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第五十一話 状態異常

累計PV45万突破しました!

皆様からのご愛顧、本当にありがとうございます!


 状況は良くない。散々打ち合いをした結果、結局ハイゴブリンに押し戻されてしまった。

 まんまと体力満タンになったハイゴブリンに時間を稼がれ、復活されてしまったのだ。

 ハイゴブリンの召喚速度はゴブリンに比べると圧倒的に遅いのだから、必要最低限の止めに抑えようとしたのがそもそも間違いだったのか?

 いや、向こうには回復指令があるのだから全員まとめての止めを狙ったら回復指令で回復されるだけだろう。結局は同じか。


「本格的にまずい気がするぞこれ」

「困ったわね……結局最初の状態に戻っちゃったわ」


 せっかく一気に焼き払ったのにロードにダメージは通らず、手下を呼び出されての前線復活。正直笑えない。結局体力というリソースを削られただけになってしまった。


「戦闘力だけじゃ図れないもんだなー、一匹一匹は弱いのに、数でゴり押すとは……」

「これは……ちょっとモモちゃんと茜ちゃんとで作戦練るね」

「分かった。俺とジュディでなんとか前線抑える。いざとなったら帰還石使おう。使えるかどうかわかんねーが。ダメだったらいよいよ腹くくるくらいに考えよう」

「……まって、ちょっと試したいことがある」


 ここで茜が手を上げる。


「どうしたの? 試したいことって何?」

「……ちょっとした搦め手を使いたい。成功するかは未知数だけど」


 どうやら茜には何か考えがあるようだ。このままやりあっても勝てるかどうかは未知数。なら、方法は試しせるものがあるならためしてみたほうがいい。


「……まあいいか。とりあえずやってみっか」

「手がないのは事実だし、やってみましょうよ。私たちが時間を稼ぐわ」

「……ありがとう」


 ジュディと秋彦は改めて武器を構える。


「ほんじゃ、もうひと踏ん張り行きますかね」

「ええ、頑張りましょう」

「……敵は殺さないで。弱らせたら試したいことやってみるから」

「え? お、おう。わかった」


 茜のその言葉に妙な黒さを感じつつ、作戦を実行するべく、前衛組は再び前衛に向かって走る!


………………………………


「……嘘だろ?」

「こ、こんな簡単に……」


 前線を維持し続ける事約10分足らず。

 5人の前にいるのは倒れたゴブリンの群れ。雑魚のゴブリンもハイゴブリンも、ゴブリンロードさえ、皆一様に倒れていた。

 ただし、死んでいるのではない。それを倒れたゴブリン達の高いびきが教えてくれる。そう、このゴブリンの一集団。全員眠っているのだ。

 眠らせたのはもちろん茜だ。茜が試したかった事とはズバリこれだった。

 闇属性魔法Lv5で習得可能な魔法【スリープ】だ。名前からしてどういう効果をもたらすかが容易に想像できる。

 効果は「対象を状態異常『睡眠』状態にする」というそのまんまな効果だ。

 闇属性魔法は初めに覚えた攻撃魔法、【シャドウボール】という単体攻撃魔法と、【ダークネス】という範囲攻撃魔法以外に覚えた魔法は、大体が状態異常を付与する魔法だったらしい。ステータスを強化する魔法である無属性とは違う方向で攻撃に不向きな魔法と言えるだろう。

 だが、今回それが大いに輝いた。茜が調べたところ、茜が今使える状態異常である、睡眠魔法【スリープ】毒魔法【ポイズン】目隠し魔法【ブラインド】のすべてに対し耐性がないことが判明した。一撃ですべての状態異常に掛かった。そして、それはゴブリンロードでさえ例外ではなかったのだ。


「じょ、状態異常……ゲームによってはいやがらせ程度にしかならないものも多いけど、致命的になるタイプの状態異常だったんだね……」

「なんというか……その……さっきまで必死になって戦ってたのが馬鹿みたいに思えるなこれ……」

「素晴らしいわ茜! 大逆転よ!」

「やったー! 生きててよかったー! 茜―! あんた最高だよー!」

「……えっへん」


 呆然とする男子陣とは対照的に、喜び抱き合う女子陣。すごい落差だ。

 もはや後は止めを刺すだけの状態となり果てたこの状態。今の今まで意識していなかった状態異常について認識を改めざるを得ない。

 とりあえずもう勝利を確定させてしまおう。いつまでも床で寝転がっているこいつらのいびきが煩わしくなってきたことだ。

 秋彦が全員に声をかける。


「よし、じゃあ後はゴブリンロードからハイゴブリンと一匹づつ袋叩きにして終わりだな。あとはもう作業だ。ちゃっちゃといこうぜ。あ、ゴブリンロードの装備は剥ぎ取っちまおう。ボスの持ってる装備だからいいもんだと思うし」

「「「「おー!」」」」


………………………………


 結局その後は本当にただの作業になってしまった。

 ロードも全員で袋叩きにしたらあっという間に終わったし、ハイゴブリンの残りも、眠っている状態からなら何の障害にもならなかった。雑魚ゴブリンなど、たとえ起きていても一瞬で終わりだ。


「うん、状態異常恐るべしだな」

「今回の事は教訓ね……」


 思わずため息をつく。今回の楽勝具合を見てしまうと、今や勝手にわざわざ死闘を繰り広げてしまったという感じまである。今までこの手の状態異常というのはあまり意識していなかった。

 秋彦と優太の二人は、状態異常付与魔法は覚えていたにもかかわらずである。

 実際に使用して、効果を検証したり、状態異常のかかりやすさなどを調べたりしてこなかったのは、良くも悪くも真正面から常に戦って勝てていたからだ。

 現在優太が使える状態異常付与魔法はLv10で覚える【バーン】というヤケド状態を付与する魔法だ。

 秋彦の状態付与魔法はLv4で覚えた【コンヒューズ】と【サイレント】である。効果はそれぞれ混乱状態、沈黙状態を付与する魔法だ。

 混乱状態は、混乱のあまりに誤って味方や自分を攻撃してしまう状態。

 沈黙状態は、声を発することができなくなり、それにより魔法を使えなくなる状態だ。

 しかし、これらの魔法を使った事は無い。ひとえに状態異常の付与を軽く見すぎていたのだ。

 今回その認識が改まった事は、ある意味幸運だったのかもしれない。

 今後は、こういった状態異常も使いこなし、また、使われる可能性と対策を講じていかなければいけないだろう。

 まあそれはそれとして、そろそろお楽しみの時間だ。ダンジョンの階層ボスを倒した。つまりご褒美である宝箱が出現したのだ。


「反省タイムもそこそこに……今回のご褒美ターイム!」


 優太が声を出すと、他の4人が拍手で応えた。


「こっちの宝箱は持って帰れない。とりあえずさっきと同じく随時アナライズしていくからなー」


 まずはゴブリンロードから殺す前に剥ぎ取った剣と盾、そして服だ。魔物相手に情け容赦などない。

【ゴブリンロードソード】

≪ゴブリンロードの持つ剣。これ自体がゴブリンロードを殺した証明であり、弱いゴブリンはこれを人が持っているだけで逃げ出してしまう。また、ゴブリンロードの配下召喚に臆病風に吹かれて応じない個体も現れる。肉体力+200魔法力+50 特殊効果(一定確率でゴブリン、ハイゴブリン逃走。配下召喚失敗率50%増=ゴブリンロード≫

【ゴブリンロードシールド】

≪ゴブリンロードの持つ盾。ゴブリンにふさわしくないその性能、その趣向は持つものに息を呑ませる。肉体力+150魔法力+100≫

【ゴブリンロードコスチューム】

≪ゴブリンロードの来ていた服。おおよそゴブリンの服とは思えない程の綺麗で仕立てのいい衣装であり、人間が着ていても様になる。肉体力+180魔法力+70≫


「なぁにこれぇ?」

「強い……こんなにもボスの装備って強いの……?」

「これは、ちょっと誰が持つか相談ね」

「うーん、コスチュームはまあまあだけど、あたしはあんまりそそられないなぁ」

「……凄い」


 初のボスモンスターからのドロップ品に驚きを隠せない。というかこんなものを持っていながら負けたのか? 耐性はなるべく早く身に着けるべきだろう。そう思わせる一件となった。


皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。

これからも評価、ブックマーク、感想など、皆様の応援を糧に頑張って書いていきます。

次の投稿は5月28日午前0時予定です。

よろしくお願いします!

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