第六話 魔法習得
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「あ、これライゾンさんの物ですか? すみません。お返しします」
「ありがとう。といっても中身で重要なのはこの魔導書位なんだよねぇ」
そういってライゾンは7冊の本を取り出した。そしてそれを一旦置くとバックを手に持ってうれしそうに話しだした。
「しかしこれ、すごいんだぞぉ。魔法の収納袋は見た目に反してものすごく大量の物を入れることができるからね。そしてたいていの物を入れられる上に、重さを一切感じさせないという万能の袋なのさ」
「……実は悪いと思いつつも中身改めたんだが……俺の背丈ほどもある槍とかも出てきてたしな。それも魔法の一端なのかよ」
「そうだよ。そしてその中にあって最も重要なのが、この魔導書さ」
そういうと一旦おいておいた本を自慢げに並べた。
「魔導書は読むと魔法が使えるようになるんだ。読めさえすれば、絶対に忘れないし使い方もたちどころにわかるんだ。しかも何度でも使うことができる。これがあれば教えたい相手には教えられるし、習得もあっという間。魔法使い垂涎のアイテムなのだ!」
鼻息荒く、早口でまくし立ている。
が、優太はここで一つ疑問をぶつける。
「……正規の方法ではないのですか?」
「というよりも正規の方法を頭の中に叩き込んで忘れなくするって感じかな?」
「……学校の勉強もそんな感じなら楽でいいのに」
「なんだね、大きい君は勉強苦手かね?」
「勉強大っ嫌いっす。後、俺は南雲秋彦って言います」
「あ、僕は石動優太です。よろしくお願いします」
「うむ、よろしく」
今更ながらの自己紹介であったが、その自己紹介を聞いた後、気分よさそうにライゾンは続ける。
「せっかくだから読んでみるかね?」
「え、いいんですか!?」
「適性が無ければ読めないし、読んでも本はなくならない。私はそんなにケチではないよ?」
「ほう、じゃあ、俺も読んでもいいっすか?」
「いいとも。読めるとは限らないけどね」
どういうことだと思いつつも無造作に赤い本を取って開いてみる。が、そこには何も書かれていなかった。
挿絵どころか文字の一つでさえ書いていない。
「……何も書いてないんすが」
「まあつまりはそう言う事さ。読めなかっただろう」
「まさか文字の一つさえ見えないとは予想外だったっすわ」
読めないというのはこう言う事かと思いつつも、実は最初から何も書かれておらず、自分は謀られているのではないかとも思える。
「親友、どうする? 読んでみるか?」
「うん、見てみたい」
「じゃあ、ほれ。これな」
「うん、ありがとう」
と言って本を受け取り、ゆっくりと表紙を開く。
と、ものすごい勢いで本のページをめくり出した。読めなくて、文字が書いてある場所を探しているのかと思ったがその割には本を見る目は真剣で、鬼気迫る勢いだ。
だがしっかり読んでいるのかどうか怪しい。1秒か2秒のペースでページをめくっていっている。仮に文字が読めたとしてもこんなペースで理解できるのだろうか?
「お、おい親友?」
「邪魔してはいけないよ。彼は今己の才能と向き合い、開花させようとしているのだ」
「……親友に魔法を使う才能がある?」
「ああ。彼はすごい魔法使いになると思うよ」
「……ふぅ~……」
本を読み終わり閉じた瞬間、優太の全身から滝のような汗が出てきた。そしてそのまま地面にへたり込む。
「お、おいおい、大丈夫か親友」
「はぁ~……すごい物を見せてもらっちゃったよ……」
「おめでとう石動優太君。これで君は魔法を使える人間。いわば魔法使いとなったわけだ。しかし、君の魔力はまだ少ないし、見習い程度だろう。見習い魔法使いといった感じか。だが、今までと出来ることは遥かに違う。わかるだろう?」
「……はい……」
そう頷く優太は先ほどとは違う、晴れやかな笑顔があった。
それを見て満足気に頷く。
「君が今見た本は7系統のうちの一つ。炎属性の魔導書だ。君の実力ではそれほど高等な魔法は習得できなかったが、他の高等な魔法の存在は知れただろう。今後はそれを反芻し、魔力を鍛え、いずれ扱えるようにしていくんだ。いいね?」
「はい!」
「……なんかいいなぁ……俺にも何か使えるようにならないかなぁ……」
「おやおや南雲秋彦君、そんなにいじけるものではないよ。なんならすべて見てみるがいい。適性がある系統なら使えるようになるかもしれんよ?」
「お、おっす!」
「ぼ、僕も見ていいですか!?」
「構わないよ。使える系統が一つとは限らない。いくつもの系統を扱えるかもしれないからね、系統は【炎】、【水】、【土】、【風】、【光】、【闇】、【無】の7種類なんだ。まずは炎だったね。次は水の魔導書なんていかがかな?」
それを聞いて、二人はライゾンから渡される魔導書を慌ただしく開いていく。他の系統でも魔法が使えるようになることに期待を膨らませながら。
………………………………
「やったやった! 三つも系統を覚えられた!」
「……ゼロとはな……」
「南雲秋彦君はまあ普通かな。初期の状態ではまあそんなものさ。励み給え。しかし石動優太君、まだほとんど成長していないにもかかわらず三つとはすごい! 間違いない、君は才人の部類だ、誇るがいい」
六つの魔導書を開いたが、覚えられた魔法は、秋彦は魔法を覚えられず。それに対し、優太は炎、風、光の3系統を獲得していた。
もっとも、魔力が上がれば改めて魔導書を読むことで魔法の系統を覚えることもできるし、成長後に魔導書を読むことで新たな系統を習得できることはあるそうなのだが、レベルが上がって間もない頃にこれだけの系統の魔法を覚えることができるのは、ライゾンも驚くべきことだったようだ。
そして残ったのは……
「無属性……貸してもらっていいっすか?」
「無属性か……この属性はちょっと特殊だからねー、君では無理だと思うが、まあ試すだけならタダと言う物か」
「こうなったらダメ元っす。大体魔法を覚える感覚がわかんないっすよ、本当に読める本があんのかな……」
ため息交じりに本の表紙を捲る。
瞬間、頭が真っ白になった。いや、正確には世界が自分と目の前の本以外漂白されてしまったかのような感覚に陥った。
しかしそれに疑問を持つことができない。それよりも目の前の本に目が釘付けになっていた。
しっかり持っていたはずの本が秋彦の手を離れ、目の前にふわりと浮かび上がる。そしてゆっくりページが捲られていく……
捲られた本のページからは文字が剥がれ、文が宙を浮いている。
そして、それが一気に秋彦の目に、耳に飛び込んできた。そしてその文字が入り込んだ場所からそのまま脳に入り込み、海馬に入り、自らを刻み付けるかのような感覚、頭が割れそうな衝撃、しかしどこか快感であるその感覚。絶叫すらできないその感覚が収まったのは時間にしてほんの数分。しかし秋彦にとっては永遠に思える時間だった。
「がっはぁ!!」
急に意識が戻り、思い出したように呼吸を行う。まるで限界まで呼吸を止めていたかのように荒々しい息だ。
額どころか体全体から汗が噴き出している。まるで雨の中傘も差さずに外を歩いたかのように。
「おお~、秋彦も魔法を覚えたんだねー」
「お、おう……しかしこりゃ……すごい感覚だな……」
改めて魔法について考えてみる。と、秋彦の脳裏に自分が使える無属性の魔法が浮かんできた。
【無属性第一魔法、パワー】対象に力を籠める。
【無属性第一魔法、フォース】力の塊を相手に飛ばす
今の秋彦が使える魔法はこの二つの様だ。強化魔法、攻撃魔法。なるほど戦闘向きの魔法だ。
そして、不思議なことに魔法を放っていなくても、使える確信がわいてくる。使える感覚があるのだ。
「いや、すごいなこれ! 親友、ほら見てみろ」
「どれどれ? ……あーだめだ。僕には使えないや」
「そっかー、残念。って、どうした?」
興奮冷めやらぬままにふとライゾンを見ると小刻みに震えていた。
どうしたのかと、声をかけようた瞬間、向こうの興奮が爆発した。
「……いやはや、魔法の才能がないのかと思ったが……系統が超レア物なタイプだったか! いやいや、認識を改めさせてもらうよ!」
「うお?! な、なんだよ?」
「無属性魔法! それは成長だけではどうしようもない珍しい魔法だ! 属性がないゆえにどんな敵とも戦え、極めれば文字通り何でもできるようになるという! あまりにできることが多岐にわたりすぎる事と、実際に使用できたものが数えるほどしかいない為、詳細がまだあまり知られていない魔法だ! いや凄い! これは凄い!!」
「おいおい、落ち着けって……」
「いや気に入った! 本当に気に入ったよ! よし、その証として、本当はバッグと魔導書は返してもらうつもりだったが、いいや、バッグとその中身全部あげる! いやはやいい物を見た! 素晴らしいよ!」
「え、おいちょっと……」
「うっはー! 今日はいい日だ! 次代の英雄候補として申し分ないのが来た! こりゃもうさっさと帰って仲間と乾杯だ! 次はこのダンジョンを制覇したときまた会おう!」
「え、ちょ、ま、まだ話は……!」
「ワハハー! じゃーねー!」
唐突に別れの挨拶をすると、ライゾンは不思議な青い光に包まれて、消えてしまった。
「……え、ええ……?」
「ど、どういうこと……行っちゃったし……」
しばらく呆然となった後、ぽつりと呟いた。
「……今日は帰るか」
「うん……」
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