたのだろうか?

 カチンコチンになりながらもなんとか一言を返す秋彦と優太。秋彦の方が若干まだ言動が固い。


「ジュディ君達には必要ないだろうが、彼らの為に改めて自己紹介をさせてもらおう。私は君たちのチームメンバーである、舞薗茜の父親の舞薗巌だ。政治家をしている」

「私はその妻の舞薗陽子です。政治評論家をしていますわ」


 政治家の夫に政治評論家の妻とは、筋金入りの政治にかかわる一族の様だ。


「えっと、俺……じゃねぇ、私は、南雲秋彦と言います。この度このチームとメンバーと新たにチームを結成しました。よろしくお願いいたします」

「僕は、石動優太と申します。娘さんにはお世話になっています。どうぞよろしくお願い致します」


 軽く自己紹介をして二人とも頭を下げる。


「まあそう気を遣わないでもいい。ここにいるのは娘の友人を見に来た父親と母親。そして娘とその友人4人なのだからね」

「そうですよ。今はみんなの話を聞きたいわ。おばさんはまだダンジョンとかは行ってないの。お話を聞かせてほしいわ」

「いや、好き好んでいくところではないですよ。なんだかんだ切った張ったの世界ですし……」

「……その前に今日のメインの準備」


 茜がふと話を遮って手を二回たたく。するとすぐに先ほどの車の運転手の一人、使用人らしき人がやってきた。


「お呼びでしょうか?」

「……コンロを用意して。ここで焼き肉やる。あとお茶のお替りを」

「かしこまりました。少々お待ちください」


 恭しく一礼し、立ち去る。


「……うちに焼き肉をしに来たのかね?」

「えっと、まあ、はい」


 きょとんとして聞く巌さんにちょっと申し訳なくなりながらも答える。事実なのだからしょうがない。オーク肉の試食会といっても、結局はそうなる。


「……魔物の肉を試食する」

「ああ成程。して、何の肉を?」

「……オーク」


 そういって茜はダンジョンウォッチのライブラリで、写真とステータスを見せる。


「な……もうこんな化け物を倒すようになったのか……」

「頼もしいんだか不安になるんだか……本当に無理はしないで頂戴ね?」


 流石に両親も狼狽える。やはり心配にはなるようだ。


「……大丈夫。前衛と後衛に一人づつ、役割の違う二人が入ったおかげでだいぶ深入りできるようになった」

「こっちとしても二人でやってた時より安定感があるからな。助かるぜ」

「あー、安定感についてはあたしらもそう思うよ。なんせ今まで前衛の攻撃役がいなかったし」

「ええ、攻撃が集中するって結構大変だったから、本当に助かっているわ」

「秋彦が無謀な突っ込みしなくなっただけで僕はチーム組んでよかったと思ってる」


 全員しみじみと今までの綱渡りっぷりを思い返す。


「で、オークの肉を手に入れたから試食しようぜ! って話になったんです」

「……お父さん達も食べる?」

「お、いいのかね?」

「……私は構わない。皆はいい?」


 そういって意見を求めてくる。実際家に来ているのにわざわざのけ者にするのもあんまりだろう。四人ともOKする。


「うむ、ありがとう」

「あら、じゃあ私はお野菜でも買ってきて貰っちゃおうかしら。焼き肉でもお肉だけというのもなんだし」

「……もう買ってある。バーベキュー用に切り分けられているセット」

「あら準備がいい。流石ね」


 などと話をしていると、使用人の人がコンロと網を持ってきた。


「失礼いたします。コンロと焼き肉用の網、箸とお皿ををお持ちしました。今お米を炊いておりますので、もうしばらくお持ちください。お野菜はお持ちいたしますか?」

「……用意がいい。野菜は買ってあるから大丈夫」

「田村崎、ビールを持ってきてくれ。私達も相伴にあずかることになった。焼き肉にビールが無いのは寂しい」

「かしこまりました。少々お待ちください」


 そういうと田村崎と呼ばれた使用人はまた出て行った。


「しかし使用人がいるってのはスゲーな……」

「……いる所にはいるというだけ」

「さて、始めるか」


 そういって改めてオーク肉を取り出す。解体するついでに切り分けておいたのだが、そのままの状態でもすでに美味そうに見えるのは、これが魔物の肉だからだろうか?

 用意のいいことに皿には肉を置いておく用の大きい皿もあった。とりあえず切り分けてある肉を適度にそこに置き、それぞれが肉を焼き始める。

 十秒もしないうちに肉の焼ける匂いが部屋に充満する。野性的な、本能的な部分が刺激されるその匂いを嗅いだだけで、腹が早く食わせろと文句を言い始める。口からも受け入れる準備が整いすぎて、よだれが溢れ、こぼれそうになる。

 間違いない、これは美味い。

 一応塩単体を用意しておいてよかった。この肉はこれだけで十分美味いだろう。逆に焼き肉のたれなんて買うんじゃなかった。この強烈な肉を前にしては余りにも無粋だ。匂いだけでそれがわかってしまう。

 焼きあがるまでの一分ちょっとが驚くほどに長く感じられる。この肉の匂いがそうさせる。もどかしいが我慢我慢。

 そしてやっと最初に並べた肉が食べられるほどに焼けると全員サッと取って食べてしまう。

 口に入れて、何か感想を言おうとして、言えなかった。文字通りの絶句だった。

 ……なんだこれは。自分が今まで食べていた豚肉は一体何だったんだ?

 信じられないほどに絶品だった。少なくとも秋彦達の人生の中でこれほどの物は知らない。女子陣や茜の両親なら食べたことはあるかもしれないが、今それを言うのもあんまりと言う物だろう。

 自分の語彙力では言い表せない、肉の圧倒的な重量感と満足感。旨味と満足感が食べれば食べるほどに体に染み渡る。

 これは、もうたまらない!


「驚いたわ。これすっごくおいしい」

「……なかなか食べれない位のお味」


 女子陣には多少余裕のある人がいるようだが、秋彦と優太と桃子は、もう肉を喰らう事しか頭からなくなってしまっている。かなりがっついている。


「あらあら、がっついちゃって。若いわねー」

「うむ、見ていて気持ちがいい食べっぷりだ。……む?!」


 肉を食べながら、肉にがっつく三人をほほえましそうに見ていた舞薗夫婦だったが、父親の方に変化が生じた。


「あなた、どうしたの!?」

「い、いや……なんだこれは……」


 驚きながら舞薗父は腕をまくる。そこには引き締まった筋肉で覆われた腕があった。


「あら? あなた、いつの間に筋トレを?」

「い、いや違う。今、急に全身に力を入れたときの様に、全身の筋肉が膨れ上がったかのような感覚があったんだ。まさか……」


 恐る恐るといった感じで自分の腹を触る。


「う、うむ。少し腹がへこんでいるな。ひょっとして、全身に筋肉が付いたのかもしれん」

「そ、そんなことが……?」

「あ、そういや魔物を食べると強くなったりアンチエイジングとかになるって話聞いたね」

「え!? 本当に?!」


 舞薗母、食いついた。すごく食いついた。たぶんアンチエイジングの部分だ。ちょっと引く。


「え、ええ。どういう理屈かはちょっとわからんのですが……」

「ダンジョンの説明役にそういう話聞いたことあるんです。僕たち」

「そうなのね……わかったわ。まあ検証してみないとね!」


 と言いながら早速肉を取って焼き始める。現金なものだ。もちろん舞薗父も焼き始める。


「……がっつかないで、恥ずかしい」


 思わずため息の出る舞薗娘であった。


皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。

これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。

前回の宣言通り、今回はいつもより早く上げさせていただきました。

次の投稿は6月15日午前0時予定です。明日となります。次からは通常の3日間隔に戻ります。

よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] 和装している人に焼き肉はまずいと思った。 高い服が油と匂いがついてしまう。 それとオーク肉食べて父親に筋肉がついたなら母親もそうなりそう。
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