第五十四話 コンヒューズ
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これも皆さまからのご愛顧の賜物です。
これからもりあダンをよろしくお願いいたします!
「うわ、一体だけでも面倒だったのに、一気にこんなに……」
「スピードの遅さを数でカバーって事? いやらしいわね」
一体戦っただけでも先ほどはきつかったのに、ここにきて5体の追加である。優太はしり込みしているが、どうも女性陣はやる気満々の様である。女の敵は死すべしと言う事か。
「とりあえず、退き撃ちが通用するか試してみない? あたしとしても、やっぱりね、見ちゃったからにはね……」
「……生かしておけない」
殺気立ちようがすごい。女子陣にとっては存在が許せないレベルなのだろうか。
……まあいい。検証するのも悪くないだろう。
やれやれと思いながら、とりあえず秋彦は前衛に立ちながらも、あえて攻撃せずに後衛の攻撃に任せることにした。
………………………………
結局今のチームでは五匹のオークは、退き撃ちではぎりぎり倒しきれなかった。
4匹目を倒しきったあたりで前衛の距離にオークが来てしまったので、前衛で対処せざるを得なかったのだ。
とりあえず退き撃ちだけでは今のチームでは倒せないことが判明した。
「とりあえずお疲れさん。退き撃ちでも1体ならやれるし、4匹が限界って知れたのは収穫だったな」
「だね。あー、疲れた」
汗だくの優太はどこか満足げだが、不満げなのは女子陣だ。
「くっそ、あたしにもっと力があれば……」
「……あんなのに捕まりたくない」
「二人とも、もっと強くなりましょう。私も強くなるから。ええ、だからそんなに気を落とさないで」
後衛だけで5匹全員倒せなかったのが相当悔しかったようだ。
しかし、思いのほかしっかり倒せてしまったので、秋彦が検証したかったことができなかった。なので秋彦は、少しわがままを言ってみることにした。
「なぁ、もう一回オークの集団と戦ってみない? 俺、ちょっと試してみたいことがあるんだよね」
「試したいこと? それって何?」
優太が早速食いついてきた。
「ほら、さっきのボスで、状態異常って結構大事ってのは知れたじゃん? だから俺が持ってる状態異常魔法を使ってみたいなって思ったのさ」
「……あー、成程。確かにコンヒューズはうまくいけば凄い効くかもね」
無属性魔法Lv4にて解放された状態異常付与魔法。それをすでに知っている優太は納得した。
「……無属性にも状態異常付与魔法が?」
「ああ、あるんだよ。まあ俺は格下相手以外には通用しないと思っていたから使い所があんまりない魔法だと思っていたんだけど、ボス相手でも効く相手がいるってことは、こっから先も重要になると思ってな。ちっとばかし試してみたくなったのさ」
そもそも無属性の状態異常を知らない女子陣の中で、状態異常魔法を多めに持つ茜が聞いてきた。やはり状態異常は闇属性魔法が強いところがあるので、興味はあるらしい。
「……やっぱり一人一人何ができるかを改めて洗いなおす必要がある」
「うん、これじゃ作戦も何もないもんね、あらためて思い知ったよ」
「とりあえず何をやってみたいの?」
「ああ、コンヒューズっていう魔法がLv4で解放されてたんだけどな。混乱の状態異常にするらしいんだ」
そう、秋彦の使える状態異常魔法にコンヒューズという相手を混乱状態にする魔法があるのだ。
混乱という状態異常が具体的にどのような状態になるのかも不透明ではあるが大方予想がつく。大方味方や自分相手にも攻撃を行ってしまう状態だろう。攻撃力と耐久力だけに特化し、回避力も何もない存在相手ならうまく同士討ちを行って、いい感じに共倒れに近い状態になるだろう。
そのことを説明すると、女子陣も納得し、試してみようと言う事になった。
早速得物を探すべく歩こうとした。が、都合のいいことに向こうからやって来てくれた。おあつらえ向きにも4匹で。
「おお、ラッキーだな。よし、じゃあ……『力よ!』コンヒューズ!」
状態異常付与魔法もパワーを原動力としない魔法だ。対象単体、あるいは全体に霧のような靄をつける。そして靄が晴れた時、敵がやたらめったらに攻撃を仕掛けたら付与成功だ。
さて、どうだ?
しばらくすると、4匹全員動きが止まったと思ったら、ピギーと一鳴きした後味方同士で殴り合いを開始した。混乱付与は成功したようだ。
「おおー、効いたねー。予想通りの状態異常だ」
「これは、この階層にはかなり刺さるんじゃない?」
「これは壮観ね……大きい怪物たちが持ち前の攻撃力と耐久力で殴りあうって言うのは迫力があるわ」
秋彦達男子陣が効果のほどで盛り上がる中、ぽつりとジュディはそう漏らす。言われてみれば大迫力の怪獣大決戦にも見える。
「確かに。これをテレビとかで見せられれば格闘技の試合的な人気が出るかもね」
桃子も納得の表情で頷く。
だが、そういう試合と違い、ここはダンジョン内であり、やっていることは殺し合いなのだ。そういった場所特有のこともある。
例えば……新手のオークが曲がり角からやってきたりとか。
新手が現れたことで、油断したかと5人が武器を構える前に、新手のオークは、混乱しているオークの攻撃を喰らう。
どうやら同じ種族だから仲間という意識は持ち合わせてはいないようで、攻撃を喰らったオークにすぐに反撃を行っていた。
「あらら、こっちに来もしないで向こう行っちまったな」
「おー、こりゃ派手な乱闘だね」
そして、騒ぎの大きさを聞きつけたのか、だんだんここへやってくるオークの数が増えていく。そしてやってきたオークは乱闘中のオークたちの流れ弾を喰らい、乱闘へと身を投じていく。もはや雪玉を坂に向かって転がしたかのごとくだ。騒ぎは大きくなる一方で、止まらない。
「ちょちょ、どんどん騒ぎが広まってるぞ!」
「ていうかいくら騒ぎが大きくなったからって、ちょっとオーク集まりすぎ……あれ、茜ちゃん?」
騒ぎはどんどん大きくなって、具体的な数は把握できていないが、そろそろ30匹以上が乱闘に参加しているはずだ。なんというか、いよいよ収拾がつかなくなってきた。というか流石におかしいくらいの集まりようだ。いったい何なんだ? そう考えた優太がふと、茜の方を見てみると、茜が口元に何かを当て、吹いているような挙動をしていた。
「茜……さっきから随分オークがこっち来ると思ったらお前の仕業か」
「……便利。吹いても犬笛みたく人間には聞こえないし」
茜が持っていたのは、先ほどボス部屋の前に開けた宝箱の中にあった【敵寄せの笛】だ。笛の音を聞くと近くにいる敵がやってくるとのことだが、人間には聞こえない音だったとは。
というか相談も無しに勝手にそんなことするなという話なのだが。
「……帰った後のレベルの上がりが楽しみ」
「いや、あのさ……相談も無しに道具使ったり」
「秋彦、もういいじゃない。これ以上は無しにしてもらえば、後は向こうが勝手に自滅するでしょ。アイテムとかについては誰が使うとか、そういうのも後で話し合おうよ」
「ぬ……ぐぬぬ……」
軽く咎めようとした秋彦を優太が諫める。
確かにいまさら言っても仕方ないことだし、確かに大乱闘になって魔物を倒す量が増えればレベルも上がる。次に来た時はもっと効率よく、簡単に倒せるようになるだろう。ここは飲み込んでおくべきか。
ともあれ5人はオークの乱闘という大迫力の大騒ぎをしばらく鑑賞することになる。
最後の一人になるか、全員が倒れるまで。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。
次の投稿は6月6日午前0時予定です。
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