第四十話 流通難
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ウサギ肉を実食した翌日、学校でウサギ肉を食べた面々と再会する。
「よう、おはよう」
「五人ともおはよー」
「おう、おはよう!」
「いやー、昨日は肉美味しかったね!」
「本当です! あんなにおいしいお肉、夢のような時間でした!」
「ねー、最近お肉もお魚もお野菜もみんな高いもんねー」
「最近食卓が侘しくなってたから、尚更だった……」
挨拶をしたら、全員で昨日の肉祭の話題になった。
「あー、確かにここの所出来合いの総菜とか高くなってたかんな。割とお構いなしに買ってたけど」
「うちも店も、嫌だけど値上げしないと潰れかねないってお父さんたちが嘆いてたなぁ……」
「今は何を買うにしても、値の上がりが激しすぎるんだよなぁ……」
秋彦達の言葉にエミーがげんなりと答える。そう、魔物が氾濫を起こして以降、流通がすっかり不安定になってしまったことで、食料の値が高騰しているのだ。
流通が不安定と言う事は、それだけ物が安定して店に入ってこないと言う事。店に物がなくなるという事は、物が買えなくなると言う事。そしてそれは、買える人間を絞らなくてはいけないと言う事になる。
ついこの間まで、日本は食料など特に供給過多な状態だったが、今は供給不足があちこちで言われるようになっている。産地では逆にいくら物が出来ても、運べないのでは売ることが出来ず、在庫をため込む形になっているケースが多い。
今は流通の現場に立つ人たちや、運送会社には国が助成金を支払い、サポートをしている。
だが、それにもかかわらず、運送会社は大手以外、廃業が相次いでいる。
それは、地方の探索者人口の少なさにある。
都会など、人が多い場所では、それだけ探索者が生まれる比率も多くなり、魔物の氾濫騒ぎにも対処がしやすくなっているが、地方の田舎と呼ばれるような場所ではそうもいかないときが多い。
地方の田舎と呼ばれるような場所は逆に人がいなさすぎて、ダンジョンそのものが生まれず、魔物も必然的に氾濫しない。
問題は中途半端に都会と呼べる程度に栄えている、いわゆる地方都市と呼ばれる所だ。
そういった場所では、ダンジョンは発生していても、地元のダンジョンに潜ろうとする人間は少ない。なぜなら魔物素材の買取や、魔物の解体場などを行う探索者ギルドがまだないからだ。
まだまだ探索者が多いとは言えない今の情勢では、地元のダンジョンに潜ろうとする人々は少ない。ダンジョンに潜る気概のある人々は、ギルドのある都会に出て行き、そこで探索者として生計を立てていく。大都市ほどダンジョンの密度は高いゆえに、大都会程、探索者の需要はあるのだ。都会ですら足りていないともいえる。
必然的に地方都市には、戦えないし、戦いたくない人々ばかりになるのだ。
それが悪い事とは言わない。いきなり人間全員がダンジョンとの徹底抗戦としてダンジョンへの突撃を繰り返していては、既存の産業や研究などは誰が支えるのだという話になる。しかし、最低限の護身も出来ず、魔物と見たら逃げる事しかできない人々ばかりになるというのは、それはそれで問題だ。
魔物に対する行動が逃げるしかないからだ。幸い逃げ切れない人というのは今のところあまりいないらしい。しかしそれは魔物を放置し、ダンジョンから距離を置くという消極的な対処ともいえる。
結果、そのあたり一帯からは人気がなくなり、その周辺は魔物が常時闊歩している状態になる。
そして、流通を支える人々は、そんなところでも迂回ができない場合も多い。結果、あたり一帯に魔物がいるのに、そこを通らざるを得ない状態というのが生まれるのだ。
なので流通の現場にいる人間は命がけなのである。退職者も増えると言う物。これ以外に生き方を知らないとしても、相応に金が貰えなければ、長年勤めた会社をやめるという選択肢を選ばざるを得ない。
金は結局、命あっての物種なのだ。死んでしまったら元も子もない。
その考えを曲げられるだけの金を出されない限りは、好んで続けようというものもいないという物である。
しかしそうなると打撃を受けるのはやはりまわりまわって民衆なのである。
「はぁ……本当はお野菜も食べたいんですけどね……」
「お、それなら一つ教えてやるよ」
秋彦のたった一言で、教室中が聞き耳立てているかの如くしゃべり声が無くなってシンとした。
空気を読んでいるんだか読んでいないんだか、奏が食いついた。
「お! なによなによ?」
「え、えっと、別に大したことじゃねーぞ? ダンジョンにはさ、コケダマっつー一番格下の雑魚がいるのは知ってるか?」
「うん、それは流石にね。剣術も何もなくてそれどころか喧嘩さえやったことない人にも倒せるくらい弱いって聞くね。それが?」
「そいつを倒した後に、砕いて乾かして、市販の肥料に混ぜて野菜とか植えてるプランターとか庭に混ぜて食いたい野菜の種植えてみな。芽も出てない所から、六日位で立派な野菜が収穫できるぜ」
「え、本当に?!」
「おー! すごい、高いお野菜を買わずに済むー!」
予想通り言葉と石崎が反応してきた。
「プランターとか、食いたい野菜の種とか確保しとけばいいと思うぜ。後、コケダマはそういう訳で、弱いなりにまあまあ値が付くから、覚えときなよ」
五人から一斉に歓喜の声が上がる。
外野からも、歓喜の声や、電話で両親に家庭菜園の用意を頼む声が聞こえてくる。やっぱりみんな苦しんでいるのだなと、改めて確信した話をしたところでHR開始の予鈴が鳴った。
………………………………
午前までの授業が終わり、昼休憩の時間に入る。
二人はまたパンを片手に外で食事をとっていた。優太が言い出したことで、こういう時は大体何か話がある時だ。
「久しぶりの外でのご飯だね、でもそろそろ外で食べるにはきついかな?」
「最近暑くなってきたもんな。で、どうした? なんか話あるんだろ?」
「……さすがだね。じゃあさっくり本題行こうか。そろそろチームの人数増やさない?」
その一言に秋彦は驚いた。
優太は余り社交的とは言えないし、むしろ秋彦の後ろに隠れている印象が強いからだ。
「驚いたな、どうしたんだ急に?」
「僕的には急にじゃないよ全然……バルカンとの戦いを見て、これはもうダメだって思ったんだよ」
「あ、ああ……」
どうやら前回、思い切り相手とブルファイトしたことで随分怒っているらしい。
確かに後から思い返せばだいぶ無茶なことをしたことは分かる。しかし、大人数が来ると後ろに隠れる優太からこんなことを言い出すあたり、やはり追い詰めてしまっていたようだ。
「本当に悪かったよ……ごめんなさい」
「自分の命がかかっているんだからさぁ……もう少し自分を顧みようよ……それに思ったんだけど、やっぱり手数が足りないよ」
それを言われると納得せざるを得ない。今も二人掛かりであれもこれもと攻撃、防御、支援、回復等を行っているが、何かをやっている間に違うことをやる必要が出てくると言う事も多く、人手が欲しいと思うこともある。
そういわれると、人数を増やしたい気もしてくる。
「今すぐってわけじゃないけど、ちょっと考えておいて」
「分かった。ちょっとマジで考えるわ」
幸い、仲間に引き入れたいという申し出はステーキハウスでの打ち上げで結構来ている。需要はあるはずだ。ならば探してみよう。
そう納得し、改めて二人は食事を開始する。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
ぜひ評価感想の方を頂戴したく思います。そうしたら私はもっと頑張って作品を展開できますので。これからもどうぞ、よろしくお願いいたします!




