第三十七話 報告と取材
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雨宮は、いまだかつてないほどに喜びにあふれた顔をしながらマップを見つめていた。目じりには涙がたまっている。
「そうか……とうとう初級ダンジョンの氾濫日数をリセット出来たか!」
「はい、手に入れた物を含めて、分かった事はここまでですね」
「うん、分かった!」
歓喜と興奮が入り混じった顔で返事をしたが、一転真剣な表情に変わる。
「しかしそうか……ならば君たちにどうしてもお願いしたことがある、というか出来たんだが、頼まれてくれないか?」
「はい? なんでしょうか」
真剣な顔で改まった頼み事に、二人は少し身構える。
「ああ、安心してほしい、別に命の危険がある訳じゃない。君たちは迷宮通信、通称【メーツー】と呼ばれる雑誌を知ってるかい?」
「それは雨宮さんが前に説明してくれた雑誌ですよね? あの化け物と一緒に戦ったあの人たちが作った雑誌って話ですけど」
「メーツーは僕の実家の料理屋でも置いていますし、評判に上がってきますよ」
メーツー自体創刊は最近だ。約3週間前くらいだった。
しかしその雑誌はダンジョンの事について情報が錯綜する中、正しい情報を発信し、不必要にダンジョンにおびえないように呼びかけ、ダンジョンのチュートリアルたる入門編の攻略の手順や、ボスの存在や、今まで出てきたボスの傾向と対策なども発信する重要なコンテンツの一つだ。
ダンジョンの氾濫が一段落した頃は、テレビでさえ、誤った情報を流し、いたずらに民衆の恐怖を煽る事も多かったが、最近では、メーツーの情報をテレビで流す専用のコーナーまでできるくらいに信用されている。
その根拠はメーツーを出している人間たちにある。
実は、メーツーを出版している会社で、メーツーの編集や記事を書いているのは何を隠そう東京での氾濫を共に戦い抜き、フィールドキメラゴブリンとも一緒に戦ったチームの一つなのだから。
秋彦達にしても、以前の懇親会でチームへ勧誘されている。特に秋彦はフィールドキメラゴブリン相手に負傷した二人にバリアーをかけたこともある位だ。印象には残っているし、名前も勧誘の際にもらった名刺を見れば思い出せる。そのくらいにはよく知った相手だ。
「そう。彼らにはこちらから連絡するから、今回判明したことと、君たち自身のデータ、戦闘力。そしてちょっとした取材に協力してあげて欲しいんだ」
「……え? なんでですか?」
このなんでかというのはなぜそんなことをしなければいけないのかと言う事と、なぜ自分たちがという二種類の意味がある。
「まず、僕たちギルドマスターが頭と胃を痛めていた目下最大の問題であったのは、初級ダンジョン氾濫日数をいかにしてリセットするかと言う事だったんだ。これに関してはお国からもだいぶ突っ込まれていたしね……」
「そうだったんですか……」
「いやいや、当然でしょ秋彦……あんなのが今度は数でも質でも全く相手にならない相手で来たら今度こそ日本終わるって」
【日本魔物大氾濫】を経て事情聴取をされた後、今回の氾濫はすべて入門ダンジョンという最も難易度の低いダンジョンの魔物が氾濫した物だったと言う事が判明したとき、政府は、あるいは国は恐怖に固まり腰を抜かしたことだろう。
あんなとんでもない化け物が、一番低い難易度のダンジョンで生まれた魔物であると言う事は、もしもう一つ上の難易度のダンジョンから魔物が溢れたらどうなってしまう?
前回は日本全土で約50万人が死んだ。
事故の人的被害も地域的にも過去類を見ないほどに大きい今回の事。
この様な事が今回よりもはるか上の規模で起こるかもしれない。
それは事情を聴取した警察、自衛隊、政治家や有識者が恐慌一歩手前になるには十分だった。
しかも各国の様子を見る限り、一番マシなのはこの日本という事実が判明する。警察、自衛隊、政治家や有識者といった存在がみな等しく大ダメージを負ったにもかかわらずこの国が一番マシな国だったというのだ。
もはや逃げ場などどこにもない。
普段ならば法律ができ、公布されるまでに長い審議が必要になる日本という国が、異例も異例な程に早く法が生まれ、公布されたのもここが要因であったといえるだろう。
そして、法ができ、有力な探索者が各地で活躍できる下地を整えたからには、皆一様に初級ダンジョン氾濫日数のリセットを期待している。
ここまでやらせたからには何とかしろという無言の圧力があるのだ。
これには東京だけでなく、各地のギルドマスターもせっつかれていて、それぞれがストレスに苦しんでいたのだ。
その中にあってこの報告は天恵にも似た、福音の如く救われる報告だった。
ようやく国に朗報を伝えることができる。初級ダンジョン氾濫日数のリセットをする為に必要な実力、その基準が生まれた瞬間だったからだ。
「故に、この事は広く知れ渡らせたい。初級リセットの依頼の開始と報酬をかけあわないといけないし、他の人たちにもやってもらえるように広めていかないといけない。だからこの戦闘力の人がやれたっていうデータがいるんだ。政府にも、他の探索者にもね。この人がどういう状況の敵とどう戦って、どこまで戦ったらリセットできたのか。それをネタに一つ記事を作ってもらい、メーツーに取り上げてもらう」
「成程……そりゃやらないわけにはいかないですね……」
「でも、これ以上有名になるの俺たち……?」
「秋彦君、そこは今さらだ。もう諦めたほうがいい。というか、ネットの動画がある以上はもうどうしようもないよ」
そういえばそうだった。秋彦たちの戦いの瞬間は日本どころか世界にまで飛び、再生数は千万単位を超え、億に届こうとしている。しかも同じような動画が転載され、もはやどこのサイトにどれだけ投稿されているかも把握できなくなっている。
確かにもう今更という気はするが……いや、ここはもう折れたほうがいいだろう。必要な事なのだから、仕方ないのだ。
「……そうですね、分かりました。でも、流石に今日じゃないですよね?」
「ああ。それは後でメールをする。僕はとりあえずこの事を報告し、今後の対策として国に提出するよ」
「分かりました。あ、後雨宮さんって地属性持ってましたよね?」
「ん? ああ、持っているよ、それが?」
「じゃあ、これ使ってくださいよ」
そういって秋彦はマジックバッグから、サーヴァントゴーレムコアを机に置く。
それを見て雨宮は思わず大声を出す。
「え、これって……報告にあったサーヴァントゴーレムの製造に使うアイテムじゃないのかい?!」
「あー、そうだね。これは雨宮さんが持っていたほうがいいと思います。これからもお世話になりますし、ゴーレム連れていれば初級ダンジョン氾濫日数リセットにも説得力が出ると思いますし、第一コレ僕たちじゃ使えませんしね」
事前の相談はなかったがすぐに優太は納得してくれた。
優太の言葉を聞いて、雨宮が思わず息を呑む。汗をぬぐってやっと一言出す。
「……本当にいいのかい?」
「「はい、今後ともよろしくお願いいたします」」
「……ああ、こちらこそよろしく」
サーヴァントゴーレムコアを手に持って雨宮が深々と頭を下げた。
それを見届けて、秋彦達は部屋を出る。
長い話が終わって思わず伸びをしてしまう。なんというか早くもいろいろと疲れてしまった。
長くなったといえば、そういえば五人をを待たせていることを思い出した。
「だいぶ長くなっちまったけど、あいつらまだいるかな?」
「だいぶ待たせちゃったねぇ……」
当然、二人は、待たせていた五人に散々文句を言われる羽目になってしまった。見たいものもロクに見れなかったからしょうがないのだろうが、ちょっと理不尽だと思ってしまう二人だった。
皆様からのご愛顧、誠に痛み入ります。
ぜひ評価感想の方を頂戴したく思います。そうしたら私はもっと頑張って作品を展開できますので。これからもどうぞ、よろしくお願いいたします!




